秋元康総合プロデュース WHITE SCORPION、デビュー曲で何を問う? 「眼差しSniper」クロスレビュー

WHITE SCORPION、デビュー曲クロスレビュー

 秋元康が手がける新規アイドルグループ創造プロジェクト『IDOL3.0 PROJECT オーディション』の最終合格者11名で結成されたWHITE SCORPIONが、12月7日リリースの「眼差しSniper」でデビューを迎えた。WHITE SCORPIONの始まりを告げるこの曲は、彼女たちにとって果たしてどのような意義を持ち、どのような道標となったのか。新時代に彼女たちは「眼差しSniper」という楽曲で何を刻み、どこへ向かっていくのか――。音楽ライターの荻原梓氏、もりひでゆき氏(※五十音順)がそれぞれの視点から楽曲を紐解いていく。デビュー直前に行ったインタビューとあわせて、その未知なる可能性の大きさに触れてほしい。(編集部)

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秋元康総合プロデュースグループ・WHITE SCORPION、ついにデビュー! 無限の可能性と世界への挑戦を語る

秋元康が手がける新規アイドルグループ創造プロジェクト『IDOL3.0 PROJECT オーディション』の最終合格者11名で結成さ…

“危険”を承知で自分の直感に従って生きるということ(荻原梓)

 秋元康は、AKB48や乃木坂46といったアイドルグループのプロデュースで主に2010年代に大成功を収めたが、近年はアイドルだけでなく、バンドから声優ユニット、劇団に至るまで多種多様なジャンルのグループを手掛けてきた。なかには解散したグループもいる。それでもまた、新しいグループをプロデュースするという。そして、オーディションには約1万人という応募者がいたという。まるで〈危険とわかっても/惹き寄せられる〉この歌の主人公のように……。

 危険を承知で自分の直感に従って生きる。それがこの「眼差しSniper」のテーマとも言えるだろう。危ないものには魅力を感じてしまうものだ。ダメだとわかっていても止められない。それはある種の人間の性で、誰しもが抱いてしまう本能である。だが、そうした向こう見ずな行動力こそが、新しいものを生み出す原動力となるのだ。

 このWHITE SCORPIONは、今までにないグループだという印象はたしかにある。全体の宣材写真はクールで、バキバキのダンスを踊りそうだし、パフォーマンスと歌唱力で大観衆を虜にする未来が想像できる。白を基調としたグループのイメージはスタイリッシュで、アイドルというよりも、ダンス&ボーカルグループといった表現がよく似合うかもしれない。グループ名にはメタルバンドのようなセンスも感じられるし、ロゴはハードコア系のパンクバンドのようなデザインで、どことなく尖った攻撃性も感じる。メンバーが楽器を担当したりするのだろうか。強く美しく、そしてかっこよく成長し、女性にも憧れられるような存在になっていきそうな予感がある。

 オーディションを経て選び抜かれた11名のメンバーたちはやはりレベルが高いが、どこかにあどけなさも残る。今後の成長を楽しむことができるのびしろを持った顔ぶれだ。そういう意味では、あくまでこれまで秋元康が手掛けてきたアイドルグループと地続きでありつつも、その範囲のなかで新しいものを生み出そうという姿勢を感じる。

 サウンド面についても、幅広い層をターゲットにした射程範囲の広いダンスナンバーでありながら、歌い出しの〈視線の銃弾に撃たれて〉や〈後悔の赤い血を流して〉といったスリリングなフレーズには、王道ではなく、独自のスタイルを開拓したいという意志を感じる。それは制作陣を見ても窺えるだろう。

 コレオグラファーは世界的ダンサーのTAKAHIRO、MV監督は池田一真。アイドルのクリエイティブをこれまで何度も新たなフェーズへと推し進めてきたこのふたりのタッグは、大きな注目を集めそうだ。

 一方で、このグループが誕生するきっかけとなった『IDOL3.0 PROJECT』が掲げていた“リアル”と“バーチャル”な場の両軸で活動していくという点は、まだピンと来ないところも正直ある。SNSをフル活用するだけであれば他のグループと大差はなくなってしまうが、今後どのようにしてその両軸が展開されていくのか、期待したい。

WHITE SCORPION 『眼差しSniper』

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