YOASOBI、岡村靖幸、GLIM SPANKY……名曲を再構築する独自性 『ユーミン乾杯!!』を聴いて

 一番衝撃的だったのは、YOASOBIがかなり大胆に翻案した「中央フリーウェイ」だ。良いとか悪いではなく、衝撃というのがやはりふさわしい。いわゆるシティポップの名曲に数えられる洒脱な原曲を、やりすぎなくらいキッチュに振り切ったエレポップにリアレンジ。なにしろイントロから〈中央中央フリーウェイ〉と知らないリフレインから始まるから面食らってしまう。イヤーワーム的なコーラスをダメ押しで追加し、ローズピアノの音色と躍動するベースラインが主役となってグルーヴを牽引する原曲を、ぴかぴかのシンセリフとシンプルで機械的なシンセベースで塗り替える。この「過剰さ」こそYOASOBIらしいというほかない。

 さらに、Ayaseが補作した詞が、楽曲全体の〈二人〉のドラマをより親密で没入的にしているのも「らしさ」のひとつだろう。即物的な風景の描写をほんの少しの直喩(〈この道は まるで滑走路 夜空に続く〉)でリリカルに昇華させるレトリックの妙が光る原曲の魅力を、数行の補作で「あなたと私のロマンティックなドラマ」に落とし込むあたりに、なによりもストーリーテリングを得意とするこのユニットの本領が発揮されている。

YOASOBI cheers 松任谷由実「中央フリーウェイ」

 アルバム全体のバランスはどこか歪というか、いささか散漫な印象は拭えないのだが、アーティストごとになにかと興味深い試みが詰まった一作ではある。『ユーミン万歳!』での“AI荒井由実”との共演(!)といい、半世紀に及ぶキャリアをもって攻めた企画に貪欲に挑む松任谷由実のバイタリティに気圧されるようだ。それに堂々と応えた各アーティストの仕事もあわせて、エネルギッシュな作品だった。

※1:https://sp.universal-music.co.jp/yuming/kanpai/

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