リアルサウンド連載「From Editors」第41回:『ポケモンコンシェルジュ』は個性を認め合う優しい物語
「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。
第41回は、特撮とメタルが好きな信太が担当します。
どんな一面でも個性になる ポケモンとの交流で気づかされること
自分の得意なことや個性を活かして、もっと自由に生きられたら……。仕事や生き方に悩み、一度はそう感じたことがある人も少なくないはず。何をやってもうまくいかない時、好きなことで大成している人を見るとつい羨ましくなったり、人生に焦ってしまったりするものです。
筆者もそう思うことは多々ありますが、そんな塞ぎ込んだ気持ちに寄り添いながら、そっと解きほぐしてくれるような映画や音楽に出会えると、「自分らしさを活かして生きる方法なんていくらでもあるんだな」とポジティブに思えます。昨年12月28日よりNetflixで配信されたアニメシリーズ『ポケモンコンシェルジュ』は、まさにそんな作品でした。
長年付き合った恋人に振られ、仕事でも失敗続きだった主人公・ハル(CV:のん)が、都会の喧騒を外れた離島の「ポケモンリゾート」にやって来て、ポケモンたちをおもてなしする新米コンシェルジュとして成長していく物語です。まず、なんといってもポケモンたちが可愛くて癒される! ストップモーションアニメの温かくて肌触りの柔らかな映像が、登場人物やポケモンたちの表情を引き立てます。
第1話、「ポケモンリゾート」にやって来たばかりのハルは、楽しく働くスタッフや生き生きと過ごすポケモンたちを見て、“仕事”という概念に縛られないポケモンコンシェルジュの自由な働き方に感銘を受けます。しかし、必ずしも全てのポケモンがはじめから楽しく生きられているわけではないことも、本作のポイントです。
例えば、第2話のコダックとの交流。念力で周囲に迷惑をかけてしまいがちなため、他のポケモンと距離を取ってひっそり生きていたコダックが、ハルとの出会いを通して、それを欠点ではなく“個性”として認めていけるようになります。失敗ばかりで順風満帆に生きてこられたわけではないからこそ、引っ込み思案なポケモンに楽しく生きる活力を与えられるーー早くも、ハルのいいところが発揮された回となりました。
第4話には、内気で人見知りなピカチュウが登場。トレーナーの少年からは「もっとピカチュウらしく元気でいてほしい」と思われているけれど、実際は高いところで遊んだり、大きな声を出すのが苦手。そんなピカチュウがハルやコダックと接することで、少しずつ“本当の自分のまま”で心を開いていきます。この回のテーマはコミュニケーション。トレーナーとポケモンのようにいつも一緒にいる関係性だと、つい相手の気持ちをわかったつもりになりがちですが、だからこそ相手のやりたいことを本当にリスペクトできているのか、今一度向き合うことも大切。ハッとさせられるような展開でした。