乃木坂46、中西アルノを座長に据えた『34thSG アンダーライブ』 14人が描く新章の続き
期を超えたという点に関しては、そのあとに用意された演出パートにも色濃く表れていた。「軽快なおしゃべりと小粋な音楽で来客を癒すバー」を舞台に繰り広げられるブロックでは、マスター役の吉田を中心に、来店した同期や後輩たちの悩みを解決していくのだが、その直前に長めのMCが用意されていたこともあり、ここで再びトークパートが続くことでライブが中弛みしてしまうのでは……と筆者は危惧していた。しかし、これに続くジャズアレンジの「三角の空き地」「涙がまだ悲しみだった頃」への序章的な役割を果たすという点では、このリラックスムードのトークを挟んだことは正解だったと、公演を見終えた今はそう感じている。
そのジャズアレンジが施された「三角の空き地」「涙がまだ悲しみだった頃」も、歌唱力に定評のあるメンバー(伊藤、小川、奥田、中西、中村、林、吉田)により披露。2曲とも青春感の強い内容だが、大人びたアレンジを施すことで歌詞が滲ませる苦味が強調され、かつ肩の力が抜けた彼女たちの歌声と見事にフィットしていた。ここでは、ミュージカルなどで鍛え上げられた中村の実力の高さが遺憾なく発揮されていたことは特筆しておきたい。
その後、吉田が店を閉め退出すると、店の売上を盗もうとする怪盗団として岡本、阪口、佐藤、佐藤、清宮、松尾、矢久保が登場するのだが、トーク中心だった前パートから一転。セリフなしでミュージカルチックなパフォーマンスを繰り広げる。ここでは「My rule」と「Hard to say」が歌唱されるのだが、前者ではコップを使ったパフォーマンス、後者ではステッキを使用して息の合ったダンスを展開。このようなストーリー性の強い演出をアンダーライブに用いるあたりにも、どんどん新しいことに挑戦していこうとする気概が伝わる。
そんな新たな試みを経て、彼女たちはさらにかつてないチャレンジを見せる。それが、今回のアンダーライブで大きな反響を呼んだトリプルドラムパフォーマンスだ。昨年秋に5期生が行った『新参者 Live at THEATER MILANO-Za』の中で、中西が初めてドラムパフォーマンスを披露して話題となったが、その個性を活かす形で彼女を中心に、小川と松尾も加わった3人編成でそれぞれ異なるセッティングのドラムセットで演奏。3人のプレイが重なることで、力強いビートが生み出されると、その流れで「Under's Love」へ突入し、原曲のパーカッシヴさを強調したアレンジで楽曲に強烈な躍動感を与えた。過去のアンダーライブでもギターやピアノを伴奏に楽曲を披露する場面もあったが、この発想はさすがになかったと誰もが驚かされたのではないだろうか。こうした演出を成立させるために、全体のリハーサルに加えてドラムも必死に練習した中西、小川、松尾の努力には拍手を送りたい。
さて、さまざまな新たな試みが詰め込まれた今回の『34thSGアンダーライブ』だが、そうした奇抜さが浮かないためには、軸となるライブパフォーマンスがしっかりしていなければならない。そこに関しては今回もまったく問題なく、前回のアンダーライブを経てより自信をつけたメンバーたちが本領発揮。中でも5期生の大躍進ぶりは目を見張るものがあり、経験値において心配された岡本も『新参者 Live at THEATER MILANO-Za』10公演の成果がしっかり形となって表れ、先輩や同期たちとのステージを楽しんでいる様子が窺えた。そしてなにより、中西を中心に小川や奥田といった5期生たちが早くもそれぞれの個性を確立し始めていることや、伊藤、阪口、佐藤、中村、吉田という3期生からグループを引っ張っていこうとする強い意志が随所から感じられたこと、佐藤や清宮、林、松尾、矢久保の4期生もそれに負けじと実力や存在感を高め、最前線で魅力を発揮している事実が今回のアンダーライブを通じてしっかり確認できたことは、とても大きな収穫だった。こうした前向きさや個々の成長が、2年目を迎えた“新生・乃木坂46”にとって重要なものになることは、間違いないだろう。
座長を務めた中西は、最終日のMCで「私たち14人は選ばれてこのステージに立っています。私は今ここにいることに誇りを持っています」と力強く宣言した。選抜には入れず悔しい思いを抱えているメンバーも少なくないだろうが、彼女たちを求めるファン、アンダーライブを楽しみにしているファンがこんなにもたくさん存在するという事実を忘れることなく、先輩たちが大切にしてきた乃木坂46を未来につないでいってほしい……そんなことを考えながら、「2024年の乃木坂46も面白いことになりそうだ」と期待が高まった3日間だった。
※1:https://realsound.jp/2023/10/post-1459762.html
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