SAKANAMON、マカロニえんぴつ、ヤユヨ、SPRINGMAN、WON……個性でぶつかり合った4度目の『TALTOナイト 2024』
2024年12月4日、東京・渋谷Spotify O-EASTにて、『TALTOナイト 2024』が開催された。ロックレーベル/マネージメントのTALTOに所属するアーティストたちが出演するイベントで、2019年2月に東名阪のツアー形式で行われたのが初回。2020年は1~2月にかけて東阪福ツアー、2021年・2022年はコロナ禍のため行われず、2023年3月3日はZepp Hanedaで1日開催、この2024年で四度目となる。
今回の特徴は、ステージ右側にサブステージがあるO-EASTの構造を活かし、2つのステージを交互に使うことで転換時間を大幅に減らしたこと。それによって、5アクトが出演したのに18時30分開演で21時30分過ぎには終わるという、タイトな進行を実現できていた。
トップのWONと3番目のSAKANAMONと5番目のマカロニえんぴつが通常のステージ、2番目のSPRINGMANと4番目のヤユヨがサブステージで、演奏した。
<WON>
トップのWONは、素顔を明かしていないので、ステージ前にうっすら透ける紗幕が貼られた状態でのパフォーマンス。WONとサポートピアノの竹縄航太、ふたりによる「Unique」でライブが始まる。続く「You to」もふたり、3曲目の「日記」では、SAKANAMONの藤森元生が、アコースティックギターで加わった。
〈来世は憂鬱に生まれてよ/最初から濁っていれば気にならない/最悪だってこんなもんかと笑えちゃいそう/不幸に慣れて/泳いでいこうよ〉(「You to」)などの強烈なリリックが、最小限の楽器の音をまといながら、エモーショナルなメロディに乗って響く。
サポートのふたりを紹介して送り出し、今日が生まれて三回目のライブであることを告げ、「次はみんなで会場をぶちあげていける曲になればいいなと思います!」と、性急なバックトラックと共に始まったのは「ヘイトキラー」「ギャンラブ」「裏目シアター」のメドレーだった。3曲ともスマホ型になっていて歌詞と画が目まぐるしく展開するMVが、大きな画面仕様にリアレンジされて投射され、ステージの空気も、フロアの空気も一転する。
ラストは、12月18日にリリースを控えた、空白ごっこが提供した新曲「無知」。中盤から後半にかけて、歌い手の感情が全開になることで聴き手を巻き込んでいくような、強い楽曲だった。
<SPRINGMAN>
昨年はオープニングアクトとして出演した、荒川大輔(Vo/Gt)のソロプロジェクト、SPRINGMAN。ご存知だろうが一応書いておくと、ユニコーンの(2009年の再始動前までは)ラストアルバム、『SPRINGMAN』から名前を取っている。
ライブ時のサポートメンバーは、ベースとドラムとキーボードで、ギターは自分だけである点や、メインギターがギブソン・レスポールでアンプがマーシャルである点など、MTR&Y編成での奥田民生に近いスタイルである。
ミドルテンポでシャッフルの「勤労」で、2速~3速ぐらいでスタートし、次の「さよなら北千住」でギアをガツンとトップに入れる。フロア、後ろの方まで拳が上がっている。
挨拶程度の短いMCと、己の無力感を明るく淡々と歌う「エスケープコール」(個人的にSPRINGMANの曲でいちばん好きです)を経て、曲間なしで2曲続けた「右にならえ」「いないふり」で、さらにギアが上がった。「いないふり」では荒川大輔、ギターを背中に回してハンドマイクで歌いまくり、ハープを吹きまくる。
Oasisのような雄大さを湛えた「ポットパイ」をじっくり聴かせ、「今後もTALTOを、そしてSPRINGMANをよろしくお願いします。来てくれてありがとう」と、また簡潔なMCの後、ギターソロを弾きまくる「カポック」で締めた。
<SAKANAMON>
バックトラックも伴ったバンドのすごい音圧と、すごい声量とすごい勢いの藤森元生のボーカルによる「マジックアワー」でスタートしたTALTOの長男、SAKANAMON。「幼気な少女」「ぱらぱらり」と、そのままの勢いで、オーディエンスを巻き込み放題巻き込んでいく。「幼気な少女」の後半のブレイクではきれいにシンガロングが返ってくる。「ぱらぱらり」では曲の間中、ステージ後方の画面で花びらが舞った。
「TALTOって体育会系みたいなノリがない。何部?」「パソコン部?」「それ俺の中学の時」「まあそういう愉快な、特殊なレーベルということですね」などと言いつつ曲に入った、10月2日に配信されたばかりの新曲「ただそれだけ」では、画面を歌詞が走る。嫌でも目に入ってくる、SNS等の無責任で言いたい放題な言葉を、音楽でぶっ飛ばす、という歌である。
高速プログレのような目まぐるしい曲展開の「DUAL EFFECT」、森野光晴(Ba)が演奏に支障をきたすくらい大暴れした「ミュージックプランクトン」を経てのラストは、『ぼっち・ざ・ろっく!』の結束バンドの曲として提供した「光の中へ」。セルフカバーバージョンのレコーディングに参加したマカロニえんぴつ・田辺由明が加わり、ものすごいソロを聴かせた。