清水美依紗、嘘偽りなく歌う葛藤と人間らしさ 『全領域異常解決室』OPテーマ「TipTap」で新たな境地へ

清水美依紗の嘘偽りない歌

 清水美依紗が新曲「TipTap」をリリースした。彼女にとって初のジャズナンバーとなる同曲は、ドラマ『全領域異常解決室』(フジテレビ系)のオープニングテーマ。怒涛だったという制作期間、「音楽をやっている」という感覚を得ながら完成した今作で、彼女が新たに手にした気づきとは何だったのか。アルバムの制作も期待したいなか、9つ目の楽曲となる「TipTap」について、そして“アーティスト・清水美依紗”としての今を語ってくれた。(編集部)

嘘偽りのない自分の言葉で、自分の感性で歌うことを大事に

清水美依紗(撮影=三橋優美子)

清水美依紗(撮影=三橋優美子)

――新曲「TipTap」は、ドラマ『全領域異常解決室』のオープニングテーマになっています。いわゆるタイアップ曲を歌う機会も増えてきましたね。

清水美依紗(以下、清水):そうですね。その作品の一部として自分の楽曲が使われるというのは本当にうれしいことですし、毎回新鮮な気持ちで臨めています。

――タイアップ曲とそうでないもので、歌う時に意識の違いは何かありますか?

清水:かなり変わりますね。映像作品などがベースになっている曲のほうがいろいろなアプローチをしやすかったりもしますし、発声のニュアンスにもいろんな選択肢が生まれるんです。言葉の立て方も結構変わりますし。最近は、作品ベースの曲に取りかかる時のほうが、自分の気持ちとしてワクワクしているのかも、と気づきました。

――自分のなかだけだと出てこないものを出せる、というような?

清水:そうだと思います。もちろん自分発信の曲でしか出せないものもあるので、どちらがいい/悪いではなく、種類が少し違うものなのかなと思います。

――今作の制作はどんなふうに始まったんでしょうか。

清水:今回は…………怒涛でした(笑)。

――怒涛でしたか(笑)。

清水:ドラマのオープニングテーマになることが決まってから作曲のMitsu.Jさんと作詞のSHOWさんにお願いをして。最初のデモを聴いた瞬間に私はもうビビッときたんです。そこからドラマの制作サイドからさらにいろいろなご要望をいただいて、メロディや歌詞に細かいアレンジや変更をいくつか加えていきました。そういう紆余曲折がありつつもレコーディングは短期間でガーッ!とやったので、とにかく怒涛だったんです。

――変更されたメロや歌詞を体に染み込ませる間もなくレコーディングの日が近づいてくる、みたいな?

清水:「メロディが1音変わるだけでこんなにニュアンスが違ってくるんだ?」とか「歌詞に〈マジ〉っていう今風な言葉が加わるだけで全然変わるんだな」とか、そういう一つひとつを吟味しているうちに「あれ、もうレコーディングの日ですか?」みたいな(笑)。

――ドラマサイドからの要望で、歌詞だけでなくメロディも変わったりするんですね。

清水:変わりましたね。たくさんの方々の「もっといいものにしたい」という意思が反映されて、よりドラマの世界観を表現できる楽曲に変わっていく過程を目の当たりにすることができて、すごくワクワクしました。「私も(制作に)入りたい!」って(笑)。同時期に舞台の稽古やツアーの準備なども重なったのでそれは叶わなかったんですけど、それでもすごく楽しかったです。

清水美依紗(撮影=三橋優美子)

――先ほど「デモの段階でビビッときた」とおっしゃっていましたが、どんなふうにビビッときたんですか?

清水:「TipTap」はとてもジャジーで華やかな曲なんですけど、それとは対照的に歌詞には現代社会への皮肉や鬱屈した葛藤が描かれていて。そこにすごく人間らしさや“生”を感じたんです。情報量の多い曲でもあるので、一度聴いただけでは歌詞の意味を掴みきれないところもあったんですけど、何回も繰り返しデモを聴き込んでいくなかで歌詞にすごく惹かれました。

――音の華やかさと歌詞の世界観がいい意味でアンバランスというか、そのミスマッチ感に最も魅力を感じたんですね。

清水:はい。歌詞にもある通り、〈奇想天外〉な曲だなって(笑)。私はもともと“表”と“裏”とか“本当”と“嘘”、“善”と“悪”みたいな、二面性を表現する作品がすごく好きなんです。そういう題材の小説を好んで読んだりもしていましたし、その意味では今回のドラマ『全領域異常解決室』の題材なんて、もう本当に大好物ですね。

――実際に歌う際には、どんなことを意識して臨みましたか?

清水:嘘偽りのない自分の言葉で、自分の感性で歌うことを大事にしました。もっとジャズの雰囲気に寄せてゴージャスに歌うこともできたと思うんですけど、この曲の場合は歌詞重視で、芝居するような感覚と言いますか。使われている言葉は現代的なので、自分が普段喋っている口調に近いニュアンスを意識しました。

――ジャズっぽい曲だからといって、ジャズシンガーのマネみたいな歌になってしまうのは避けようと。

清水:もちろんスウィングしている曲なので、グルーヴ感などの音楽的な部分ではジャズのマナーを大事にしないといけないんですけど、ニュアンスの表現をジャズっぽくすることはまったく考えずに歌いました。「この歌詞にとっていちばんふさわしい歌い方」だけを意識した感じで。

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