リンダ・キャリエール、47年間未発表だった細野晴臣プロデュース作品への想い 「まだ理解が追いついていない」

 今回、正式に発売された後にあらためてリンダに取材を求めた。そこには、少しずつ作品を自分の近くに招き寄せ、受け入れ始めている様子が窺えた。現在の思いを彼女は率直に表現する。

「アルファのレコーディングで歌った曲を一曲一曲思い出しながら、いちリスナーとして真剣に聴いてみると、非常に興味深く刺激的でした。あの時のアルバムが今こうしてリリースされるなんて、本当に不思議なことですよね。みんながどのような感想をもつのかとても楽しみです。

 アルバムがリリースされることにまだ私の理解が追いついていないところもありますが、細野晴臣さんをはじめ、才能のあるミュージシャンとご一緒できたことを光栄に思います。みなさんのことをもっと知り、もっと一緒に仕事をできたらよかったのにと思います」

 そして、アルバムの完成度の高さについて、こう付け加えた。

「多くの曲に共感できましたし、多くの曲が現代にも通じるものだと感じて驚きました。曲を聴いて過去のことを思い出すというより、今の私がその曲についてどのように感じるか、そして私にどのようなインパクトがあるのかが重要だと考えます。私はさまざまなジャンルの音楽を聴きます。なぜかと言うと社会、生活、芸術が曲に反映され、表現されていることに価値を感じるからです。私が好きな曲の特徴は、音楽、ボーカル、歌詞がうまく融合している曲で、そういう曲は今の時代の方も好まれると思います。そういう意味で、アルファのために録音した全ての曲が大好きです」

 アルバムのプロデューサーであった細野は、レコーディング後に当時住んでいた狭山の自宅にリンダや作詞のジェームス・レイガンらを招いてパーティーを行った。そのとき、彼女が腕につけていた数珠(英語でWorry beads)を見つけて交わした会話から、のちに細野の楽曲「ウォーリー・ビーズ」(1978年のアルバム『はらいそ』収録)ができたという。その日のエピソードについて何か覚えていることはありますかと問うと、彼女は「細野さんは穏やかで物静かで、温かい人だったと覚えています。彼のことをもっと知る機会があればよかったなと思います」と前置きして、数珠についてはこう答えてくれた。

「(細野が「ウォーリー・ビーズ」を作ったことについて)そうだったんですね! 昔のことを思い出しながら細野さんの音楽を聴かないといけないですね。あの頃、私のグループのライブにほとんど毎回来てくれたお客さんが数珠のセットをくれたんです。私はクリスチャンなのでいつもロザリオを持っていました。信仰心を学び、常に成長することが私の生涯の取り組みだと考えています。ですので、仏教について学ぶことは自然な成り行きです。細野さんのお宅を訪ねたときの会話は覚えていません。どのような会話をしたかすごく知りたいです」

 その会話の続きは、いつの日か、ここに収められた曲を日本やアメリカで彼女が歌うチャンスが訪れたら実現するのかもしれない。その可能性を彼女自身は否定していない。そのとき、このアルバムは単なる「幻の作品の発掘」だったのではなく、未来に向けて用意されていたスタートラインだったと思えるだろう。

 リンダはこの先に待っているかもしれない未来について、こんな前向きな言葉をくれた。

「もしもこのアルバムの曲を披露する機会があって、私の生活とうまくタイミングが合えば、ぜひやりたいです。まず“いい声”のコンディションである必要があるので、日常的に練習しないといけませんね。この質問を受けて、練習する時間を作りたくなりました。

 私がこのアルバムで経験したことには、まだこれから生まれつつあるインスピレーショナルな要素があります。素晴らしいことです。曲と再び出会い、私自身がさらに成長できることを楽しみにしています。そしてこれらの曲からまた新しいチャプターが生み出されるのかもしれません」

 今の彼女がこのアルバムから選ぶフェイバリット曲をあげてほしいとリクエストしたら、「All That Bad」「Laid Back Mad or Mellow」「Loving Makes It So」「Child On An Angel’s Arm」「Sunday Girl」「Proud Soul」「Love Celebration」だと教えてくれた。

 なかでもいちばんのお気に入りは「All That Bad」で、今の時代に「新しい」と感じられるサウンドだと絶賛。そして、もしもライブで披露するなら「Love Celebration」を特筆してくれた。近年もDYNASTYのリユニオンツアーに参加するなど、いいコンディションをキープしているリンダ。彼女が生で歌う「Love Celebration」を見られるかもしれない未来を想像するとワクワクしてしまう。

■リリース情報
リンダ・キャリエール 『Linda Carriere』
発売中

・Blu-spec CD2仕様
価格:¥3,300(税込)

・LP[完全生産限定盤]
価格:¥4,730(税込)

<収録曲>
Up On His Luck
作詞:ジェームス・レイガン 作曲:山下達郎
Loving Makes It So
作詞:ジェームス・レイガン 作曲:吉田美奈子
Sunday Girl
作詞:ジェームス・レイガン 作曲:細野晴臣
All That Bad
作詞:ジェームス・レイガン 作曲:細野晴臣
Proud Soul
作詞:ジェームス・レイガン 作曲:吉田美奈子
Laid Back Mad Or Mellow
作詞:ジェームス・レイガン 作曲:矢野顕子
Child On An Angel’s Arm
作詞:ジェームス・レイガン 作曲:細野晴臣
Vertigo
作詞:ジェームス・レイガン 作曲:佐藤博
Love Celebration
作詞:ジェームス・レイガン 作曲:山下達郎
Socrates
作詞:ジェームス・レイガン 作曲:細野晴臣

公式サイト:https://www.110107.com/s/oto/page/LINDA?ima=0226

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