J-POPの王道に連なる新たな存在 2024年注目のSUKEROQUE、表情豊かな楽曲に滲む独自の視点
そして特筆すべきは、歌詞。そもそもの制作のきっかけはコロナ禍における不安や葛藤、その時期に耳に届いたラジオDJの言葉だったそうだが、筆者としてはSUKEROQUEの地元である荒川沿いの風景描写に強く惹きつけられた。それを象徴しているのが〈武蔵野のレールを最終の電車が/銀河鉄道に見えたのだ/カメラ向けてやっぱやめた〉というフレーズだ。この一節のなかにはおそらく、都心ではなく、郊外で暮らす人たちが共有しているぼんやりとした疎外感が含まれている。何か大切なものから遠ざけられている不安を抱えながら、それでも日々を過ごし、どこかにあるはずの答えを求めている——この言葉にできない感覚は、たとえばキリンジの「エイリアンズ」がそうであるように、日本のポップスにおけるきわめて重要なテーマだと思う。
昨年12月にリリースされた最新曲「蜘蛛の糸」はタイトなビートときらびやかなピアノ、いなたいギターが絶妙に絡み合うミディアムチューン。ラップを取り入れたボーカル表現、ネットニュースの功罪をテーマにしたリリックを含め、彼の音楽世界がさらに広がっていることを示す楽曲だと思う。
また、ライブ活動も徐々に増加。もともとバンド出身だけあって、気の置けないメンバーと一体となったステージは音源の印象以上にエモーショナルな熱気にあふれている。感情豊かなボーカル、そして、積極的にオーディエンスとコミュニケーションを取るパフォーマンスなどライブアーティストとしても大きな魅力を持っているのは間違いない。
ハイブリッドな音楽性、“郊外で暮らす現代人”をテーマにした歌詞は、世代や好みを超え、多くのリスナーに訴求できるはず。2024年、SUKEROQUEの名前を見聞きする機会は飛躍的に増えるはずだ。
■リリース情報
SUKEROQUE「蜘蛛の糸」
2023年12月13日(水)リリース
配信:https://nex-tone.link/A00129395