Lucky Kilimanjaro 熊木幸丸「10年はまだはじまりに過ぎない」 “100年”スケールで創造するダンスミュージック

ラッキリ、“100年”スケールでダンス

幕張を今までで一番面白いステージとして作ることができれば

――「実感」は、サウンド面ではどのようなことを意識されていましたか?

熊木:セッション的に作った曲ではあるんですけど、南アフリカ発のダンスミュージックでアマピアノというジャンルがあって、そのアマピアノを速くしたら面白そう、という発想から入りました。そこから「アマピアノを速くしたらテクノやん」という気づきがあり(笑)、「テクノっぽくやっていったら面白そうだな」とか、ざっくりとしたイメージを拡張しながら作っていった曲ですね。

――アマピアノのどういった部分に熊木さんは惹かれたんですか?

熊木:南アフリカにあるビート感に、ジャズやプログレッシヴハウス、ディープハウスの流れを上手く混ぜたようなジャンルなんですけど、哀愁があるというか、音楽の進み方がすごく好きだったんです。あまり速いビートではないんですけど、推進力がある。でもそれはR&Bやヒップホップに感じられる推進力とは少し違う。ゆったりと、でも強く、日々を生きるような感覚を感じられるビートだなと思っていて。「アマピアノがやりたい」というよりは、「こういう推進力のあるビート感をやれたらいいな」という気持ちがずっとあって、それが出たのが「実感」だと思いますね。

――ちなみに、アマピアノというジャンルをやられているアーティストのなかで、熊木さんが特に好きな方はいますか?

熊木:ああ……アマピアノに入るのかどうかはわからないですけど、DJブラックコーヒーという人が好きです。ただ、「実感」に関してはそこまで具体的なリファレンスがあったというわけではないですね。もう少し、アマピアノのジャンル感みたいなものを捉えていた感じだと思います。

――カップリングの「次の朝」は、Lucky Kilimanjaroが表現してきたことをすごくシンプルに、ダイレクトに、表現している曲のように感じました。そして、そのダイレクトさがむしろすごく新鮮な曲でもある。

熊木:本当にシンプルに、「踊れば次の朝が来る」ということを歌っている曲です。悩みながら日々、私も生きているし、皆さんもそうだと思います。そのうえで、「もう踊るしかないよね?」という。踊ることが、それを救ってくれると思うので。僕にとって救いになるのが、KORGのM1から出るピアノの音なんです。このピアノの音がすごく好きなんです。90年代ハウスなんかで定番の音なんですけど、その音を聴くと「うわっ、踊るしかねえな」と思いますし、自分がずっとそういう音楽に救われてきたからこそ、僕もそれを表現しようと思いました。今までもM1ピアノを使ってリフを演奏していた曲はいっぱいあるんですけど、改めて、自分の王道的な感覚を「こういうことだよね」と表現してみた曲だと思います。装飾しない中で、だからこそ出てくる自分の半生(はんなま)みたいな状態というか。それがリアルだし、いいなと思った曲ですね。

――「実感」の話もそうですけど、改めて、ご自身の情熱や根源的に好きなものを見つめる期間だったということですよね、このシングル制作期間は。

熊木:そうですね。基本的に僕は好きな曲をやりたい人間なんですけど、この作品で変わった部分があるとすれば、より「自分の好きなものに素直でいいかもしれない」と思ったかもしれないです。前々回のシングル「後光」のカップリングに「でんでん」という曲があるんですけど、ライブであの曲をやったときに踊っているお客さんの姿を見て、「もう、この感じでもついてきてくれるんだ」と思ったんです。「もっと面白いことに対して素直でいいかも」と思えたというか。みんなが踊れるように、ある程度のキャッチーさは考えるけど……でも、「もう展開とかなんでもいいんじゃね?」みたいな(笑)。

――(笑)。

熊木:「そういう配慮はもういらないかも」と思えることが最近、増えてきていて。昔も素直ではあったんですけど、昔の素直さは「これでいいんじゃい!」みたいな、少し強がった素直さだったと思うんです。でも、今はみんなと踊れていますし、もっといろいろなことを経てからの素直さが出てきたような気がします。なので、同じ「素直」でもスタンスは結構変わったなと思いますね。

――僕も今年1月の東京国際フォーラムでのライブで生「でんでん」を体感しましたけど、あの曲の盛り上がりはすさまじかったですね。凶暴なくらいの盛り上がりでした。

熊木:「でんでん」は「俺だったらこういう曲でめっちゃ踊るな」と思える曲を書いてみよう、と思ってできた曲だったんです。「カップリングだし、何をやってもいいか」と思って。ライブで絶対に面白くなる予感は自分のなかにもあったんですけど、実際にそうなりましたね。自分がエキサイトする感覚を入れた曲が受け入れてもらえたことは、すごく大きかったです。フェスやイベントのセトリにも入れてみたんですけど、たぶん僕らのライブは初めてのお客さんもすごく踊ってくれて。その光景を見ていると、「俺は今まで、みんなの素直さを信じることができていなかったのかもしれない」と思ったんですよね。もっと、みんなや自分の素直さを信じていいなと。だから「実感」も、サビというサビがある構成ではなくて、「どう踊らせるか?」とか「どの音でみんなにエキサイトしてもらうか」だけにフォーカスした曲になったんだと思います。

――今回も素敵なジャケットですが、どのようなイメージがありましたか?

熊木:そこまで具体的なことをデザイナーの方に伝えたわけではないんですけど、スピード感というか、「止まらない性急さ」みたいなものが欲しいと思っていて。それでいろいろ案をいただいた中で、「これが一番速いっすね」となりました(笑)。

――なるほど(笑)。

熊木:今まで、自分自身に対してずっとどこかで「刹那性が足りない」という思いがあったんですよね。「ダンスミュージックをやっておいて、なに言っているの?」という話なんですけど。「今があればいい」という概念があまり自分にはなかった。さっきも言ったように「ロングスパンで考える」ということを両輪として持たないと無理なところがあって。でも今回は、「今を燃やしている」という速度がもっと欲しい、という欲望があったんです。その欲望がこのジャケットになりました。

――その「刹那性」は、今回のシングルの大きなポイントかもしれないですね。

熊木:「でんでん」以降はそういうことなのかもしれないです。僕は未来を捨て切ることはできないので、長い時間のことを考えていたいけど、でも今をもっと味わってもいいなという……それは自信なのか、信頼なのか、わからないですけど。そういう欲求が曲になってきているのかもしれないです。

――最後にライブについても聞かせてください。この取材は3月に行っていて、記事が公開される頃には日比谷野外大音楽堂でのライブも終わっていると思いますが、2021年の最初の野音が本当に素晴らしいライブだったので、楽しみです。

熊木:最初の『YAON DANCERS』の思い出があるからかもしれないですけど、野音は好きな場所なんです。照明の面なんかでいうと、今の野音はライブハウスに比べてそこまで遊べる会場ではないんです。でもそれが逆に「都会のど真ん中で踊っている」という状況にすごくフォーカスを当てている気がして。自然と、楽園ができているというか、すぐそこには有楽町のビル群がありますからね。あの立地で、プレーンな会場としてみんなが踊れる場所があるってすごいことだと思うんです。建て替えの後はわからないですけど、あんな会場があることはいいことだなと思いますし、僕たちみたいなバンドがすごく合う会場だと思うんですよね。「踊る」ということの全員の喜びが、しっかりと放出される場所だと思うので、すごく好きです。ずっと「また野音でやりたい」とは言っていたんです。

――そして、6月からは10周年記念ツアーとして『Lucky Kilimanjaro presents.自由“10”に踊ろう TOUR』が始まります。タイトルは「自由」と「10」がかかっていますね。

熊木:「じゆう」でも「じゅう」でも、どっちで読んでくれてもいいです(笑)。10周年ということで、このツアーではこれまでのLucky Kilimanjaroを改めて再構築して見せていきたいんですけど、さっきも言ったように、「10周年を振り返る」みたいなことが僕はあまり好きではないので。10周年って、まだまだチュートリアルが終わったくらいで、楽しくなっていくのはここからだと思うんです。なので、10周年を祝いたいというのはもちろんですけど、むしろ「この先のもう10年を踊るために、みんなで始めていきましょう」というニュアンスの方が僕の中では強いです。「踊り始め」のライブとして、このツアーも、野音も、位置付けることができたらいいなと思っています。

――そして、野音のライブで発表されるということですが、2025年2月には幕張メッセでのワンマン公演が開催されるということで。

熊木:幕張に関しては今の段階ではまだノープランで、何もわからないです(笑)。

――まだ先のことですからね。

熊木:ミュージシャンにとって1年ってすごく大きいので。だからこそ、Lucky Kilimanjaroが今年1年でインプットしたり、新しい感性を身に付けたり、成長したり、いろいろな体験をしたりすることで、幕張を今までで一番面白いステージとして作ることができればいいなと思います。

――楽しみにしています。

熊木:でもまぁ、なるようにしかならないですからね(笑)。意識しすぎると素直に踊ることはできないので、適度にスタッフに頑張ってもらいつつ、僕は「Lucky Kilimanjaroがみんなと一緒に踊り続けるためにどんな表現がいいのか?」、「何が自分の感情から表出できるのか?」ということをシンプルに、日々のなかで考え続けていきたいです。そのうえで、みんなで泣きながら踊りたいですね。

Lucky Kilimanjaro『実感』ジャケット写真
Lucky Kilimanjaro『実感』

■リリース情報
Lucky Kilimanjaro『実感』
2024年4月24日(水)配信リリース
01.実感
02.次の朝

■ツアー情報
『Lucky Kilimanjaro presents.自由“10”に踊ろうTOUR』
2024年6月8日(土)大阪・大阪城音楽堂
2024年6月14日(金)札幌・Zepp Sapporo
2024年6月16日(日)仙台・SENDAI PIT
2024年6月22日(土)金沢・EIGHT HALL
2024年7月6日(土)広島・CLUB QUATTRO
2024年7月7日(日)福岡・Zepp Fukuoka
2024年7月12日(金)名古屋・Zepp Nagoya
2024年7月15日(月・祝)新潟・NIIGATA LOTS
2024年7月20日(土)東京・Zepp DiverCity

OPEN 17:00/START 18:00
※札幌公演、名古屋公演のみ OPEN 18:00/START 19:00

【ファンクラブ最速先行受付中】
Official Fan Club「LKDC」先行
2024年3月8日(金)18:00〜3月18日(月)23:59
https://fc.luckykilimanjaro.net
・チケット料金:¥5,600
・LKDC 先行「継続割」:¥5,000
※『YAON DANCERS 2024』FC先行時及びそれ以前からFCに入会の会員向け特別割引。
※45日以上会員を継続している方が対象(2024年1月22日までに入会、以降継続必須)。45日未満、および新規入会の方は割引対象とはならない。
※1申し込みあたり4枚までの購入可能。なお、3枚以上申し込みの場合は、2名以上の入会が必須。3枚以上申し込みの場合は、1名(申し込み者)が45日以上会員継続していれば、もう1人が新規会員でも「継続割」が適用。
※LKDC先行は「抽選」。FC会員でも落選となる場合あり。

『Lucky Kilimanjaro presents. TOUR “YAMAODORI 2024 to 2025”』
2025年2月16日(日)幕張メッセ国際展示場 4・5ホール
OPEN 15:00/START 17:30

【FC 先行チケット申し込み受付中】
LKDC 最速先行(スタンディング):¥7,800
LKDC先行特別価格(継続割に限る):¥7,200
*「継続割」については、91日以上会員を継続されている方が対象となります(2024年1月22日までに入会、以降継続必須)。

受付期間:4月21日(日) 21:00~4月30日(月)23:59
https://fc.luckykilimanjaro.net/

企画制作:dreamusic Artist Management,Inc./VINTAGE ROCK std.
TOTAL INFORMATION:VINTAGE ROCK std.
TEL. 03-5787-5350 [平日12:00-17:00]/WEB https://vintage-rock.com

■関連リンク
オフィシャルサイト:http://luckykilimanjaro.net/
Official Fanclub「LKDC」:https://fc.luckykilimanjaro.net/

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