pachaeの根底にある“変態的”なキャッチーさ 『妻、小学生になる。』主題歌にも表れるバンドの核

新曲「アイノリユニオン」は大きな愛を描いた楽曲に

さなえ

ーー(笑)。さなえさんは音山さんの作る楽曲のどういうところに惹かれてますか。

さなえ:本当に複雑やし難しいし、もうなんかパズルのようになってるけど、歌詞がすっと入ってくるところがすごくいいなと。聴いててイメージしやすい歌詞やと思います。

ーー確かにそうですね。既発曲で言うと、「7」は面白いしまさに言葉がすっと入ってくる曲だと思います。

音山:「7」はただの文句みたいな曲です。この頃は恋愛の曲を書く気が本当になかったから。てか、恋愛の曲しか書かないじゃないですか、ほとんどの人が。

ーーそうですね。

音山:でも、みんなそれを聴きたがってるから。書かなあかんくなるまでは思ったことを書いてる方がいいなと思って、最初の方に(恋愛じゃない曲を)出しまくっといてよかったです。まあ、やっぱり愛だとかは、経験したものに勝るものはないかなと思うから。何百曲も書くほどはしゃいでないし、たまに出すぐらいがちょうどいいかなって。

ーーpachaeの曲はめちゃくちゃポップだし、リズミカルで踊れるところがいいですよね。そして音数が多くて展開も多彩なところからは、少しアニソンやボカロ文化からの影響も感じました。いろんな要素があるサウンドだと思うんですけど、音山さんは制作する時には何を一番大事にしてますか。

音山:一番大事にしてんのはやっぱ歌メロっすかね。結局それしかないなと思うんです。ドラマや映画やアニメの後押しというか、作品の力もあって何回も聴かれる攻めた曲、というのもあるかもしれないけど。そういうのを抜いたら基本的には世の中で聴かれてる曲って覚えやすいからで、そうじゃないのに全国民に愛されている曲ってあんまり聴いたことがない。そう考えたら当たり前にそれが正解かなって思うし、結局俺もそういうものが好きなんですよね。

ーー新曲「アイノリユニオン」についても話を聞かせてください。〈僕らは僕らの愛には敵わない!〉って凄いフレーズだと思いました。

音山:作品を最終話まで読んでいただければなんとなくわかると思うんですけど、あの作品に出てくる家族たちは、自分ら家族の愛に自分たちが敵ってないのでね。そういう大っきな愛みたいなものをテーマにしていて、主人公たちの目線で書いた曲です。『妻、小学生になる。』の登場人物たちの想いなので、ある種この作品のおかげで書けた愛の歌だと思います。アニメも毎回聴こえ方が変わってくると思うので、飛ばさず見てほしいですね。

ーー初のタイアップ作品になりますが、楽曲を書く時にどんな風にイメージを膨らませていきましたか。

音山:決まってから原作を読ませていただいたんですけど、異常に展開のある作品なんですよね。ここでネタバレをしたくなかったから、歌詞ではそれを表現するんじゃなくて、その展開を読ませないものにしたくて、すごく難しかったです。

ーーサウンドはどうですか?

音山:音は展開がいっぱいあってもネタバレにならないと思うんで(笑)。この曲は転調しかしてないですね。転調っぽくない転調も入れると、全部で10回ぐらいしてんちゃうんすかね。『妻、小学生になる。』のようにいろんな展開がある感じにしたかったのもあるし、アニメのオープニング尺で聴いた人が、初めてフルで聴いてくれた時に飽きないものにしたくて。二番以降はちょっとpachaeっぽいことをしたり、バンドに興味を持ってもらうための入り口にしないといけないとは思っていました。

ーーこの曲に限らずpachaeはいろんな曲で転調されてますよね。

音山:そうですね、なんか尖った言い方しかできなさそうなんですけど......これは全員じゃないし、仕事で着る人はまた別なんですけど、普段全身黒コーデしか着ない人って、逃げてると思ってるんですよ。 

ーー(笑)。

音山:でも、転調したらなんかカッコよくなるんですよね。だから転調って割と黒コーデに近い部分があって、ちゃんとコーディネートをわかった上で黒着てる転調ができるようには心がけてますけど、やっぱりちょっと癖になってるんですよね。

ーーなるほど。

音山:最後に上がるみたいな転調よくあるじゃないですか。あれはオーソドックスなパターンやし、逆に逃げじゃない転調やと思うんですよ。でも、それ以外の僕がよくやる転調は見つけちゃったやつというか、自分が歌っててもめっちゃカッコよく感じちゃう転調なんですよね。で、こっから何十曲と出していく中で、全部同じ感じで転調してたらさすがに俺の黒コーデになるんで、違う服で街を出歩くんも大事やなって最近思ってます。ただ、最初はやはりね、「他のバンドと違う」というのをわかってほしかったんで。他のどの曲よりも一番上手い形で出して、それが味になってればと思っていました。

バンバ

ーーバンバさんが「アイノリユニオン」で一番こだわったフレーズはありますか。

バンバ:アウトロのリズムか、間奏のちょっとハネてるリズムですかね。そこは難儀しました。 

ーー間奏で入ってくるまろやかなギターソロはどうですか?

音山:あれは僕が担当しました。なんかあそこだけジャズ入れたら頭おかしいかな、と思って。まあ、ジャズでもないんですけど。

バンバ:セミアコ風のね。

音山:そう。あのソロは結構直前で決めて、もう時間もなくてとりあえず俺がパッと弾きました。ほんまに入れてよかったと思うし、でも、ライブのことを考えるとほんまに後悔してます。難しすぎて。

バンバ:(笑)。

音山:レコーディングでやったから俺の方が弾ける、みたいなアドバンテージはないぐらいに俺も弾けないです。

ーー(笑)。シンセでこだわったところはありますか?

さなえ:イントロですね。

ーーかなり特徴的です。

さなえ:そうですね。pachaeの曲は全部特徴的ではあるんですけど、特に特徴的かなって思います。なのでイントロは集中を越えてちょっと緊張感がありますね。

ーーあのフレーズはギターとユニゾンしてますよね。

さなえ:そうです。だからこそ難しいかもしれない。

音山:ギターもいるってよくわかりましたね。僕はあのギターを入れたことも後悔しています。

ーー(笑)。

音山:あれも僕が弾いているんですけど、何故歌い出す前からプレッシャーが俺にきているのか、という謎を抱えながら全力で弾くという。なので最悪、休んでもキーボードがいる、という気持ちで弾いています。

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