サザンオールスターズ、“真逆のプロダクション”が推進力に 独自の流儀で突き詰めたダンス&ロック

 お陰様で多くの方々から嬉しいご感想を頂いている拙著『いわゆる「サザン」について』であり、その御礼を述べさせて頂きつつ、さて本コラムのテーマは、話題の新曲二作品についてである。まずは「恋のブギウギナイト」から。

 主題歌となったドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)も、最終回でサザンオールスターズの面々が登場し、ドラマ出演者の皆さんと共に晴れやかな幕切れとなった。で、この楽曲の特色といえば、ここ何十年間かのダンスミュージックを、縦断するかのような構造であることだ。

サザンオールスターズ - 恋のブギウギナイト [Official Music Video]

 重要なのはリズムトラックだ。実は今回、EDMの制作などに利用される、ネットが提供するループ音源も活用されている。ただ、あくまで取っ掛かりとして、である。桑田はループをスタジオに流しつつ、ギターを弾き、仮歌を口ずさみつつ、メロディを紡いでいったらしい。

 歌詞を書く段階になり、ドラマの舞台が新宿・歌舞伎町といったことも意識され、結果、あの街に渦巻くカオスと、そこに息づくバイタリティをイメージさせる作品へと発展したのだ。

 ダンスミュージックというキーワードは、この場合、桑田の個人史ともリンクしている。曲のタイトルの“ブギウギ”は、アフリカ系アメリカ人が発明したピアノ奏法のことというより、70年代後半のディスコ文化(テイスト・オブ・ハニーの「今夜はブギ・ウギ・ウギ」など)からの引用である。まさに彼の、学生時代の記憶だ。歌詞に登場する〈BUMP〉や〈シェイク〉も、70年代のディスコ用語である。

 斬新なのはボーカルトラックだろう。ふだんよりオクターブ下で歌い始められ、やがて通常キーの歌声が重なる。歌全体としては、惚れた相手への下心と純真が、ペーソス溢れる言葉で綴られている。下半身はノリノリで、上半分は胸キュンな、そんな仕上がりと言えるだろう。

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