中村さんそ、clubasiaを埋め尽くした“カワイイ×ポップ”の世界 nyankobrqやemonも駆けつけたワンマン
そして2組目のゲスト、中村が大好きなクリエイターだと語るボカロPのemon（Tes.）をステージに迎え入れると、彼が楽曲提供したベスト盤収録の新曲「ぐ～る・ぐるーゔぃ」をパフォーマンス。emonがステージ後方のDJブースで機材を操ったり、サビ前で観客に「飛べるかー！」と呼び掛けて煽るなか、中村も弾むリズムに乗りながら楽しそうにキュートな歌声を届ける。フロアもジャンプや合唱で応えて会場のボルテージは最高潮に。歌唱後、中村は「自分の曲より歌詞を覚えやすかったです」と語っていたが、2人の相性の良さが実証された最高のステージだった。
いよいよライブは終盤戦、彼女が「残り4曲」と告げるとフロアからは「え～！」と惜しむ声が上がる。エレピの揺れるメロウネスと中村のややツンとした歌声が猫っぽい「mya-o」、とろけるようなスロウナンバー「夜な夜な眠る」とディープな楽曲を立て続け、彼女の描くカワイイ×ポップな世界がより濃密に広がっていく。特に「夜な夜な眠る」での頭を抱えたりうなだれるような仕草、2番のセリフっぽいパートにおける語気を荒げるような表現は真に迫るものがあった。
さらに凄みを感じさせたのが「escape」。歌詞で描かれている女の子の気持ち、恋のジレンマにさいなまれている様をその身で体現するような、感情を爆発させたボーカルアプローチは、音源でのあまり体温を感じさせない歌声とはまるで違っていて、その感情の渦に観ているこちら側が飲み込まれそうになる。そしてライブ本編のラストは病みカワなラップナンバー「moremoremore」。もともとはアイドルグループ・きっと誰かの秘密兵器への提供楽曲として作られたものだが、いまや彼女のライブの定番曲にもなっている。さらに声を荒ぶらせ、心の中にある沸々とした気持ちを解放するように歌う彼女。それは楽曲が進むほどにさらに激しくなり、叫ぶように〈もっともっと もっともっとしりたい〉と繰り返す姿には、ある種の憑依的パフォーマーとしての資質が感じられて、アーティスト・中村さんその才能の奥深さを改めて知ることができた。
アンコールでは「電音部」イケブクロエリアの仲間である和久野愛佳と矢吹真央が花束を持ってお祝いに駆けつけ、中村は熱烈的な投げキッスで喜びを表現。そして水底のような揺らめきと体を震わせる重低音を湛えた「再再」で、感傷の底に沈む女の子の気持ちを寂しそうに描き出すと、最後は一転して煌びやかなエレクトロポップ「誰にも言えないけど」を歌って、七色のレーザーが飛び交うなか、ステージを左右に動き回りながら〈好き〉の気持ちを爆発させて、恋心を抱く女の子の乱高下する心情を対極的な2曲で見事に表現してフィナーレ。彼女が思う“かわいい”の形、女の子の感情が動くその瞬間のエモーションを、音楽を通して体感できる素晴らしいステージだった。なお、最後には中村がライブに来てくれたラブリーちゃんたち（ファン）に宛てた手紙を読み上げるサプライズもあったのだが、その内容をここに書き記すのは野暮なので割愛させていただく。だが、そのときの彼女の振る舞いこそが“カワイイ”の極致だったことは、ぜひ伝えておきたい。
■リリース情報
中村さんそ 1st BEST ALBUM
『中村さんそに魅せられて』
税込￥3,300
発売元：TOKYO LOGIC Ltd.
販売元：Warner Music Japan
品番：QYCL-10042
JAN：4943674393718
CDジャケットイラスト イラストレーター：メイ・メイ デザイン：猫研あいお
楽曲リスト
01：わがままが言い足りない
02：keep out
03：moremoremore
04：at night
05：in the gravity
06：morning lie
07：sweety girl feat. nyankobrq
08：誰にも言えないけど
09：escape
10：sugar taxi
11：どろあまちゅ♡
12：inside me
13：勘違いなんかじゃない
14：Magic
15：ぐ〜る・ぐるーゔぃ
配信先URL：https://sansonakamura.lnk.to/NSMT
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