日食なつこ、盛岡を舞台に繰り広げた15年の音楽家としての姿 『エリア不変』3DAYS完全レポート

日食なつこ『エリア不変』完全レポ

【DAY3/CLUB CHANGE WAVE】

 DAY1の会場と同じビルの地下にあり、3店舗で一番大きなライブハウス・CLUB CHANGE WAVEがDAY3の舞台。開演時刻ちょうどに大きく両手を広げ一礼して登場の日食なつこ、そしてバンドメンバー3人もステージへ。本人曰く「記憶にある限り、この会場でスタンディングで(お客さんが)フルは初!」で、超満員のお客様。鍵盤のイントロが鳴り「致死量の自由」からスタート。

 全天で4番目に大きな星座とされる“シータス”を冠に掲げ、「“日食クルー”と称するバンドメンバーと盛岡に来るのは念願だった」と語る。メンバー紹介を兼ねる形で日食とメンバーが対峙し1曲ずつ演奏し、komaki(Dr)と「appetite」、初めての盛岡という沼能友樹(Gt)とはギターイントロから始まる「グローネンダール」、仲俣和宏(Ba)とは「meridian」を。「精一杯のご愛敬で、私のわがままに付き合ってもらっています」という日食クルーのメンバーと奏でる音は、音楽というものに触れたことのない自分の体の細胞が喜んでいるかのような感覚だった。個人的なツボは、客席からの掛け声が続くkomakiに「愛されてるね」と日食が言うや、komakiが「もう、いしがきを本籍にしようかな!」と言ってくれたこと(補足:“いしがき”とは、盛岡で毎年開催され日食も何度も出演経験がある『いしがきミュージックフェスティバル』という音楽フェスティバルがあり、会場の1つが石垣に囲まれた盛岡城跡公園である)。

 中盤、「ここからは『エリア未来』で、未発表曲ツアーの一部をサテライトしてみようと思います」と、未発表曲ツアーで演奏したアルファベットタイトルの曲を立て続けに披露。蛇の神様の話をモチーフにした伝承シリーズ第三弾「f」では、演奏の盛り上がりにkomakiのネックレスが吹き飛ぶ。仲俣はアップライトベースに持ち替え、日食クルーで一番最初にまわった時に作ったという「d」では「今を歩いてきて、もう少し未来も歩けるのかな」とメンバーへの信頼を歌に。生きている限り誰しもが葛藤し、目標に到達してもまた迷いが生まれながらも進んでいくしかないのかと思い巡らされた「c」。DAY2翌日だから余計に感じたのかもしれないが、今の日食が描く歌には人生訓のようなものがあり、しかも初めて耳にする曲でも歌詞がすんなりと胸に轟く。かつて盛岡で歌っていた頃には正直あまり感じることがなかった、歌声そのものが持つ説得力も凄まじいことになっていると感じた。

 アルファベットタイトルを6曲、「変わり続けながら、変わらない魂のホームで(ライブを)やって、盛岡はまた、しばし。良いお年を、になるけどまた必ず来るから。それまで元気で! 繰り広げられた絶景、クラブチェンジ、ありがとう!」の言葉に会場は大きな拍手。そして「この場所からどこまでもどこまでも、鳴らしていきましょう」と「音楽のすゝめ」へ。明らかに客席の全員を見ながら、上に手を大きく掲げ〈おまえに幸あれ〉と歌う姿は力強い。「いつか誰もが星になる」と語ってからの「0821_a」ではサビのタイミングでゆっくりと廻るミラーボールが放つ光が未知なる天体を見ているかのよう。そして「最後は盛岡の鋼の心臓、見せてちょうだい!」と「ログマロープ」。サビ部分はあまりの大合唱で日食の声もかき消されるほど。「ここまで一緒に来てくれた日食クルーに大きな拍手を。これが15年現在の日食なつこです。もう一段階上がった時にまた、盛岡に帰ってきます!」と高らかに宣言してステージを降りた。

 フロアの明かりが灯るも大きな拍手が鳴り止むことがない。アンコールはないと聞いていたが、お客さんの盛り上がりを見続けていると日食がひとりステージへ。「普段はアンコールを受け付けていないんですが、ここは盛岡です!」と。さらに「活動1年目からやっている曲で、やるかやらないか、最後まで迷っていた曲を」と言って弾き語ったのが「10円ガム」。この曲も聴きたかった方が多くいるはずだし裏話としては、配信でDAY2を見ていた岩手在住バンドマンの母親が「10円ガム」を聴きたかったと言っていた……のが日食の耳に届いたそう。Club Changeで歌っていたあの当時よりはるかに声が明るく伸び伸びと、満面の笑顔で歌う。「最高! 良い夜を! ありがとう! またね!」。ありがとう、を言いたいのはむしろこちらだ。“どこかの山奥”に暮らしながらひたすら己に向き合って自分と戦い、グランドピアノと共に生きてきた日食なつこが、日食クルーと共に響かせる音を堪能したDAY3。これにて日食なつこという音楽家が盛岡を舞台に繰り広げた3日間が終了。全く違う夜を魅せてくれて本当にありがとう、盛岡に全てを置き切って、また新たに、一番大きな星座を目指して。日食なつこが盛岡に戻って来る日を、楽しみに生きる。

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日食なつこ 15th Anniversary -宇宙友泳- 特設サイト
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