Myukとともに新たな星を探す旅へ ツアー『Stella Nova』で紡いだ居場所、“大切な人たち”への想い

Myuk、ツアー『Stella Nova』で紡いだ想い

 熊川みゆによるプロジェクト・Myukが、8カ月ぶりとなるツアー『Myuk Live Tour 2024 [Stella Nova]』を大阪・東京で開催した。“新しい星”という意味のタイトルどおり、宇宙を旅して新たな星を探す壮大な物語を、数々の楽曲と合間に挿入されるナレーションで表現していくコンセプチュアルなライブは、Myukの音楽が持つ自由で美しい世界観をさらに引き出し、彼女とオーディエンスを強く結びつけるものとなった。ここでは10月30日に行われた東京・SHIBUYA CLUB QUATTROでの公演をレポートする。

 開演時刻、ステージにバンドメンバー(Gt:大久保友裕、Key:西野恵未、Ba:前田恭介(androp)、Dr:大貫みく(the peggies))とともに白い衣装を身に纏ったMyukが登場する。アコースティックギターを手に取り歌い始めたのは「愛の唄」だった。アッパーなリズムに乗せて弾ませるように身体を動かしながら歌うMyuk。「こんばんは、Myukです。素敵な夜にしましょう」という言葉にオーディエンスが歓声で応え、場内の一体感が一気に高まっていった。一転して穏やかなムードとともに「魔法」へ。星空のような照明とエモーショナルなサビのメロディがオーディエンスを遥か宇宙への旅へと誘うようだ。

 冒頭にも書いたとおり、この『Stella Nova』はライブの合間合間にMyuk自身によるストーリーテリングが挟み込まれる構成。ここでは旅の始まりを告げるアナウンスとともに、“宙飛ぶ船”が飛び立っていく。そして、まさに始まりの軽やかな気分を象徴するように軽やかに鳴り響くのは「Cocoon」だ。続けて披露された「Pancake」ではギターとドラムが刻むリズムにフロアから手拍子が起き、さらに気分は盛り上がっていく。ポップに弾むような歌声を届けながら、Myukはその手拍子に笑顔で応えていた。

 青と白のライトの中、「Gift」の少し懐かしいようなメロディを届けると、物語は次のチャプターへ。Myukとオーディエンスを乗せた船はぐんぐん上昇し、宇宙へと近づいていく。

 「夜空にこんなに星があるなんて忘れてた。最後に空を見上げたのはいつだったっけ」ーーそんな思いをそのまま声に込めるように、大きなブレスからハンドマイクで歌われていくのは「シオン」。語りかけるような優しい歌声が、サビでどんどん広がっていく。すべてを抱きしめるような包容力はMyukの歌が持つ大きな魅力だ。彼女の歌に呼応するようにバンドの演奏にも力がこもり、ライブはさらに熱を帯びていく。宇宙の中で感じる孤独を語るナレーションを挟んで披露された「ひとりじゃないよ」でも力強いバンドサウンドがMyukの歌を後押しするように鳴り渡り、「わたしね、、」の心情を吐き出すような切ない歌がオーディエンスの心を揺さぶる。物語が進むごとに、曲が移りゆくたびに、Myukの歌はさまざまな表情を見せ、観客の感情を呼び起こしていった。

 さて、Myukの星を巡る旅は、ここである星に辿り着く。そこは“議論好きの人々が集まる星”。それぞれの正義の衝突が繰り返される光景を見たMyukの「どうしてすべてを知ってると思ってしまうんだろう」という疑問から、〈人はあーやったって こーやったって ダメだって言う/画面越しで世界を知っただなんて言う〉と歌う「Black Sheep」へ。周りからなんと言われようと自分の意思を貫いていくんだというこの曲のメッセージが、物語の力を得てさらにパワフルに鳴り響く。目眩くように展開する楽曲の中、オーディエンスも声を上げ、手を叩く。まるで新たな道を切り開くMyukの背中を押すように。続く「encore bremen」でもオーディエンスの手拍子が刻むリズムに身を委ねながら、バンドメンバーとアイコンタクトを交わしながら歌を届けるMyuk。このライブで表現される宇宙の旅と同じように、彼女の音楽もそうやってたくさんの人と交わることで新たな景色を描き出してきた。会場を包むあたたかな空気は、Myukが進む道の“正しさ”を証明するようでもある。歌い終えたMyukは「ありがとう」と嬉しそうな表情を浮かべるのだった。

 旅を続けるMyukが次に立ち寄ったのは“誰もが一番を決めたがる”星。三拍子のリズムの上でひときわ鋭く響くMyukの歌声が、それまでと違った熱量をもって会場の空気を震わせる。続いてイントロで鳴り響く情熱的なピアノリフが印象的な「フェイクファーワルツ」ではオーディエンスの手拍子をさらに煽って盛り上げていくMyuk。ギターをかき鳴らす姿も、まるで降り立った星のムードに感化されたようなアグレッシブさだ。「夜の舞踏会」を経て、すでにセットリストは終盤に差し掛かり、すべてを出し切るようにパフォーマンスの熱は上がり続けていく。そんな星を抜け出したMyukは、遠くに美しく輝く次の星へと進路を取る。それは雪が降り続く“真っ白な星”。そんな星にぴったりの「Snow」が、凍える心に灯りをともすように演奏される。ゆったりとしたグルーヴに合わせてミラーボールが回転し、Myukは心地よさそうに身体を揺らしながら歌を紡いでいく。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる