GEMN、クリープハイプ、TWICE、西野カナ、緑黄色社会、Ado……注目新譜6作をレビュー
New Releases In Focus
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はGEMN「ファタール」、クリープハイプ「あと5秒」、TWICE「DIVE」、西野カナ「EYES ON YOU」、緑黄色社会「恥ずかしいか青春は」、Ado「0」の6作品をピックアップした。(編集部)
GEMN「ファタール」
アニメ『【推しの子】』(TOKYO MXほか)第2期オープニング主題歌のために結成された、中島健人とキタニタツヤによるユニット・GEMN。基本の作詞作曲はキタニで、第1期の主題歌であるYOASOBI「アイドル」を引き継ぎ、ステージの光とそこに立つ人間の暗部をめいっぱい抉る歌詞を書いたとか。ただ、そこに聴きやすさや大衆的エッセンスを加えていったのが中島。言葉を詰め込んでいくスタイルはキタニが得意とするものだが、最初のポエトリー風ボーカルは、途中からアッパーなメロディとともに踊り出し、さらに「○○的」というワードが印象的なリフレインに変化。歌詞の強度がどんどん変わっていくのがわかる。これがポップスとしての説得力だ。(石井)
クリープハイプ「あと5秒」
“5秒でスキップされてしまう広告”、“本編の映像”といった誰も普通に目にしているものを、どうしても本命になれない“あたし”、どこの誰かは知らない“本命”と重ねた歌詞がとにかく秀逸。当たり前すぎて気にも留めない日常的な事柄にフォーカスし、ずっと気づかなかった、でも、ずっとそこにあった感情をリアルに映し出すことで「この気持ち、私も知ってる」と思わせる、尾崎世界観(Vo/Gt)にしか生み出せないソングライティングの素晴らしさがこの曲には確かに宿っている。そこに説得力を持たせているのが、感情の吐露をギリギリまで抑え、まるで主人公の独り言のようにも聴こえるボーカル。そして、骨太のリズムセクションと歪みと煌びやかさを対比させたツインギター。このバンドでしか味わえない物語と音楽がここにある。(森)
TWICE「DIVE」
最初に聴こえてくるのは女性たちの楽しそうな笑い声。少しずつトラックの音量が上がり、〈浮かれ気分な Everyone/間に覗くのは Your bored face〉というフレーズが耳に飛び込んできた瞬間、“楽しそうなパーティのなか、ふくれっ面をしている君”という映像が脳内に広がる。TWICEの日本オリジナルアルバム5作目となる『DIVE』のタイトルトラック「DIVE」はスムースな旋律とまるで映画のワンシーンのようなリリックが印象的なミディアムチューン。80’sシティポップや90’s R&Bのテイストを感じさせる音像、シックな佇まいとキュートな表情を行き来するようなボーカルとハーモニーからは、音楽的な深化をしっかりと感じ取ることができる。日本語の音の響きを心地よくリズムに乗せたフロウも高品質。(森)