NIKO NIKO TAN TAN、答えのないストーリーを進む面白さ 2人で音を鳴らす刺激に満ちた『新喜劇』

ニコタン、2人で音を鳴らす刺激

 映像を担当するメンバーも所属するクリエイティブミクスチャーユニットという初期設定もさることながら、強力なライブアンセム「Jurassic」、メロディアスなスローチューン「No Time To Lose」など曲のよさが際立ってきたNIKO NIKO TAN TAN。彼らがメジャー1stアルバム『新喜劇』を8月7日にリリースした。既発のシングル曲も多く含みながら、今とこれからを示唆するアルバムタイトルチューンや、ギターのサウンドをフィーチャーしたリード曲「Only Lonely Dance」など、新曲たちも強い。マイペースさと野心が混在したかのような不思議な存在感を放つOCHAN(Vo/Synth)とAnabebe(Dr)に、ニューアルバムの話を通してNIKO NIKO TAN TANのオリジナリティについて聞いた。(石角友香)

MAJOR 1st ALBUM「新喜劇」Teaser Movie

ルーツを落とし込みながら幅広く聴かれる作品を目指して

――アルバム制作に向かう際はどんなモードでしたか。

Anabebe:怒涛でしたね。

OCHAN:あんまり記憶がないぐらい忙しかったんですけど、メジャーリリースするっていうのは決まってたので個人的には曲をいっぱい作ってましたね。あればあるほどいいと思って、いろんなアイデアを溜めたりはしてました。

――ライブも増え、キャパシティも上がる中で変化はありましたか?

OCHAN:より外に向いてやっていくっていう意識はあったと思いますね。

――NIKO NIKO TAN TANはトレンドとは別のところでキャッチーなことやっていると思うんですが、そもそもその発端って何なんでしょうね。

OCHAN:「ミクスチャー」って自分たちから言ってるんですけど、本当にいろんなものが入ってると思いますね。僕だと、ルーツは久石譲さんのジブリ音楽の音階が好きっていうのが根底にありながら、高校生の頃からどんどん掘っていったSigur Rós、ビョーク、Massive Attack、Radioheadあたりの海外の音楽のカオスな感じが内包されたサウンドに触れつつ、宇多田ヒカルさんとかJ-POPも好きなんで、そういうメロディラインに影響を受けているからポップに聴こえるのかなって感じですかね。

OCHAN(NIKO NIKO TAN TAN)
OCHAN

――Anabebeさんは幼い頃からドラムやっていらっしゃるんですよね。今のドラミングへの影響としては何が一番大きいんですか?

Anabebe:プログレやハードロックから入ったんですよ。で、レッチリ(Red Hot Chili Peppers)とかを聴いて、そこからヒップホップとかダンスミュージックを聴き出して。けど、ダンスミュージックのドラムってワンパターンじゃないですか。だからそこに、いかに子供の時にやってたプログレのフレーズを入れるか? みたいなことを考えてやってますかね。

――今回アルバムを作るにあたって意識が外に向かっていたということですが、具体的に考えていたことは?

OCHAN:まず、既発の曲を多く含めるアルバムになると思ったんで、何曲入れてどういうタイトルつけて、どういう風にパッケージすればアルバムとして形になるのかなっていうことを考えましたね。やっぱり“アルバム”をちゃんと作りたいタイプの人間なんで、シングルをバンバン出していくよりもアルバムがすごく大事なんですよね。あと曲に関してはアルバム制作の中で変わっていったんですけど、今まで音楽はずっと“作るもの”と思ってやってきたんですよね。でも単純にいちリスナーとして、音楽は作る以前に“聴くもの”なんだって最近思ったんです。スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが「映画は作るものなんだけど、作る前に観るものだ」みたいなことをある人に言われて気づくことがあった、というのを偶然読んで。そういう意味で、肩の力を抜きながら、単純に自分が聴いてて気持ちいいもの、それが多くの人にとっても聴きやすいスッと入ってくるものじゃないのかなっていう感覚を信じて、オープンな気持ちで曲を作ってましたね。

――確かに面白いものを作ろうということを意識しすぎると、リスナーという立場からちょっと離れちゃうのかもしれないですね。

OCHAN:そうですね。僕は深く作り込んでいく作品やアーティストが好きなんですけど、直感的に幅広い人に聴いてもらいたいっていう気持ちが心の中にはあるし、どうやったら自分が納得して作れるのかなって思うと、やっぱりそういうところだったっていうか。なんか腑に落ちたんですよね。

Anabebe
Anabebe

アルバムタイトル『新喜劇』に込めたもの

――これまでもタイアップなどで新しい入り口はできていったと思うんですが、それはその都度実感してました?

OCHAN:してました。普通に嬉しかったですよ。

Anabebe:うんうん。めちゃくちゃ嬉しかったな。

OCHAN:最初はこのアルバムの中で言うと「Jurassic」(戸田建設TVCMソング)ですかね。作った時も手応えがあったんで、NIKO NIKO TAN TANの一個のポイントになってる曲です。

――このアルバムに至る前までの代表曲という感じがします。

OCHAN:ああ、そうですね。

NIKO NIKO TAN TAN - Jurassic

――アルバムリリース前には「No Time To Lose」(映画『みーんな、宇宙人。』主題歌)という今までにないタイプのスローな曲がリリースされましたが、この曲はアルバムに収録するつもりでしたか?

OCHAN:作った時にもうアルバムの最後に入れようと思ってましたね。

――OCHANさんにとっては書き下ろすこと自体が挑戦だったわけではなく、アルバムを構成する1曲としてどういう曲を作ろうか考えていったのが挑戦だったんでしょうか?

OCHAN:両方ですね。まずは映画主題歌という話があったんで、それに合わせて作っていって。でも、(曲の)成長過程を見ていくうちに、「あ、これアルバムの最後に持ってったらめっちゃいいものになりそうだな」と思って、それが映画にも繋がっていった、みたいな。

――冒頭に強力な新曲がいっぱい入っていて、今のNIKO NIKO TAN TANが明確にわかりますね。

OCHAN:それは嬉しいですね。

NIKO NIKO TAN TAN - No Time To Lose (Official Visualizer)

――実質的な1曲目としてタイトルチューンの「新喜劇」がありますが、この曲の発想はどういうところからでした?

OCHAN:ちょっと前からデモがありまして。いつもシングル曲はデモから育てていって、それが旅立っていく感じなんですけど、そのデモだけずっと作り込まずに寝かせてたんですよね。で、アルバムにしようと思った時に「タイトル曲があればもうちょっとアルバムとして形作れるんじゃないかな」って考えて、「新喜劇」という曲を作り始めようと。ゼロからというより、さっき言ったデモ状態のものに「新喜劇」ってタイトルをつけると化けそうだなと思って、一気に作り替えていった感じですね。これを聴いてもらえれば、昔からのNIKO NIKO TAN TANと今のNIKO NIKO TAN TANが詰まっている1曲だと思います。

――『新喜劇』というアルバムタイトルはどういうニュアンスでつけたんですか?

OCHAN:アルバムには結果14曲入ったんですけど、それぞれにストーリーがあって、中には自分のメンタル的に暗い曲もあると思うんですよね。でもアルバムとしてできた時に、「人生は近くから見れば悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」というチャップリンの言葉を見たのが一つですね。あと、そもそも何もない更地の状態で「アルバム出すよ」という話になった時から、言葉の響きがすごく好きな『新喜劇』っていうタイトルにしようってぼんやり思ってたんですよ。なので言葉が面白いから最初に選んだっていうのと、そこに意味合いをどう結びつけていくか、みたいなことを考えてましたね。

――そのチャップリンの言葉って、NIKO NIKO TAN TANのマインド自体にも通じる気がします。

OCHAN:そうですね。表裏一体じゃないですけど、どっちにも決めつけない感じですかね。自分が正しいと思っても、ある人からすると正しくないかもしれない。その両方の見方ができる余白を持ってる作品が僕は好きなんですよね。なので、自分の作品に対してもそう思うし、「新喜劇」の歌詞みたいなことをいつも思うというか。例えば僕らが今作でデビューして、のちに喜劇になるのか悲劇になるのかは頑張り次第(笑)。今、答えはないっていうストーリーが面白い。

――音楽的にも、「NIKO NIKO TAN TANってこういうイメージ」を表す曲な気がしました。ドラム以外は基本シーケンスで、しかも単純な四つ打ちではなくアフロビート的なところも出てきたりするし。

Anabebe:はいはい。

――でも土着的かと言われるとそういう曲でもない。

OCHAN:いろんなものが混ざっているのかもしれない(笑)。で、メロディだけ聴いてると歌謡曲みたいな感じはあるのかも。

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