稲垣吾郎、40代最後の一年で迎えた集大成 『幽☆遊☆白書』から始まる新たな表現への期待

 一方で、それはあくまでもキャラクターとしての一面であって、“稲垣吾郎”のパブリックイメージが覆るものではないと思わせてくれるバランスもまた絶妙なのだ。現在上映中の映画『正欲』のような観る者の価値観をかき乱していく挑戦的な作品にも、その稲垣特有のバランス感覚が活きてくる。日本中から愛されるアイドルとして生きてきた彼の圧倒的な多数派な顔と、そのなかでもこだわりの強さや癖の強さを度々イジられてきた“稲垣吾郎”という少数派の顔と。どちらから彼の顔を見るかは、私たちに委ねられているところが、彼が「ミステリアス」と言われる所以ではないだろうか。

 
 
 
 
 
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 そんな稲垣のミステリアスさを最大限に活かす新たな作品も控えている。それが12月14日より配信される予定の実写版『幽☆遊☆白書』(Netflix)だ。稲垣が演じる左京は、原作漫画ではストレートのロングヘアのキャラクター。だが、稲垣の髪質に合わせてウェーブへアのビジュアルになっているのも、私たちがすでに持ち合わせている“稲垣吾郎”というイメージをベースに、さらにキャラクターの魅力を上乗せしていく狙いがあってのことのように感じた。

『幽☆遊☆白書』キャラクター予告:左京編 - Netflix

 キャラクター予告映像を見ると「満たされないんですよ」という印象的なセリフがある。この言葉を、稲垣がこの数十年間で育て上げてきた“稲垣吾郎”をもって、まだまだ見せられるものがあるのだという、表現者としての渇望の声だと思って聞くとゾクゾクしてくる。果たして、“稲垣吾郎”はどんな50代を歩み、長年かけて築いた唯一無二の存在感をどう活かしていくのか。先の読めない稲垣のこれからが、楽しみでならない。

稲垣吾郎が孤高の表現者としてあり続けるのはなぜか 映画『正欲』で深めた“普通”に対するアプローチ

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