Mrs. GREEN APPLE、Number_i、Travis Japan、Omoinotake、クリープハイプ、Chilli Beans. ……注目新譜6作をレビュー
New Releases In Focus
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はMrs. GREEN APPLE「ビターバカンス」、Number_i「HIRAKEGOMA」、Travis Japan「BO$$Y」、Omoinotake「アイオライト」、クリープハイプ「天の声」、Chilli Beans.「escape」の6作品をピックアップした。(編集部)
Mrs.GREEN APPLE「ビターバカンス」
明るい未来が見えづらい現状のせい、またはどうしても他者と比べてしまう風潮のせいなのか、我々はつい「今がんばらないと、大変なことになってしまう」と思い込んでしまいがち。そうやってガチガチになった心と身体を一瞬で緩めてくれるのが、映画『聖☆おにいさん THE MOVIE〜ホーリーメンVS悪魔軍団〜』主題歌として制作された「ビターバカンス」だ。連打されるピアノと〈息が詰まるような日々が続いたら/休暇を取ればいい〉というラインから一気に疾走し始めるこの曲の中心にあるのは、「休んじゃえばいいよ」というシンプルで切実なメッセージ。ブルーグラスやアイリッシュ音楽を取り入れたオーガニックな音像、気持ちよくスウィングするようなボーカルも聴き手の凝り固まった思考を解放してくれる。(森)
Number_i「HIRAKEGOMA」
1stフルアルバムのデラックス盤『No.Ⅰ (Deluxe)』の1曲目に収められた未発表曲「HIRAKEGOMA」は、ダークにしてエキゾチックなトラック、迫力ある低音を効かせたラップが刺激的に絡み合うHIPHOPナンバー。〈HIRAKEGOMA/Next Door/超えるBorder〉というパンチラインもそうだが、今のNumber_iの勢いと音楽的な志向がダイレクトに表れている。今年の元旦に「GOAT」でデビューを果たした後、アメリカでは『Coachella Valley Music and Arts Festival 2024』、国内では『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024』、『SUMMER SONIC 2024』などへの出演、アルバムのリリース、現在行われているアリーナツアーと駆け抜けてきた3人。そのなかで得た自分たちへの自信と確信、そして「まだまだ先へ行ける」という可能性をしっかり手にしているからこそ、「HIRAKEGOMA」のようなセリフボースティングソングが映えるのだと思う。(森)
Travis Japan「BO$$Y」
2ndアルバム『Vllsual』収録曲で、メンバーの中村海人が楽曲プロデュースやMV演出も手がけたナンバー。爽やかなポップスやダンスナンバーが多いアルバムの中ではHIPHOP寄りの曲調だが、ラップと同じくらいメロディパートが重視されている構成、さらには「BOSSY(=偉そうな)」というタイトルのわりに好戦的ボースティング要素があまりないところが特徴。重要なのはリズムを完璧に乗りこなす意識であり、英語と日本語が入り混じる歌詞は、どちらの言語であれ、どのメンバーの歌唱であれ、拍と発語アクセントが恐ろしいほど気持ちよく揃っているのだ。一定のビートにハマりきることで続くダンスミュージックの快感。実に現代的なかっこよさ。(石井)