町あかり、独自のイメージを具現化したディスコなEP ユニークな制作背景を語る

町あかり、ディスコなEPの制作背景

 歌謡曲からの影響を独自に昇華させたユニークな歌詞や曲調で、独自の活動を続ける21世紀型女子シンガーソングライター“町あかり”が、春夏秋冬で4枚のEPをリリース。その第一弾となる『地球出禁にしていいよ ~ディスコあかり DISCO Machi Akari』は、“ディスコ”をテーマに、YouTubeでMVが公開されて話題の「地球出禁にしていいよ」や「常磐ディスコ港町」など新曲4曲を収録。独自の視点から繰り出されるユーモアたっぷりの曲名と歌詞、そしてエッセンスとして散りばめられた70~80年代のディスコサウンド。その奥底には、彼女ならではの感性によるメッセージや思いが込められている。大人には懐かしくも新鮮で、若い世代には全く新しい、令和に贈る“ディスコあかり”が今宵オープン!(榑林史章)

1年を通して春夏秋冬でEPをリリース

ーー春盤はディスコがテーマとのことで、どうしてディスコをテーマにしようと思ったのですか?

町あかり(以下、町):1年を通して春夏秋冬でEPをリリースするというご提案をいただいて、それには季節ごとにテーマがあったほうがいいんじゃないかと。それで、ガールズバンド風とかいろいろな案をいただいた中にディスコもあって。春にディスコというのは、明るくてワクワクする感じがしていいなと思って、ディスコを選びました。

ーー聴かせていただくと、70~80年代に流行したディスコのエッセンスが感じられましたが、町さんは当時のディスコサウンドを聴いたことはあったのですか?

町:ディスコを取り入れた昔の歌謡曲も多いので、それを通して間接的に知っていたという感じです。当時の歌謡曲はディスコからの影響がすごく大きくて、例えば筒美京平さんが作られた曲は、海外から輸入されたものを筒美さん流に解釈して、ディスコを落とし込んだ曲がたくさんあって。例えば岩崎宏美さんのディスコの曲が私は大好きで、“ディスコなひろりん”が、私が最初に触れて感動したディスコ歌謡です。

ーー岩崎宏美さんはディスコをテーマにした『ファンタジー』というアルバムがありました。その頃は洋楽のディスコ曲を日本語でカバーすることも多く、西城秀樹さんの「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」もVillage Peopleのカバーで、ピンクレディーの「ピンク・タイフーン(In The Navy)」もそうです。「ジンギスカン」とかも流行りました。

町:いいですよね、その当時のディスコブームって。私は後から知って、面白いブームだったんだなって思いました。実際のディスコの様子はどうだったのか、見てみたかったです。

ーー今回の4曲は、どんな風に作られていったのですか?

町:ディスコとは言え、同じような曲ばかりにならないように、いろんな曲にしたいと思って。歌詞は、思いつくがまま自由に書いていきました。

ーー「地球出禁にしていいよ」はMVも凝っていて、映画『スター・ウォーズ』のハン・ソロのオマージュみたいなのが出てきて。

町:そもそもハン・ソロって何ですか(笑)? 私、『スター・ウォーズ』を観たことがないので。

ーーええ~(笑)。ハン・ソロは『スター・ウォーズ』の登場人物の名前で、捕まってああいう黒い板状に固められてしまうシーンがあるんです。

町:そうなんですね、やっと判明しました。あのMVの話になると、皆さん「ハン・ソロだ」と言うので、「何だろう~」と思っていたんです(笑)。

ーーハン・ソロを知らずに、よくあのMVが撮れましたね(笑)。

町:MVの監督が高良嶺さんという映像作家さんで、全部監督のアイデアなんです。面識はなかったのですが、「映像もので何かやる時はぜひお声がけください」というメールを昨年末に突然いただいたんです。すごい熱量の長文で、そこには私の曲が好きで、辛い時に私の曲で励まされたという内容が書かれていて。それで実際にお会いして、その時は「何かできたらいいですね」という話止まりだったのですが、この曲のMVを作ることになった時に、「そういえば、高良さんという人と出会ったな」と思い出して、お願いすることになりました。映像は高良さんが「地球出禁にしていいよ」を聴いて思いついた世界で、私は出ているけど内容には関知してなくて。

町あかり 「地球出禁にしていいよ」MUSIC VIDEO

ーーメールがきっかけで知り合い、仕事に発展することはよくあるのですか?

町:たまにありますね。お問い合わせ先のメールアドレスに、取材依頼とかイベントの出演オファーとか、いろいろ来ますので。その中の一つで、とても素敵な出会いでした。

ーータイトルや歌詞が面白いですね。地球を出禁にされるほどのことって、この人は何をやったのだろうかと。

町:彼女は、それくらい怒っているということです。ディスコの曲を作るとなった時、Earth, Wind & Fireの「宇宙のファンタジー」とか、宇宙がモチーフになっている曲がたくさんあって、私の中ではディスコ=宇宙みたいなイメージがあったから、ディスコには宇宙がすごく似合うと思っていて。私はいつも曲を作る時はタイトルから考えるんですけど、日々そのために言葉をメモしていて、その中に「出禁」と書いてあって、何かを出禁にしたら面白いんじゃないかと。それでディスコだし、地球を飛び出したようなスケール感など、いろいろ考えて組み合わせていったら「地球出禁」という言葉が生まれ、恋愛をモチーフにお話を考えて作詞をしていった感じです。

ーー地球から出禁になった男は、結局何をしたのですか?

町:世の中には私の想像を超えたシチュエーションを想像する方もいると思うので、あまり具体的には言っていませんけど、私の中では浮気じゃないかなって。

ーーその女性にとっては、地球を出禁にするほどショックなことだったという。

町:はい。きっと何回も浮気をしているんです。何回もやっているけど、彼女は最終的には許してしまっていて、それでまたやったとすごく怒っている。彼女は優しくて、結構しっかりしているんだけど、男はそこに甘えているすごくだらしない人で、でもそういうところに惹かれてしまう部分もあるんだろうなと。そういうタイプの女性って結構いて、私は好きなんですよ。いろんな人から話を聞くと、ちゃんとしている女性ほどダメ男が好きな傾向があるっぽくて、そういう人が聴いて、ちょっとでも救われてくれたらいいなという気持ちもあります。町あかりが一緒に怒ってくれているみたいな聴き方で、スカッとしてもらえたらうれしいです。

ーー音の部分で言うと、「ジャンッ」て鳴る、オーケストラヒットという音が使われていて。

町:あれは、場面が切り替わる感じがするからということで、アイデアが出たんです。最初は一カ所くらいのつもりだったんですけど、私がすごく気に入ってしまって、切り替わりの度に入れてもらいました(笑)。

ーー次に「常磐ディスコ港町」ですが、MVでは、港でミラーボールを肩に担いでポーズを決めていて。

町:福島県いわき市にある、小名浜港に行って撮影しました。商店街や港で踊っている人は、地元で集めたエキストラで、これも高良監督に撮っていただきました。彼はすごいアイデアマンで、これも曲を聴いてああいった映像のアイデアがどんどん出てきたらしいです。

ーー最後に町さんは船に乗っていましたよね。

町:すごく小さく映っているだけなのに、そこまで観ていただいてありがとうございます。高良さんが「乗れ」って言うからクルーザーに乗ったんですけど、すごく寒いし波が荒くて船が揺れて大変でした。

町あかり 「常磐ディスコ港町」MUSIC VIDEO

ーーそもそも福島のいわき市小名浜を舞台にしたのは、どうしてでしょうか?

町:私自身は東京で生まれ育ったのですが、母の実家が小名浜で、小さい時からよく遊びに行っている大好きな場所なんです。また、以前から方言を使った曲を作ってみたいと憧れていて、小名浜の方言ならお母さんが添削してくれるだろうということで、方言にチャレンジしました。それがたまたま今回ディスコをテーマに作るということで、和ディスコの曲があってもいいなと思っていて、いろいろな要素が重なって、こういう小名浜の方言を使った和ディスコの曲になりました。小名浜には元気な人が集まっていて、そこで採れる魚も活きがいいし。そんな活気あふれる街とディスコの楽しさをリンクさせたら、きっと面白い曲になるんじゃないか。つまり「魚も美味しくていいところだよ!」ということをテーマに作りました。MVを観てもらえたらみんな踊っていて、小名浜の元気で明るいところが伝わるんじゃないかと。

ーー歌詞の〈来てくんちぇ〉とか〈おかずはなじょすっぺ〉などは、小名浜の方言なんですね。

町:はい。「~くんちぇ」は「~してください」で、「なじょすっぺ」は「どうしましょう」みたいな意味です。作詞をする上で「常磐地方、方言」で検索したらたくさん出てきたので、それを参考にしながら書いていきました。また、小名浜の方は原発や処理水の問題で、震災以降ずっと苦労されていて。でもすごく安全だしお魚は新鮮で美味しいということを、私が応援すると言うのはおこがましいけれど、そういう気持ちも含めて楽しい歌が作れたらなと思いました。

ーー小名浜ならではのグルメというと、何かありますか?

町:やっぱりお魚ですよね。この地域で有名なのは、メヒカリとか。漁港の近くで獲れたてが食べられるので魚介好きにはたまらないと思います、浜焼きができるところもあったり、のどかで私はすごく大好きなところです。

ーー楽曲としては和ディスコということで、三味線が入っているのがポイントです。

町:三味線は、和楽器バンドの蜷川べにさんが弾いてくださっています。すごく格好良くて、三味線を聴くだけでも価値があると思います。蜷川さんとは面識があったわけではありませんが、和楽器バンドさんとご縁のある方がいたので、お願いしたら快く引き受けてくださいました。

ーーもともと三味線を入れようと考えていたのですか?

町:はい。私はいつも打ち込みでデモを作るんですけど、その時点でオケに三味線を入れてあって。でもあくまでもディスコなので、いわゆる三味線奏者の方だとこういうノリがなかなか出せないんですね。それでポップスができる三味線奏者は誰かいないかと考えた時、蜷川さんしかいないと思って、ダメ元でオファーをしたという流れです。

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