アルステイク、大胆不敵な力強さでライブハウスを支配 『唸れツアー』地元・岡山公演に刻んだ生き様

アルステイク『唸れツアー』岡山公演レポ

 ライブの話に戻ろう。中盤までは“とにかく駆け抜ける”という言葉がぴったりなくらいに、常に疾走感があった。「未完成のまま」で心も身体も掴まれたかと思うと、「今日は」で、さらにそのビート感がドライブしていく。絶妙なタイミングで繰り出される「走れ」で、さらにオーディエンスがぐちゃぐちゃになったかと思ったら、「チェリーメリー」ではビートの気持ちよさが極上なものに昇華されていく。さらに「#だるい」ではダンサンブルなビートに合わせて照明のテイストもダークになり、陰るような景色が印象深く残った。その余韻に浸ったのも束の間、「走れ」を再度投入してオーディエンスが爆発すると、すぐあとには「光れ」のコンボを決めて、最高潮をさらに更新。化け物みたいな流れだった。

 そして、激しいパートが印象的だったからこそ、ライブ後半の「17歳」「弱虫」はハイライト的な輝きを放つのだった。自分が初めて楽曲を作ったときのこと、失恋の中で作ったときのことなどをMCで言葉にしながら、情感込めて丁寧に音を紡ぐ。想いがこもったその歌は、時が経った今、他の誰かが自分の人生に重ねるようにして聴くものになっており、その光景がどこまでも幻想的で、どこまでも美しく見えるのだった。

 本編最後に披露した「足跡」では「全員で歌おう、自分に歌ってあげて」と言葉を投げかけ、オーディエンスも全力でシンガロングをする。興奮もあったし、感動もあった。その果てにたどり着くのが、この日のライブだからこその高揚感に満ちた景色。あまりにも完璧な流れ。アルステイクだからこそ作り上げることができる、ライブハウスの素敵な空間を堪能した瞬間だった。

 それにしてもこの日、ひだかは「自分たちは岡山で育ったバンドである」と何度も口にし、「自分が初めてライブを観たライブハウスもCRAZYMAMA KINGDOMだった」という話をしていたことも印象的だった。楽曲の途中、「次にこのKINGDOMに立つ岡山バンドはなんだ! 炙りなタウンか! ヨークシンか! umimiruか! マママ・ダ・マートか!」と同郷のバンドの名前を口にしながら、「いや次もアルステイクだ!」と明確な強さを見せるアルステイクのオラオラ感も、この日のライブのハイライトのひとつだった。ここでも怯えとかっこよさを同居させながら、強くサバイブしてみせる生のバンドの姿があったように感じたのだった。

 ライブでは、ひだかの口から他にもいろんな言葉が紡がれた。音楽のフレーズのように胸に残る言い回しもいくつかあって、特に頭の中に深く響いた言葉があるのだ。

「アルステイクっていう生き物。ライブっていう生物」

 アルステイクのこれまでとこれからの生き様が克明に表現され、それがオーディエンスの感情と呼応することで、まるで生き物のように、この日のライブは様々な姿に変化した。ひたむきにライブを続けていくバンドの、いつもの一幕にも似た、でも紛れもないその日だけの奇跡が確かにあった。岡山CRAZYMAMA KINGDOMでそのライブを目撃したオーディエンスの脳裏に焼きついたのは、そんなアルステイクならではの不思議な魅力であり、かっこよさだったように思う。

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