ジャズやヒップホップを超えて凝縮された6人の個性 S.A.R.、1stアルバムでのクールな化学反応
予定調和を打ち壊せたジャムセッションの手応え
――アルバムにはジャズトランペット奏者の寺久保伶矢さんと、シンガーのLil Summerさんがゲストミュージシャンとして参加していらっしゃいます。
Eno:伶矢くんに関しては、何の曲に入ってもらうかとか何も決めずに来てもらって。
may_chang:彼とは大学が一緒だったんですよ。
Eno:そういう関係性もあったから、超ラフな感じでやってもらったんですよね。Lil Summerに関しては、歌ってほしいなと前から思っていて。「New Dawn (feat. Lil Summer)」という曲に入ってもらったんですけど、作っているときから歌いやすさを意識して作ったので、わりと準備してLil Summerに歌ってもらったという感じです。
――最初の「Intro (for P.S.)」からすごくワクワクするというか、続く「Cannonball (feat. 寺久保伶矢)」へのトラックのトランジションもドライブ感があっていいなと思いながら聴いていました。
Eno:イントロとアウトロは、スタジオの終了時間ギリギリのタイミングに録り始めたんです。これができた時は泣きました。
Imu Sam:うん、泣いてたね。「予定調和が壊れた!」って言って泣いてた(笑)。
Eno:自分のイメージ通りにいくってことは、自分以上じゃないし、見えているものしかできてない。それを超えるものじゃないと「いい作品だな」とは思わないんです。ジャズって即興性が強いし、そういうところがわかりやすい装置になっていると思うんですけど、このイントロとアウトロは想定していなかったんですよ。たまたまジャムったら、急にみんなの潜在的なものがウワッと出てきちゃった、みたいな感じだったんです。それに感動しちゃって。
santa:みんなの演奏を聴いたらメロディもすぐに出てきたんです。スタジオで録って聴いたときは疲れすぎてたんですけど、家に帰ってスピーカーで聴いた時に良いものができたと実感しました。
――1stアルバムができ上がった手応えや達成感はどうですか?
Eno:アルバムに関しては、やれることはやりました。でも、リリース時点で完成してから3カ月くらい経っているんですよね。俺はもう新しいレコードをたくさん買ったし、次のやりたいことがある。
may_chang:俺はアルバムを結構聴き返していて。みんなの技術的にも、この2年間ですごく上がったなと感じます。特に「New Dawn」はすごく好きですね。
Attie:最初やってきた頃からは方向性とかも微妙に変わってきているんですけど、だからと言って違和感があるわけでもなくここまで来れたので、こうしてアルバムに仕上がって嬉しいです。
――S.A.R.のMVやアートワークも統一感があってクールですよね。そうしたクリエイティブな面にもこだわっている?
santa:MVに関しては僕が発案することも多いですね。結局、今の段階では、凝って作り込むというよりは自然な感じの方がS.A.R.に合ってるのかな、と思っています。適当にコンビニの前でダベってるくらいの(笑)。「Cannonball」のディレクターはShun(Takeda)くんっていう専門学校時代からの友達で、「Skate」から頼んで撮ってもらっています。
Imu Sam:アートワークを担当してくれているのも、高校からの友達のYUKI FUKAYAです。
Eno:「S.A.R.の世界観を作る」というよりは、自然と自分たちがかっこいいと思うものを一緒に作ってる感じだよね。単純に周りにいるかっこいい人たちと一緒にやっていこうというか。
santa:そうですね。MVにしても、コンセプトとかは伝えていないんですよね。曲とリリックを渡して、「こういう曲なので」ってお任せする。それで上がってくるものがめっちゃ良くて、「これ、ちょっと違うんじゃない?」っていうものは一つもないんです。S.A.R.に関しても、個人的にはバンドっていうより友達なんですよね。
――普段もメンバーで一緒に過ごすことが多い?
Taro:大体、may_changの家に集まって。わりとみんな、インドアなんですよ。
may_chang:そうですね、僕の家で制作をしていて。みんなそんなにお金もないし、結局どこかに遊びに行くっていうよりも、コンビニ前にずっといるみたいなことも多いですね。
santa:何時間もずっといて。「俺ら、おかしいよね?」って。
Eno:あとは大体、レコ屋にいますね。ライブで大阪の味園ユニバースに行かせてもらったんですけど、そのときも周りのレコ屋がすごくて……10軒以上あったよね?
Taro:レコードをディグる合間にライブをする、くらいの……(笑)。
Eno:本当に。だから、レーベルの経費で好きなだけレコードを買うっていうのが僕の夢ですね(笑)。
――S.A.R.として標榜していきたいものや、こういう音楽をやっていきたいという意向に関してはどうですか?
Eno:難しいですね……僕にとって音楽は手段じゃなくて人生なんです。やっていければよくて、それ以下でもそれ以上でもない。ただ一つ、最近思っていることがあって。“ブラックミュージック”という言葉を使いたくないんです。「黒いグルーヴだね」とか言われることもよくあって。そこに肌の色を持ち込まなくていいのでは? と思うんです。便利な言葉だし、言葉狩りをしたいわけじゃないんですけど。シンプルに「いい音楽だね」って言われたいですね。俺ら、日本人だし。
Taro:RadioheadもThe Beatlesも大好きだしね。
――『Verse of the Kool』をこんな風に聴いてほしい、という希望はありますか?
Eno:「好きなように聴いてほしい」ということは大前提なんですけど、おこがましいながら、1回だけでもいいからアルバム通して聴いてみてほしいです。
――4月末には初めてのワンマンライブ『S.A.R. presents: “Kool Theory”』も控えています。
santa:初めてのワンマンなので、楽しみです!
Imu Sam:何か起こるか、楽しみです。
――今後もどんどん大きなステージが待っていると思うのですが、現時点での目標はありますか?
santa:今の段階でも自分たちがやりたいようにやっているんですけど、その結果として、ワンマンライブをやらせてもらえるようになったと感じているので、このままやっていけばデカくなれるでしょうって気持ちです。
may_chang:あとは、ちゃんと音楽でご飯食べられるようになったらいいな。バイトしなくてもよくなりたいし、上手い天ぷらとか食えるようになりたいです。
Snata:そうそう。
Attie:メンバーのルーツが被っていなくても、自分たちが好きとかかっこいいと思う、いわゆる琴線に触れる部分っていうのはそれぞれ似通っているのかなと思うんです。それでやっていけば、不思議と統一感ができてくるのかなと思っています。なので、そうした部分を大事にしながら活動を続けていきたいですね。
◾️リリース情報
1stフルアルバム『Verse of the Kool』
2024年3月27日(水)配信リリース
ダウンロード/ストリーミング:https://sar.lnk.to/verseofthekool
【収録曲】
01. 「Intro(for P.S.)」
(Lyrics:santa/Music & Arranged by S.A.R.)
02. 「Cannonball(feat. 寺久保伶矢)」
(Lyrics:santa, Imu Sam/Music:S.A.R./Arranged by Eno, 寺久保伶矢)
03. 「Clouds」
(Lyrics:santa/Music:S.A.R./Arranged by Eno)
04. 「Verse of the Kool(Part I)」
(Music:S.A.R./Arranged by S.A.R., 寺久保伶矢)
05. 「POOL」
(Lyrics:santa/Music & Arranged by S.A.R.)
06. 「You be Kool」
(Lyrics:santa, Imu Sam/Music:S.A.R./Arranged by Eno)
07. 「Desolate」
(Lyrics:santa, Imu Sam/Music:S.A.R./Arranged by Eno)
08. 「Verse of the Kool(Part II)」
(Music & Arranged by S.A.R.)
09. 「Kaminari」
(Lyrics:santa/Music:S.A.R./Arranged by Eno)
10. 「Verse of the Kool(Part III)」
(Music:S.A.R./Arranged by S.A.R., 寺久保伶矢)
11. 「UPTOWN」
(Lyrics:santa, Imu Sam/Music:S.A.R./Arranged by Eno)
12. 「New Dawn(feat. Lil Summer)」
(Lyrics:santa, Lil Summer/Music:S.A.R., Lil Summer/Arranged by Eno)
13. 「Outro(for P.S.)」
(Lyrics:santa/Music & Arranged by S.A.R.)
◾️ライブ情報
『S.A.R. presents “Kool Theory”』
・OPEN / START:19:00 / 19:30
・会場:TOKIO TOKYO
・チケット代
前売り一般:¥3,000、当日一般:¥3,500
購入リンク:https://w.pia.jp/t/sar-kooltheory/
関連リンク
S.A.R. YouTube Channel:https://www.youtube.com/@s.a.r.6604
S.A.R. Instagram:https://www.instagram.com/s.a.r.official/
S.A.R. X:https://twitter.com/SARoffcial311