TRACK15、Hakubi迎えた『bouquet』ツアーファイナル 会場の隅々まで届けた歌声と楽曲への自信

TRACK15『bouquet』ツアーファイナルレポ

 大阪・高槻出身の4ピースバンド、TRACK15。2020年10月結成ながら、1stシングル『Three』がオリコン週間ROCKシングルランキング8位を獲得。2024年3月には1stミニアルバム『bouquet』をリリースし、野外音楽フェス『JAPAN JAM 2024』にも初出演を果たすなど、彼らの快進撃は止まらない。今回の『bouquet』を携えた東名阪対バンツアーも全会場ソールドアウトし、バンドの知名度は大阪のみならず、全国へと波及しているように感じる。

 今回、最終公演の地に選んだのは自分たちのホームグラウンドであるOSAKA MUSE。過去にはflumpoolといったアーティストも輩出したこの場所で、TRACK15は腕を磨いてきた。そして対バン相手として指名したのは、同ライブハウスの姉妹店にあたるKYOTO MUSE出身のバンドHakubi。二組の共演は、2022年に行われた『“OUR CANVAS” OSAKA MUSE 35th SPECIAL Anniversary』というイベント以来なのだが、その時はTRACK15はオープニングアクト、Hakubiはトリ前という出演順であった。

 あれから2年。成長をし続ける彼らはHakubiを相手にどのような演奏を見せるのか。

 先攻はHakubi。マツイユウキ(Dr)、ヤスカワアル(Ba)、片桐(Vo/Gt)の3人がステージに登場。まず演奏された「光芒」では、ソリッドなギターの響きと、美しくも力強い歌声が会場を掌握していく。演奏後に「最後まで本気でぶつかり合いに行きます。OSAKA MUSE行けますか!」と片桐が観客を煽り、「ハジマリ」「辿る」といったナンバーを惜しげもなく披露していく。Hakubiの音楽には揺るがない信念がある。そしてそれを表現するだけの肉体も兼ね備えている。だからどのような場所であっても、一瞬で自分たちの色に変えてしまうのだ。

 ライブ中盤、片桐は同じMUSE系列のライブハウスをホームとしているつながりはあるが「とってもいい曲と歌を書くバンドで本気だと感じて今回の対バンを受けた」と語った。Hakubiは対バンを勝負の場だと考えている。それゆえにどのライブでも、一切の手を抜かずに全身全霊をかけて本気で観客と対峙していく。終盤には亡き祖母への想いを綴った楽曲「拝啓」を演奏し、以降最新アルバム『throw』のナンバー「Heart Beat」、片桐の熱き思いがこだまする「mirror」とラストスパートをかけていく。

 そして最後に演奏されたのは「悲しいほどに毎日は」。おびただしいほどの熱量を会場に叩きつけて、ステージを後にした。自分たちができる最高のパフォーマンスをすることで、TRACK15へとつなげたHakubi。勝負への執念と圧倒的なパワーにただただ圧倒されるアクトだった。

 Hakubiの後、登場したのは本日の主役であるTRACK15。蓮(Vo/Gt)、寺田航起(Gt)、 高橋凜 (Ba/Cho)、前田夕日(Dr/Cho)の4人が登場し、1曲目に演奏されたナンバーは最新アルバム『bouquet』から「オレンジ」。エモーショナルで会場を飲み込んでいくHakubiとは対照的に、蓮のしなやかで透き通る歌声と心にそっと寄り添っていくかのような優しいサウンドが会場を包み、観客の体温を徐々に上げていく。

TRACK15ライブ写真(撮影=ヤマサキセイタロウ)
TRACK15ライブ写真(撮影=ヤマサキセイタロウ)
寺田航起
TRACK15ライブ写真(撮影=ヤマサキセイタロウ)
高橋凜
TRACK15ライブ写真(撮影=ヤマサキセイタロウ)
前田夕日

 音源では感じられなかったが、ライブで彼らのサウンドを聴くとバンドとボーカルのバランスの良さに驚かされる。しなやかで曇りのないボーカルはこのバンドのアイデンティティの一つであるが、その良さをかき消さないようにサウンドがしっかりとコントロールされている。だからどれだけ大きな音になろうとも、透き通った歌声はしっかり会場の隅々まで届くのだ。

 1stシングル『Three』からのナンバーである「私的幸福論」を演奏後、「プラネタリウム」「シティーライト、今夜」と次々と演奏を繰り出していくTRACK15。その姿を見ながら、私は「今の自分たちの楽曲に相当な自信がある」と感じた。全体を振り返ると、同バンドが今回ライブ本編で演奏したのは8曲。そのうち「私的幸福論」以外は全て『bouquet』からの楽曲である。また同アルバムに収録されている楽曲は全てこのライブで披露された。彼らといえば「ハルハル」「眠れない」といった代表的な楽曲があるが、それを演奏せずに最新アルバムを余すことなくやろうとする姿勢は今の自分たちの楽曲に対する自信の表れではないだろうか。

TRACK15ライブ写真(撮影=ヤマサキセイタロウ)

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