LET ME KNOW、正統派UKロックを受け継ぐ原石 フロアに熱い空気を生み出した『Nostalgic Modern』

LET ME KNOW『Nostalgic Modern』レポ

 昨年11月に結成され、早くも今年の『SUMMER SONIC』にてSpotify RADAR: Early Noise Stageへの出演を果たすなど、快進撃を続けている3人組ロックバンド LET ME KNOWによるワンマンツアー『LET ME KNOW LIVE TOUR 2024 -Nostalgic Modern-』の東京公演が、9月10日にSHIBUYA CLUB QUATTROで開催された。この時点でリリースされている音源は、配信シングルがたったの5曲のみ。にもかかわらず、連続ドラマ『スナック女子にハイボールを』(中京テレビ)の主題歌として起用された通算3曲目「偽愛とハイボール」のライブ動画が、Matty(Vo)のInstagramを通じて拡散され話題沸騰。それもあってか、この日も20代の女性を中心にたくさんのオーディエンスが駆けつけていた。

 「新旧のインディーロック、ニューウェーブをルーツにしたノスタルジックモダンなサウンド」(※1)というプロフィールの文言以外、ほとんど予備知識なしで挑んだのだが、確かに開演前はThe Cure「Boys Don't Cry」やDuran Duran「Save a Prayer」など、80年代のUKミュージックが湧き立つフロアに鳴り響いていた。

 客電が落ちると、まずは双子の兄弟であるKen_M(Gt)とLyo(Dr)が、サポートメンバーの太田あさひ(Ba)と共にステージに登場。肩慣らしのインストナンバーを1分ほど奏で、満を持してMattyが姿を現すと早くもフロアのボルテージは最高潮。まずは通算2曲目のシングル「1800」でこの日のライブをスタートした。マイクスタンドを振り回しながら、「これが最後の曲」と言わんばかりの勢いでシャウトするMatty。その不敵かつ刹那的なボーカルは、ジョニー・ロットン(Sex Pistols)やリアム・ギャラガー(Oasis)の系譜に位置づけられる、正統派ブリティッシュロックのスタイルだ。

Matty

 続く「嘘嘘嘘」は、シンコペーションを効かせたLyoのドラムがオーディエンスの腰を揺らす。Mattyはマイクを手に持ち、ステージ狭しと練り歩きながら、抑揚たっぷりのメロディをドラマティックに歌い上げた。とびきりキャッチーで、どこか哀愁漂うメロディがJ-POPからの影響も強く感じさせる新曲(名称未定)は、サビの〈Shut Up!〉という掛け合いコーラスをオーディエンスと一緒に歌って一体感を高め、みるみるうちに会場をLET ME KNOWワールドへ染め上げていく。

Lyo

 Mattyが曲名を告げた途端、大きな歓声があちこちから上がったのは、7月12日にリリースされた最新シングル曲「SKY BLUE」だ。Lyoとあさひによるグルーヴィなリズム、80年代ニューウェーブの空気をまとったKen_Mによる流麗なギターのアルペジオ、そしてファルセットと地声を巧みに使い分けるMattyのボーカルが聴き手の心をメランコリックにかき立てる。かと思えばこの曲の間奏では、ドラム、ベース、ギターが順にソロを回してフロアをさらなる熱狂へと導いていく。

Ken_M

 〈君の一部になりたい〉と歌う「好きなんです」も、Mattyのハイトーンボイスを活かしたセクシーなミドルチューンだ。Mattyがギブソンの真っ赤なSGをかき鳴らしながら歌った「バンドマンの元カレ」は、タイトル通りバンドマンに恋をしてしまった女性の気持ちを歌った切ない楽曲。サビのメロディに合わせてあちこちでシンガロングが起きている。間髪入れず披露した「Goodbye Daily」は、弾むようなモータウンビートに乗って、どこまでも駆け上がっていくメロディが一度聴いたら耳から離れない。このあたりの楽曲はUKミュージックだけでなく、J-POPや邦ロック、ニューミュージックなどのエッセンスもふんだんに散りばめられており、Z世代のリスナーにはそこが新鮮に響くのだろう。しかも「Goodbye Daily」では、終わると見せかけテンポアップして再び演奏を始めるなど、ユーモラスな演出も盛り込みフロアを盛り上げていた。

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