LUNA SEA“終幕”、WANDS“解体”、でんぱ組.inc “エンディング”……解散表現に表れるアーティストの美学

 このところロックバンドの活動休止発表が相次いでいる。KEYTALKは2024年8月22日、フジファブリックは2025年2月限りでの活動休止を発表した。ともに“解散”という形を取らないための意味合いが強い活動休止という選択でもあるだろう。

 そんな一時的なものであることが前提の“活動休止”もあれば、完全に活動が終了となる“解散”もある。解散にもメンバー脱退など突発的な理由が背景にある一方、活動がゴールに到達したという理由での決断ということもある。そして時に解散は、そのバンド/グループの在り方と呼応した独自の言い回しで表現される場合がある。本稿ではアーティストとしての美学を映し出す、様々な解散の表現を紹介していきたい。

 でんぱ組.incは2025年1月4、5日に幕張メッセ 幕張イベントホールで開催される『でんぱ組.inc THE ENDING「宇宙を救うのはきっと、でんぱ組.inc!」』をもって“エンディング”を迎える。アイドル戦国時代と呼ばれた2010年代を中心に、16年にわたってインパクトのある活動を行ってきたでんぱ組.incだが、メンバー、クルー交えての話し合いの先で“エンディング”が決定したのだという(※1)。

 “エンディング”という表現には彼女たちが大切にしてきたアニメや漫画、ゲームといったカルチャーへの思慕が滲む。メンバーの藤咲彩音もコメントで「あなたの心にある、でんぱ組.incとのセーブポイントを大切にしてくれたら」と述べており、その活動のゴールを形容する上で最適な言い回しと言えるだろう。

でんぱ組.inc「商売繁盛!元祖電波屋!」LIVE MOVIE(2024.04.20)

 CHAIは2024年3月12日のライブをもってその活動を終了。彼女たちは解散を“NEOかわいいをフォーエバー”という言葉で伝えた。セルフラブのメッセージを体現する“NEOかわいい”は、彼女たちが大切にしてきたキーコンセプト。それを永遠のものにする、という意味を込めた、彼女たちらしい表現だ。

 解散とはその時点で変化していくことを止めることであり、つまりは存在としての永遠を手にすることでもある。彼女たちが楽曲に込めてきたメッセージの普遍性はきっとこれから先の未来、何度も思い出されては人々を勇気づけることだろう。解散に対しても最後までポジティブな目線を忘れない。CHAIだからこそできた表現だと言える。

CHAI - N.E.O. (Live at EX THEATER ROPPONGI)

 遡ると、こうした個性ある解散表現はYELLOW MAGIC ORCHESTRA(以下、YMO)も用いていた。YMOは1983年に日本武道館で“散開”した。“散開”とは広く散らばること、また戦場で敵の攻撃による損害を最小限にするために兵たちがそれぞれ距離を取ることを意味する。まさにメンバーそれぞれの持ち場での活動が活発化していくタームを形容した表現であった。ちなみにBEAT CRUSADERSはYMOをオマージュする形で2010年に“散開”という言葉を用いて活動を終了しており、それほどまでにインパクトの大きな表現だったと言える。

YELLOW MAGIC ORCHESTRA「RYDEEN」MV

 活動様式に準じた表現と言うと、野猿の“撤収”は完璧な言い回しだろう。とんねるずが番組スタッフたちと組んだダンスボーカルユニットであり、テレビ業界から発信された音楽グループとして、“撤収”(=収録機材などを片付けてスタジオを去ること)という幕引きはユーモラスかつベストな表現である。

野猿「叫び」MV

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