ammo、更新されていく“らしさ”が原動力に アルバム『SONG LIE』が自信作である理由
ammoが、メジャー1stフルアルバム『SONG LIE』を7月31日にリリースした。
全10曲が新曲で構成されている今作について、メンバーは口を揃えて“自信作”であると語る。初のタイアップ曲に挑戦したTVアニメ『小市民シリーズ』(テレビ朝日系)EDテーマ「意解けない」をはじめ、岡本優星(Vo/Gt)と川原創馬(Ba)のボーカルの掛け合いが印象的な「ナイタールーム」、ammo流のレゲエチューンとも言うべき「High Ace!!!」、北出大洋(Dr)がピアノ演奏を担当した「埃人間」など、バンドの表現方法の広がりが感じられる楽曲が多数ラインナップ。岡本の手掛ける歌詞も意味や音を巧みに組み合わせる言葉選びに一層の磨きがかかり、更新されていく“ammoらしさ”を体感できる1枚が完成した。
ライブの数だけ着実に実力を高めて歩みを進める彼ら。9月からは本作を携えたZeppツアー、全国ライブハウスツアーも控える3人に話を聞いた。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】
これまでの楽曲が化けた初ワンマンツアー
──3月にワンマンライブ『reALITY』、3月末から4月にかけてワンマンツアー『THIS IS MODERN OLD STYLE TOUR』を開催しました。初のワンマンツアーとなりましたが、回り終えて感じたことを教えてください。
岡本優星(以下、岡本):めっちゃ(お酒を)飲みました。とにかく全箇所で飲みました。
──それは「いいライブをしたからおいしいお酒が飲めた」という意味で?
岡本:いや、まずい酒を苦しく飲みました。
川原創馬(以下、川原):ライブハウスの人にそう教えてもらったんです。まずい酒を苦しく飲むのがライブハウスだって。
岡本:武道館でライブをできるようになってからうまい酒を飲め、と。だから、まずい酒を苦しみながら飲んだツアーでした。
──ライブの手応えとしても苦しかった?
北出大洋(以下、北出):いや、ライブは全部良かったです。
岡本:その土地土地での盛り上がり方が見られてよかったです。
──ツアーを回る中で印象が変わった曲や大きく変化を遂げた曲を挙げるなら?
北出:「ねー!」ですかね。わかってたっちゃわかってたんですけど、やっぱりライブ映えする曲だなと思いました。
岡本:フロアの受け入れが早かったですね、「ねー!」は。「やまない愛はある」はライブハウスだと、お客さんに対して歌っているみたいな気持ちになりました。そうなりそうだなとは思っていましたけど、いざライブでやってみて深く思ったというか。歌いながらグッときます。
川原:“ammoあるある”なんですけど、新しい作品を出してツアーを回ると、それまで「この曲、置き所難しいな」と思っていた旧曲が、新曲のおかげでハマったりすることがよくあって。今回のツアーでは『我々の諸々』(2022年10月リリースの2ndフルアルバム)の曲がめちゃくちゃ成長したなと思いました。特に「紫春」と「賭け愛」は化けた。
──3月のZepp DiverCity(TOKYO)でのワンマンライブでも「紫春」は場内の雰囲気をガラッと変えましたよね。
川原:はい。それまでと比べてめちゃくちゃセトリに入る数が増えました。「なんで今までまったくやってなかったんだろう」って思うくらい。
岡本:フェスでもやるようになりました。
川原:うん、超化けましたね。
──ちなみに前回のインタビューで、ツアー中にメンバーで移動中にプレイするためにモンハン(『モンスターハンター』)を買ったというお話しをされていましたが、やりましたか?
川原:やってないです(笑)。
岡本:誰も持って来なかったです(笑)。もうツアーが始まる頃にはみんなのブームが終わっていて。
──そうだったんですね(笑)。6月には2マン企画『各日に確実と確執を』を開催しました。東京公演にKOTORI、愛知公演にMr.ふぉるて、大阪公演にTHE BOYS&GIRLSを迎えての2マンライブでしたが、こちらはいかがでしたか?
岡本:めっちゃ良かったです。
川原:三者三様で全部良かったよね。
岡本:それぞれのバンドの強みが全然違うからこそ、自分たちは対バン相手に影響されないという強さをもらった気がします。
川原:人のいいところを盗むのも大事ですけど、“自分たちは自分たちでいいんや”ってめっちゃ思いました。
「意解けない」は物語が進むにつれて『小市民シリーズ』とリンクする
──そんなライブ三昧の日々を経て、フルアルバム『SONG LIE』が完成しました。完成した今の率直な心境を教えてください。
岡本:めっちゃ自信あります。早くみんなに聴いてほしいです。
北出:うん、めっちゃ自信あります。ammoがブラッシュアップできました。
岡本:気づいたら新しいことがいっぱいできたし。更新したという感じです。
──そんな自信作の1曲目「意解けない」はTVアニメ『小市民シリーズ』エンディングテーマ。初のタイアップ曲となりますが、最初にアニメのエンディングテーマを担当すると決まったときの心情を教えてください。
岡本:すごく不安でした。俺らがタイアップって、どう見られるのかなって。
──周りからどう見られるのか。
岡本:はい。でも、原作の小説を読んだら面白くて。ファンになっちゃって、「絶対にやりたい」と思いました。
──原作のどんな部分からインスピレーションを受けて作っていったのでしょう?
岡本:『小市民シリーズ』って、日常のちょっとした疑問を、大きく考えて推理していく物語なんですけど、俺の歌詞に似ているなと思って。ちょっと薄暗い感じ、キャピキャピしていない雰囲気を曲調に反映させました。サビがammoには珍しいマイナーコード始まりだったりするのも、その薄暗さを表現しています。
──物語の雰囲気や世界観から作っていったんですね。
岡本:はい。歌詞には、小説の中の言葉を多用しています。この作品は春編、夏編、秋編、冬編と春夏秋冬でシリーズ化されているので〈今年味〉と表現したり、主人公がデザート好きだから〈甘党〉という言葉を入れたり。アニメの1話は雨の学校が舞台なので〈雨模様の放課後〉と入れて、サビの〈尼そぎ〉というのは主人公の女の子・小佐内ゆきの髪型。〈小賢しさも執念深さも片がつく〉っていうのは、今回のアニメでは出てこないんですけど“夏編”で効いてくるんですよ。
──なるほど。物語が進んでいくにつれて、さらにリンクしていくんですね。
岡本:どんどん「そういうことか!」ってなると思います。だからアニメが2期になってもこの曲を使ってほしいです(笑)。なんなら映画化されてもこの曲を使ってほしい。
川原:「違う曲を書いて」って言われても?
岡本:うん、これを使ってほしい。「『意解けない』があるんで」って(笑)。秋編の最後のほうに出てくるエッセンスも入ってるんで。
──シリーズ全編に使えますね。〈あの星を目指した!〉といったフレーズなんかは、今までのammoだったら出てこなかったフレーズですよね。
岡本:ですね。それも原作を読んでいて「この言葉使いたい!」とか「こういうことを言いたい!」と影響を受けて出てきた言葉です。小説を読んで僕なりに噛み砕いて、韻を踏んでつなげて、この曲ができました。
──川原さん、北出さんはこの曲を初めて聴いたとき、どう思いましたか?
川原:「きたー!」と思いました。アレンジするまでどうなるかわからない曲もあるんですけど、この曲はつかみから完璧で。いい曲確定演出って感じでしたね。
北出:僕は原作を読んでいたのですが、歌詞も原作からちゃんと拾っているし、曲自体も『小市民シリーズ』の世界観とちゃんと合っていてすごいなと思いました。「優星、こんなことできるんや!」って。
川原:原作やアニメを知らない人にも届く曲だと思います。
──アレンジや演奏する上で意識したことはどのようなことでしたか?
川原:ノリノリにしたいなと思いました。最初にこの曲を聴いたときに、バラードっぽい曲だけど、気持ちは速い曲くらいノッてる感じがいいなと感じて。そこからベースとドラムを考えました。
北出:ドラムはほとんど創馬が作ったので、ドラマーじゃ思いつかへんフレーズが多い。自分で作ってたら避けるやろうなって思うものを作ってくれたので、叩くのは難しいんですけど(笑)、めっちゃカッコいいドラムです。
川原:僕は“歌っているドラム”が好きなんで、歌にピタピタハマるドラムを考えただけなんですけどね。難しかったみたいです(笑)。
岡本:これ、高校生とかコピーできるの?
北出:うーん……できる人はできるんじゃない?
川原:それ、言い出したらキリがない(笑)。
北出:でもやってみてほしいですね。
川原:ベースもムズイんで、弾いてみてほしい。
──ボーカルのレコーディングで意識したことはありますか?
岡本:普段あまり使わないコード進行をいっぱい入れたので、感情の込め方は意識しましたね。気だるさを前面に出したかったので、熱くなりすぎないように気をつけました。
──作品に対する書き下ろしという形で曲を作ってみて、いかがでしたか?
岡本:秒数の制限もあるし、普段の曲作りとは全然違いました。でもちょうど制作の仕方がマンネリ化していたので、いい刺激になりましたし、お題に答えるという作り方は自分たちに向いているなと思ったので、こういう機会はもっと欲しいです。