中村さんそ、clubasiaを埋め尽くした“カワイイ×ポップ”の世界 nyankobrqやemonも駆けつけたワンマン

中村さんそ、clubasiaワンマンレポート

 “kawaiipop”をテーマに活動するシンガーソングライターの中村さんそによるワンマンライブ『中村さんそが消えなくて』が、7月13日、東京・Shibuya clubasiaで開催された。

 2017年頃より音楽活動を開始し、インターネットや同人CDなどを通じて独自のカワイイ×ポップな世界を展開してきた彼女。他アーティスト作品へのフィーチャリング参加や楽曲提供などでじわじわとその名前を浸透させるなか、2023年9月にはバンダイナムコエンターテインメントによる音楽原作キャラクタープロジェクト「電音部」のイケブクロエリア・雫來叉手毬のキャストに抜擢されるなど、近年は活動の幅をさらに広げている。

 今回のワンマンライブは、自身初の全国流通CDとなるベストアルバム『中村さんそに魅せられて』のリリースに合わせて企画されたもの。会場のclubasiaは、中村も度々出演している人気クラブイベント『暴力的にカワイイ』の開催地として知られ、2022年に行われたワンマンライブ『中村さんそと夢を見て』の会場でもあった縁の深い場所。フロアは満員状態で、オープニングDJのnaePi-YOが場の空気をいい具合に温めると、様々なクリエイターが中村をプロデュースしたEP『中村さんそをプロデュースするEP』よりYASUHIRO(康寛)とアオワイファイが手掛けた「My Way HighWay」を出囃子に、ついに中村がステージに登場する。

 全身にふわふわのフリルをあしらった純白のドレス衣装を着た彼女は、登場するなり手にしていたスマホをステージに置く。中村はライブの際にスマホで歌詞を確認しながら歌うことが多いのだが、今回はそれをしなかったことからも、このライブにかける気合いのほどが伝わってくる(スマホをわざわざ持ってきて置く行為自体が決意のアピールにも見えた)。開幕を飾ったのは、ベスト盤には未収録の最新曲「ドラマチックなキスをして」。ややシャッフル気味の心地よく体を揺らすリズムと、女の子の繊細な心の動きを描いた歌詞、砂糖菓子のように甘く淡い中村の歌声が、クラブならではの優れた音響とレーザー演出によって、より深く体に染み渡っていく。中村は楽曲の終盤で気持ちが昂ったのか声を震わせる場面もあったが、それさえも女の子の心が動く瞬間の“かわいさ”を見せる演出のようにも感じられる。“かわいい”は万能だ。

 どうやらかなり緊張しているようで、その後のMCでもやや震え声の中村。とはいえ客席からの「天才!」という声に「えっ? いま変態って言った?」と返して笑いを取るなど、ゆるふわっとした自分らしいペースを取り戻していく。「(今回のライブのために)いつもより何回も練習しちゃいました!」とアピールすると、「嘘じゃないの」でライブを再開。歌詞の内容に合わせてスカートの裾を翻したりと、動きでも魅せる。そこからシームレスに「ぱらどくす」へと繋げ、2ステップ寄りの跳ねたリズムで会場を踊らせると、続く「勘違いなんかじゃない」では間奏でかわいらしくステップしたり、客席に向けて投げキスをしたりと、ファンサもばっちりだ。

 ここで「子猫ちゃん、カモン!」とゲストのnyankobrqをステージに呼び込むと、ベスト盤にも収録されているコラボ曲「sweety girl」を披露。ドラムンベース風の疾走感あるトラック上で、nyankobrqの滑らかなラップと中村の低体温な歌声が絡み合って柔らかなエモさを引き出す。さらに「このまま一緒に歌わせてもらいます」(nyankobrq)と宣言して、nyankobrqがトラックを手がけた2人の初めての共作曲「カカレ!」へ。音源版では中村が全編メインで歌唱しているが、この日はnyankobrqがメインで歌う箇所も多く、ライブならではの特別感のあるコラボとなった。

 再び1人となった中村は、キャッチーなメロディと太いビートが合わさったフューチャーポップ「どうでもよくない瞬間」をかわいらしい仕草を交えながらパフォーマンスすると、レゲエ調のバックビートが心地いい“カワイイ”ラヴァーズロック「どろあまちゅ♡」でピンクに光るミラーボールと共に甘い時間を作り上げ、そこから瞬時に自身が歌唱で参加したpiccoの楽曲「image」へとスイッチし、重低音が唸る強烈なベースハウスでフロアを一気に沸かせる。MCを挿んでの「keep out」ではステージ前方のステップに乗って観客と超近距離で交流すると、メロウなR&B調の「sugar taxi」やいわゆる“Just The Two of Us進行”を基調とした「わがままが言い足りない」では繊細な高音ボイスで切々とした心情を描き出す。甘やかな耳触りをベースに多彩な歌唱表現を聴かせてくれるのも、中村の大きな魅力のひとつだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる