ドラマ『東京貧困女子。』で描く無慈悲な現実と一縷の希望 THE YELLOW MONKEY主題歌が物語に与える深み
11月17日から放送/配信がスタートしたドラマ『東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-』(WOWOW)は、コロナ禍以降急速に深刻化する日本女性の貧困をテーマに、現代の孤独と社会の不条理や差別をフィクションとして描いたドラマだ。東洋経済オンラインで1億5000万PVを突破する人気連載を書籍化した『東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか』(東洋経済新報社)にオリジナルの縦軸のストーリーを加えて連続ドラマ化したもので、主演を務めるのは現在NHK連続テレビ小説『ブギウギ』でヒロインを務める趣里が主役・雁矢摩子役を体当たりで熱演。摩子とコンビを組むフリーライター・﨑田祐二役を三浦貴大、摩子の実母・宮下菜穂子役を高橋ひとみが演じるほか、貧困当事者役として霧島れいか、宮澤エマ、田辺桃子、東風万智子、安斉星来らが名を連ねる。
物語は離婚を機に経済誌の契約編集者に復職したシングルマザーの摩子が、風俗ライターの祐二とともに“女性の貧困”問題をテーマにした連載取材を開始するところからスタート。風俗やパパ活で稼ぎながら国立大学の医学部に通う優花(田辺)や、息子の大学進学のために昼職と風俗のダブルワークをするシングルマザー葵(東風)などへの取材を重ねる中で、“貧困”とは無縁だと思い込んでいた摩子自身も実は貧困層である事実と直面し、記者として、またひとりの女性であり親として意識の変化を迎える。また、当初こそ取材方針で対立していた祐二との距離が縮まる中で、祐二が風俗ライターを続ける理由や彼の過去にも近づいていくことになる。
このドラマに登場する貧困当事者の女性は、大学や一般家庭における貧困のみならず肉親の介護、親からの性的虐待、パワハラ/モラハラ被害、再雇用の実情、戸籍と就学などさまざまな問題を抱えているが、これらは現代社会において決して他人事ではない身近な問題ばかり。中でも、コロナ禍以降の貧困状況から導かれるこれらの諸問題は、誰もが背中合わせと言えるのではないだろうか。さらに、ドラマの中でも優花へのインタビューが「女性の貧困は自分自身の問題」などとSNSで炎上する場面も登場するが、こうした批判/差別も日常的に目にするものであり、他人事として片付けられないものがある。