ゆいにしお、それぞれの“平日”をリスペクトする一夜 『weekday』リリースツアー最終公演

しっとりとした雰囲気から、ゆいにしおの「後半戦も楽しんでいきましょう!」という元気な言葉と共に再びバンド編成に。「We Are Girls Forever!」と「TWO HANDS」が披露され、会場のボルテージも再び上がっていく。「みんな最高! ありがとう!」と言いながら曲を終えると、本編最後のMCへ。「このツアーこそが私のweekday」とツアーを振り返り、仕事だけではなく勉強や育児、療養など“休み以外のことに励む日=平日”と説明したうえで、「どうしても休日よりはないがしろにしてしまいがちな平日。でも平日は思った以上に人生のなかで多くの時間を締めていて、だから私はそんなあなたの平日を輝かせたい。そして私の平日も輝かせたいと思ってこのアルバムを作りました」と語った。これまでは友人の歌を作ってきたが、今回は自分のために“自分は何が好きだったか”を思い出しながらアルバム『weekday』を作ったと続け、「そこには本当に本当に愛おしい日々が続いていた」と話すゆいにしお。アルバム制作期間はそのまま、自分を受け入れ、愛し、それらを繰り返し確認する時間にもなったのだろう。そして“平日”を愛する気持ちが“身に着いた”。だからこそゆいにしおは音楽にその愛を行き渡らせることができ、正直であることができ、その両方を自然体ゆえの軽快さで歌えているのだと思う。


再び「あなたのルーティンをリスペクトして」と言うと、本編最後の2曲としてTVアニメ『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました 2nd』(AT-Xほか)のオープニングテーマ「routine life」と、「BFF」を披露。ゆいにしおはアウトロが終わらないうちにバンドを残し、颯爽とステージを降りた。

観客からのアンコールに応え、ツアーグッズTシャツを纏ったゆいにしおが同じくグッズのトートバッグを手にステージへ再登場。グッズを紹介しつつ、ツアーが終わってしまうことへの寂しさも語った。アンコールの1曲目は、ゆいにしおが「ままならない平日も、このキラキラがあるだけで少しだけ目の前がパッと明るくなる」というメイクアイテムの名を冠した楽曲「アイシャドウ」を弾き語り。バンド編成でのツアーだが、全4曲のミニマムセットも見ることができ、イチゆいにしおファンとしては喜びもひとしおだ。さらに、アイシャドウが〈二重にたまった〉という歌詞で、この日何度目かわからない「あるある」という気持ちが湧いてくる。
アンコール、そしてこの日のライブを締め括った最後の曲は、「息を吸う ここで吸う 生きてく」。この曲を大事に思っている個人として、ゆいにしおのファンとして、彼女にもこの曲の歌詞〈離さないで この素晴らしい日々を/また目覚めて 食卓につくの〉を伝えたくなった。この日の5曲目としても登場した「チートデイ」では、〈きっと私は選ばれない〉という歌詞が繰り返される。いくら自分を愛せたとて、生きていればそんな気持ちになる日が何度も訪れるはずだ。そんなときにゆいにしおが、彼女自身の歌で素晴らしい日々を思い出し、また目覚め、食卓につけたら。同じ20代後半の女性として、エールを送らずにはいられない。

年齢を重ねるごとに育ったゆいにしおのパワーある歌声は真っ直ぐに届く。そして字幕がなくとも明瞭に言葉が耳に入ってくる歌い方が、ゆいにしおの正直な歌詞を頭に、体にするりと滑り込ませてくる。聴く人に「幸せになりたいなんて言ってられないよ」と小恥ずかしく思う隙も与えない。そんな彼女が歌う自分と社会。aikoのラブソングがどこまで続くのかを楽しみにしているのと似た気持ちが、ライブ中に湧いてきた。ゆいにしおは次の曲で、30代になって、さらにその先で、どんな“今”を歌うのだろう。もしかすると、正直に歌うことを辞めたくなるときが来るかもしれない。それはそれで、何かを隠した状態をそのときの“正直”として、ずっとずっと歌い続けてくれたらと思う。そんな思いで、ゆいにしおを含む平日に奮闘するすべての人々と、自分への愛が深まる時間となった。
※1:https://realsound.jp/2024/03/post-1591665.html
<セットリスト>
1. ワンダーランドはすぐそばに
2. yyyymmdd
3. おいしい温度
4. mid-20s
5. チートデイ
6. morning walk
7. Rough Driver
8. さくら
9. me&cat
10. アイスコーヒー
11. フレンド
12. 帰り道ランウェイ
13. 会いたいな今夜
14. We Are Girls Forever!
15. TWO HANDS
16. routine life
17. BFF
EN1. アイシャドウ
EN2. 息を吸う ここで吸う 生きてく

























