GANG PARADE ヤママチミキ、真部脩一コラボ曲で発揮した歌声 『月刊偶像』が発掘するアイドルの秘めた魅力
ヤママチミキ(GANG PARADE)と真部脩一による楽曲「遊園 me feat. ヤママチミキ(GANG PARADE)」がリリースされた。
同曲は、シンセの音色が万華鏡のように鳴り響く煌びやかなサウンドスケープや、どことなく和のテイストを感じさせるオリエンタルなメロディ、遊園地を彷彿とさせるワードが散りばめられた遊び心あふれるリリックなど、全体にわたってキラキラとしたドリーミーな世界観が印象深い。そのなかで〈街の灯りが消えるまで/もう少し 楽しもうか〉といった、どこか切ないフレーズを歌い上げるヤママチミキのボーカルが胸を打つ。ポップで楽しいが、同時に胸がギュッと掴まれるような、その絶妙なバランスに惹き込まれる一曲だ。
作詞作曲を担当したのは、相対性理論の初期メンバーとして一躍脚光を浴びた真部脩一。真部は同バンド脱退後も数多くのバンドやプロジェクトに参加し、その唯一無二の作曲センスを発揮してきた。最近ではanoへ提供した「ちゅ、多様性。」が大きな反響を呼び、真部のソングライティングにふたたび注目が集まっている。まさに今、作曲家として再ブレイクの渦中にいる存在と言っていいだろう。
本曲では、真部がこれまで見せてきたその記名性の強いメロディや音作りはそのままに、〈楽しい記憶なんて 一瞬だから〉といった、目の前の状況を達観したような、ある種の刹那的な感覚も歌われる。夢のような時間は一瞬で、その魔法が解けるまでもう少しだけ浸っていよう、という歌だ。その感覚はある意味で、作家として浮き沈みを経験してきた真部ならではのものと言えるかもしれない。
一方で、そうした曲を歌うヤママチミキのボーカルも見逃せない。自身が所属するGANG PARADEでは、活動初期からその卓越したパフォーマンス力でグループを支えてきた。歌唱力には定評があり、この曲でも真部の紡ぎ出す独特のメロディをエモーショナル、かつ力強く歌いこなしている。真部はどちらかと言えば脱力系のボーカリストをプロデュースすることが多かったため、ヤママチのようにパンチの効いた歌声を持つ歌い手とのタッグは新鮮だ。だが、その相性のよさは聴いての通り。真部作品としても、ヤママチの歌唱史としても、今までにない化学反応が起きている。
この作品は、アイドルの“歌力”にフィーチャーし、さまざまなミュージシャンやクリエイターとのコラボレーションで音楽を届けるプロジェクト『月刊偶像』の第一弾として制作された。日本全国の多様なアイドルグループから、特に歌や声に魅力のあるメンバーをボーカルに迎え、ジャンルレスなミュージシャン達による提供楽曲を毎月リリースしていくという。
アイドルの“歌力”にフォーカスするというのは新しい切り口だ。最近は『THE FIRST TAKE』の人気もあって、アーティストのスキル面に大きな注目が集まっていることから、周りより秀でた才能や、他にはない魅力を持つ存在を推したいという空気は以前よりも強くなっている。そうした状況において、アイドルの歌唱力や表現力にも注目が集まるのは必然と言える。ひと頃と比べれば落ち着いた感のあるアイドルシーンだが、そのなかには燻っているボーカリストも多く、ただ時代の流れで注目されていないだけの逸材がまだまだ眠っている。そうしたまだ日の目を浴びていない隠れた才能をフックアップする場が求められていると思うのだ。まさにそれが『月刊偶像』である。