松永大司&道本咲希、2名の監督から見たLIL LEAGUEメンバーの魅力 ショートドラマで演技に初挑戦

映画監督から見たLIL LEAGUEの魅力

俳優ではないからと手加減をしたくなかった

――12月2日に公開された『時間よ止まれ』には、中村さんと難波さんが出演されています。松永監督がこの2人をキャスティングした理由をお聞かせください。

松永:シナリオを書く中で、竜大と碧空の姿が思い浮かんだからです。今作では、竜大演じるセイジと、碧空演じるケイト、下山碧夢さん演じるカナの間に生じる恋心や友情、先輩後輩の関係性などを、よりリアルなタッチでシナリオに描き込んでいったのですが、二人がこのストーリーの中で芝居をしたとき、どういう表情ができるのか見てみたいと思ったんですよね。それが、竜大と碧空をキャスティングした大きな理由です。

――撮影にあたって、事前にどのような準備をしましたか?

松永:僕はクランクインする前に毎回リハーサルをやるようにしているんですけど、今回も2人にも同じようにリハーサルに参加してもらいました。

中村竜大、松永大司、難波碧空
中村竜大、松永大司、難波碧空

――松永監督と言えば、これまで鈴木亮平さんや吉田羊さん、宮沢氷魚さんなど、様々な俳優と仕事をされてきていますよね。第一線で活躍する彼らが経験してきた稽古・リハーサルを、中村さんと難波さんも乗り越えてきたということですか?

松永:そうです。僕は「あなたができるものは何ですか」ということをずっと問い続けていくタイプの稽古をするので、俳優を専業としている方でも、事前準備にかなりの労力を使います。それをやってのけた二人は、本当にすごいと思います。僕が逆の立場だったら、途中で嫌になって放り出してしまう気がしますから。

 でも、僕は、彼らが俳優ではないからと手加減したくなかったんですよ。なぜなら、ドラマを見ている人たちは、彼らが俳優であるかどうかは関係ないですから。ストーリーに浸ってもらって、心を動かすことが何よりも大切。その結果、「このドラマに出演している人たちは誰?」と思ってもらえたら嬉しいです。そういう風になるためには、やっぱりちゃんとしたリハーサルをする必要があると思いました。

中村:あの稽古期間で松永監督からかけていただいた言葉は、どれも自分の中に深く刺さっています。例えば、「役のセリフを覚えはしても、当日には全部忘れてくる」という言葉とか、日常生活の中で無意識にやっている行動・しぐさに意識を向けることとか。ドラマの中で、僕らは役を生きなければいけません。相手の次のセリフを待ってはいけない。松永監督はいろいろな言葉で、そういうことを教えてくださいました。現場で上手くやれたかは分からないのですが、監督から教わったことを自分なりに少しずつ消化して、撮影に取り組めたのかなと思っています。

難波:僕は稽古に加えて、撮影当日に「撮影が終わるまで難波碧空でいなくていい」と言ってくださったことも強く印象に残っています。素の自分とケイトという役柄が交差する部分を見つけるというか、役と自分の境界線をうまく分けていくのが本当に難しくて。カメラが回った後、ケイトが生きている時間を再現した環境の中で自分がどういう感情を表現して、どういう言葉を使うべきなのか、常に探しながら現場に立っていましたね。

松永:僕は2人に、「ただセリフを言うこと」の先に行ってほしいなと思っていたんですよ。映画でもドラマでも、芝居の世界で大事なのは、セリフをきちんと言うことだけではありません。与えられた役柄を生きて、その役の人間が抱く感情を外に出せるかということが常に求められます。だから、演じることって、最終的にはありのままの自分自身で勝負するしかないんです。今回の作品はかなりリアリティのある設定にしていますから、少しでも嘘っぽいものが見えると、見ている人は「芝居が下手だ」と感じてしまう。セリフをただ言うのではなく、現場で一人の人間として言葉や感情を相互に受け渡していくような芝居を、二人には体現してほしかったんです。シンプルだけれど、すごくレベルの高いことを求めたと思っています。

――なるほど。だからこそ、『時間よ止まれ』では、演者の表情に惹きつけられるシーンが多数生まれていたのですね。第3話のセイジや、第5話の最終シーンのケイトなど、中村さんも難波さんも物語の展開に沿って本当に絶妙な表情をされていて、目が離せませんでした。

松永:僕も第3話は傑作だと思っています(笑)。TikTokに投稿するショートドラマなので字幕を付けているのですが、本当は字幕なしで皆さんに見ていただきたい。2人とも本当に良い芝居をしているので、字幕を追うだけでなく、2人の表情などにも注目して観ていただけたら嬉しいです。

――中村さんと難波さんは、今回のドラマを通じて視聴者にどのようなことを受け取ってもらいたいですか?

中村:「作品をこういう風に受け取ってほしい」という自分の中の想いは、正直まだ見えていません。でも、今回の作品は等身大の自分たちで、今の僕らができる芝居をやり切れたと思うので、ドラマを見てどんなことを感じたのか、視聴者の皆さんの感想を早く知りたいなと感じています。皆さんから反響をいただくのが楽しみです。

難波:僕も、作品の受け取り方は、見てくださった皆さんに委ねたいなと思っています。僕としては、松永監督が「素晴らしいものが撮れた」と言ってくださったことがすべてというか、とにかくすごくありがたい気持ちでいっぱいで。今回の作品をきっかけに、少しでも自分たちの存在に興味を持ってもらえたらと思うので、ぜひたくさんの方に観ていただけるコンテンツになれば嬉しいです。

アーティストだからこそ引き出せる作品の魅力

――ちなみに、松永監督に伺いたいのですが、アーティストをキャスティングした際、撮影の進め方や演技の仕方などで専業の俳優と違いを感じる部分はあるのでしょうか?

松永:やっぱり違いはありますよね。アーティストは、内に秘めた情熱など、自分自身のさらけ出し方が上手いなと感じます。それは『トイレのピエタ』(2015年)でRADWIMPSの野田洋次郎に出演してもらった際にも感じたことで。演技の経験はなくとも、ステージで多くの観客の前で歌っている、パフォーマンスをしているという経験は俳優が芝居で経験してきているものとはまた別のものがあると感じます。『戦場のメリークリスマス』(1983年)のデヴィッド・ボウイもそうですが、ミュージシャンの出演は作品に大きな魅力が加わることが多いと思います。

――道本監督は、今回山田さんと作品を撮ってみて、LIL LEAGUEのメンバーとしての山田さんと俳優としての山田さん、双方の姿のどちらが映るように考えましたか?

道本:今回は、私たちの生活の延長線上に存在する芝居をしてほしかったので、それぞれの姿に関連性を持たせないように強く意識していました。コミュニケーションをとる中で、いかに素の山田晃大さんに戻していくか、考えていたというか。撮影時、「LIL LEAGUEの晃大さん」がちょっと顔を出すと、役柄のレイがカッコよくなりすぎてしまうんですよ。

山田:そういえば、監督から「歩き方がアーティストになってる」と何度か注意していただきましたよね。僕、歩き方なんて気にしたことがなかったから、「あれ、俺普段、どうやって歩いてたっけ?」と、撮影時はこんがらがってしまいました(笑)。歩き方に関しては、たぶん、グループを結成してから、表舞台に立つときは自己表現・感情表現が得意ではない普段の自分とは少し違う、「LIL LEAGUEの山田晃大」でいるように気を付けていたので、そういう部分が無意識に出ていたのだと思います。お芝居では、何気ない行動の部分も十分に気をつけて役に染まり切らないといけないんだと、すごく勉強になりました。

――LIL LEAGUEの3人は実際に演じてみて、アーティスト活動と俳優業の親和性について、どんな風に感じましたか?

中村:僕は音楽と演技に相互関係のようなものをかなり感じていましたね。昔から路上ライブをよくやっていて、ダンススクールで出された課題曲も含めて、楽曲をどんな風に自分の表現に昇華させられるのかを考えてきたので、そういう部分は役作りに活かせたのかなと。

山田:脚本を読んで、監督とお話をさせていただく中で思ったのは、グループでの活動とお芝居の仕事、どちらも伝え方が違うだけで、「作品が受け手に届いて、心を動かす」という点では共通する部分もあるのかなということでした。なので、普段のアーティスト活動の中でやってきた何気ないことが、今回のドラマ撮影でも活きたのかなとは、すごく感じますね。

難波:僕は演技中、ずっと不思議な感覚でした。アーティストの自分でもなければ、難波碧空でもない。じゃあ誰なのかと聞かれたとき、適当な答えが出せないんですけれど、演技しているときの自分ってこんな感じなんだというのは、新しい発見でした。

――今回のようなショートドラマの制作は、今後も続いていくのでしょうか?

松永:正直に言うと、第1弾、第2弾の映像の評判次第です。

山田:えっ、そうなんですか!

難波:僕らの責任重大!

中村:急にめちゃくちゃプレッシャーを感じる……(笑)。

松永:(笑)。僕としては、今後も長く続くコンテンツになればいいなと思っています。LIL LEAGUEの他のメンバーや様々な新人アーティストを撮ってみたいです。事務所の垣根を超えた作品づくりにも挑戦してみたいので。

 今回初めて、TikTokで公開する縦型ショートドラマの撮影に挑戦しましたが、本当にいろいろな可能性を感じることができました。例えば、このコンテンツジャンルがこれから、道本のような若い映画監督が才能を発揮する新たなフィールドになるように思えましたし、そこにアーティストをキャスティングするのも、映画を撮るのとはまた違ったおもしろさや可能性があるように感じました。それに、SNSを使えば、1つの作品を瞬時に何万人もの人たちに届けることができる。映画では考えられないスピードで作品が広まっていくので、その波及力は純粋におもしろいですよ。これを機に、道本も含めた若い監督やLIL LEAGUEのメンバーをたくさんの人に知ってもらって、次のキャリアに繋がるようなきっかけづくりができたら、僕の役割を1つ果たせたことになるのかもしれません。今回僕らが生み出した作品をたくさんの方に観ていただいて、多くの方が楽しみに待ってくださり、応援してくださる、そんなコンテンツに発展したら嬉しいなと思います。

■配信概要
第2弾『時間よ止まれ』(1話公開中/全5話)
出演:中村竜大、難波碧空、下山碧夢
監督:松永大司
予告編URL:https://www.tiktok.com/@lilleague_official/video/7443010003012717832

第1弾『非通知』(全5話公開中)
出演:山田晃大、黒嵜菜々子
監督:道本咲希
URL:https://www.tiktok.com/@lilleague_official/video/7432249040479292679

■関連リンク
ホームページ:https://lilleague.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/lil_league_official/
X(旧Twitter):https://x.com/LIL_LEAGUE_
YouTube:https://www.youtube.com/@lilleague
TikTok:https://www.tiktok.com/@lilleague_official

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる