乃木坂46、中西アルノを座長に据えた『34thSG アンダーライブ』 14人が描く新章の続き

乃木坂46『34thSG アンダーライブ』レポ

 乃木坂46にとって2023年は「世代交代」が大きな課題だったことは、明白だろう。春までに1期生、2期生が全員卒業し、同じタイミングに32ndシングル『人は夢を二度見る』で初めて久保史緒里&山下美月による3期生ダブルセンターを打ち出す。同作からは5期生が表題曲やアンダー楽曲の制作に本格的に加わり、同作を携えた『32ndSGアンダーライブ』にも初参加。夏には33rdシングル『おひとりさま天国』のセンターに5期生・井上和を迎え、初の明治神宮野球場4DAYS公演を含む『真夏の全国ツアー2023』を成功させる。その後実施された『33rdSGアンダーライブ』では、アンダーライブとして初の横浜アリーナ3DAYS公演を敢行。過去最大規模となったこのアンダーライブも全公演チケット完売を果たし、年末には4期生の賀喜遥香&遠藤さくらがダブルセンターを務めた34thシングル『Monopoly』をリリースし、『第74回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)への9年連続出場を達成させ、充実の1年を終えた。

 昨年末、筆者が乃木坂46のメンバーにインタビューした際、久保は『日経エンタテインメント!』2024年2月号(日経BP社)にて「2023年はわかりやすい『乗り越えないといけない壁』が目の前にあったから、熱量を持って挑めたんですけど、すべてが順調にいったからこそ2024年はさらに危機感を持ちたいです」、向井葉月と与田祐希はそれぞれ「(2024年は)2023年よりも難しい1年になりそう」「2023年以上にもっといろんなことに挑戦する1年にしたいです」(※1)と語っていたが、幸運に恵まれた2023年を経て再び“2年目”を迎える2024年は、真の意味で真価が問われることになる。

 そんな乃木坂46にとって、2024年最初のライブが34thシングル『Monopoly』のアンダーメンバー14人による『34thSGアンダーライブ』だ。1月25〜27日にぴあアリーナMMで行われた今回のアンダーライブは、3期生から5期生で構成された布陣では三度目のアンダーライブとなるが、昨年春から休業していた林瑠奈は『32ndSGアンダーライブ』以来9カ月ぶり、同じく休業を経て復帰した岡本姫奈はこれが初のアンダーライブ参加であり、そういった点でもファンから注目が寄せられていた。

 先述のとおり、前回の『33rdSGアンダーライブ』はアンダーライブとしては“過去最大規模”を謳いつつ、「今の乃木坂46にもこれだけ個性的で多岐にわたる実力を持ったメンバーが揃っている」と層の厚さをアピールしてみせた。では、それに続く今回のアンダーライブでは何を届ければいいのだろうと、メンバーも運営側もいろいろ考えたはずだ。そんな中で出した答えのひとつが、5期生・中西アルノをセンター(座長)に迎えたアンダーライブを作ることだったと、筆者は受け取っている。彼女は34thシングル収録曲「思い出が止まらなくなる」で、5期生として初めてアンダー楽曲センターに就任。思えば中西は加入まもなくして、29thシングル『Actually...』で5期生から初選抜および初センターを経験している。特にここ1年ほど、「Actually...」という楽曲をライブで披露するたびに彼女が成長していることが伝わっていたし、前回の『33rdSGアンダーライブ』でもフロントメンバーとして大活躍していたことを考えれば、この選択はなるほどと頷けるものがある。

 もちろん、センターを5期生にしただけでは次の一手としては少し弱いかもしれない。となると、ライブの内容をどうするかだ。前回はアンダーメンバー13人全員が主役となるように、「ジコチュープロデュース in アンダーライブ」という企画を打ち出した。それと同じことを繰り返しては意味がない……その結果導き出したのが、くじ引きで決まった3ユニットによるプロデュース企画と、ライブ中盤に用意された“新たな挑戦”だった。本稿では3公演のうち、千秋楽の1月27日公演を軸に振り返っていきたい。

 今回の『34thSGアンダーライブ』は序盤7曲と終盤5曲に新旧のアンダー楽曲を配置し、それ以外の楽曲もグループ内ユニット曲やライブの定番曲が中心。シングル表題曲は中西がセンターを務め、同曲の英詞フレーズを清宮レイが担当した「Actually...」のみ。シングル表題曲に頼らないアンダーライブは過去にも存在したが、新章の続きを描くという意味ではこの選択は正しいものではなかっただろうか。

 冒頭の4曲を歌い終えたあとにはメンバー全員が大きな旗を手にし、凛とした表情でフラッグパフォーマンスをしている。これは次曲「錆びたコンパス」へつなげるための序章として用意されたものだが、フロンティア精神を描いた同曲の世界観ともマッチしていたと思う。パフォーマンスにおいても、初日こそ旗を振る際の身振りの大きさや掲げる高さに個人差があり見栄えが悪かった部分もあったように思えたが、2日目には改善。最終日は息が揃った、生命力に満ち溢れたパフォーマンスにまで仕上げていた。

 ユニットパートにおいては伊藤理々杏、岡本、阪口珠美、清宮、中村麗乃の「優柔不断なプリンセス」、奥田いろは、佐藤璃果、林、矢久保美緒、吉田綾乃クリスティーの「ぴんくちゃん」、小川彩、佐藤楓、中西、松尾美佑の「なんでもやさん」がそれぞれ選んだ楽曲と演出で、日替わり楽曲を披露。初日は「まあいいか?」(なんでもやさん)、「ショパンの嘘つき」(優柔不断なプリンセス)、「心にもないこと」(ぴんくちゃん)を、2日目には「やさしさとは」(ぴんくちゃん)、「心のモノローグ」(なんでもやさん)、「君に贈る花がない」(優柔不断なプリンセス)といった楽曲を、それぞれ趣向を凝らしてパフォーマンスした。そして、最終日は優柔不断なプリンセスが「全部 夢のまま」を、テーブルやティーカップなどを用いたティーパーティー風演出を交えて披露したのだが、これは楽曲の世界観をわかりやすく届けようとするメンバー発案のアイデア。続く「大嫌いなはずだった。」ではぴんくちゃんが、原曲を歌うさゆりんご軍団+真夏さんリスペクト軍団へのリスペクトを込めて、それぞれの衣装を着用して歌う試みも用意された。さらに、「遠回りの愛情」をピックアップしたなんでもやさんは小川&中西がボーカルを、佐藤と松尾が独創的なコンテンポラリーダンスをそれぞれ担当、独自の解釈で楽曲の雰囲気を伝えていった。『33rdSGアンダーライブ』では個人にフィーチャーした演出が印象に残ったが、今回は期を超えたメンバー同士で意見を出し合ってひとつの作品を完成させていく、新たな形が取られたわけだ。

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