いきものがかり、2人で駆け抜けた2023年 アルバム『〇』で浮かびあがった“肯定”のイメージ
「100点満点じゃなくてもいい、自分に“〇”をつけようよ」というイメージ
——アルバム後半ではやはり、「HEROINE」「やさしく、さよなら」が印象的でした。どちらも大人の女性の切ない感情を描いていて、今のいきものがかりにすごく合っているなと。
吉岡:うれしいです。「やさしく、さよなら」はアルバム制作の最初の段階で仮歌を録ったんですけど、私達より年下のスタッフも「この曲、好きです」という人が多くて。男性も女性もだよね?
水野:そうだね。
吉岡:「HEROINE」は私としてもすごくリアルを感じていて。曲に出てくる人物像が自分と重なるわけではないんですけど、「こういう感情、みんな抱いてるんじゃないかな」と。毎日ちゃんと会社に行って、仕事にも慣れて。でも、内側ではいろんな思いがあると思うんですよ。悲しいことや嫌なことがあっても、それを外に出さず、日々を送っていくっていう……女性のスタッフとも話してたんですよ。「水野さん、どの脳でこれを書いてるんだろうね?」って。
水野:(笑)。
吉岡:ちょっとうれしそう(笑)。「やさしく、さよなら」もすごく絵が浮かんできました。失恋した女性が主人公なんですけど、〈電車が夜に向かって〉という歌詞がすごくいいですよね。私のなかでのイメージは小田急線になっちゃうんだけど、電車のドアにもたれて、窓ガラスに自分の顔が映っていて。恋は終わっても、毎日は進んでいく。しっかり立たなくちゃいけないんだけど、でも、「確かに傷ついてるよな、私」っていう……私、しゃべりすぎてる?
水野:いえいえ(笑)。
——曲の主人公の年齢を少しずつ上げていく、という意識もあるんですか?
水野:この2曲については、年齢というより、自立の度合いみたいなことを考えていた気がします。たとえば失恋したとしても、みなさん、ちゃんとお仕事はするじゃないですか。20代前半とか、社会人なりたての頃だったら「彼氏にフラれて、仕事ができない」ということもあるだろうけど、もっと大人になったらそうはいかないだろうし……すみません、僕の偏見もあるかもしれないですけど。
吉岡:人それぞれだからね(笑)。
水野:「やさしく、さよなら」は、夜の雰囲気を出したかったんですよ。
——夜のいきものがかり?
吉岡:その言い方、やめてもらっていいですか(笑)?
水野:(笑)。大人になると、夜の時間の使い方も広がってくるじゃないですか。お酒を飲むにしても、みんなで騒ぐんじゃなくて、バーやカフェ的な感じでゆっくり楽しんだり。そういう部分を表現できたらいいなと思って。あとはやっぱり、林さんのピアノと吉岡の歌声が結びついたらどうなるか? というところですよね。コード進行もジャズ畑のピアニストが自由に遊べるようにしていて。素晴らしい演奏をしていただきました。
——アルバムのタイトル曲「〇」も、この作品の軸になっている曲だと思います。
吉岡:12曲のなかで最後にできた曲なんですよ、実は。
水野:まずアルバムのタイトルのことから言うと、ある程度、曲が集まってきた段階で、スタッフに「“肯定”というイメージがある」ということを伝えたんです。それを踏まえて「このイメージをやわらかく伝えられるタイトルって、どういうものかな?」と話をして。そのなかで“サークル”という案が出たんですよ。調和だったり、みんなで1つの輪を作る寛容な感じもあって。そこから頭のなかに“円”が浮かんできて、ホワイトボードに“〇”を書いて、「これで“まる”ってどう?」と。表記として可能かどうか調べてもらって、いけそうだったので『〇』をタイトルにしました。
——その後、「〇」という曲を書いた?
水野:はい。スケジュール的にはけっこう大変だったんですけど、どうしても書きたいとお願いして。結果、芯を食った曲になったし、メッセージ的にもアルバムの軸になるような曲になったのかなと。
吉岡:アルバムの集大成的な気持ちで書いてたの?
水野:いや、そんなこともないんだよ。それよりも「もう少しバラエティを出したい」と思って書いてたから。
吉岡:そうなんだ。「〇」ができるまでは、「喝采」をアルバムの最後にしようかって話してたんです。明るさと深さがあって、「これで終われるとすごくいいよね」って言っていたんだけど、最後の最後に「〇」ができて。すごく重みがある曲だし、「こっちだね」って。あと、「〇」には“SHA LA LA LA”というコーラスが入ってるんですよ。1曲目の「誰か」にも同じようなコーラスがあるので、そこでつながるのもいいなと。
——なるほど。“肯定”というワードは、どういうところから出てきたんですか?
水野:「うれしくて」「ときめき」を書いているときから、そのイメージがありましたね。どちらも「プリキュア」の楽曲なんですけど、「ときめき」の歌入れが、ちょうど吉岡の出産前だったんです。彼女の人生のフェーズが変わるときに、それをポジティブに捉えてほしいなという気持ちを勝手に持っていて。それが歌詞にも出ているし、他の曲にも自己肯定みたいなエッセンスが自然と入ってきたんですよね。
吉岡:「ときめき」にそういうテーマがあったことは、最初は聞かされていなくて。でも、〈世界はいまきらめくよ/わたしがそう決めたから〉という歌詞から始まるし、私にとっても「自分のまま進んでいこう」と思わせてくれる曲になりましたね。弱さも認めて、自分を肯定して前に進んでいけるというか。
水野:うん。
吉岡:アルバム全体を見渡しても、ちゃんと救いがある曲ばかりだなと思って。タイトルの『〇』もそう。「100点満点じゃなくてもいい、自分に“〇”をつけようよ」みたいなイメージもありました。
——来年2月から始まる全国ホールツアー『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2024 〜あなたと!わたしと!みんなで!歌いまSHOW!!〜』ではもちろん、アルバム『〇』の曲が中心になるんですよね?
吉岡:そうしたいですね。新曲を何曲も届けるツアーって、本当に久しぶりなんですよ。
水野:ツアー自体が久しぶりだからね。2020年に予定していた20周年のツアーがコロナで中止になって。2021年のツアーは山下(穂尊)の脱退前最後のツアーだったから、ゴールデンベスト的な内容だったんですよ。ホールツアーとしては何と12年ぶりっていう。
吉岡:そんなつもりはなかったんだけどね。
水野:場所によっては14年ぶりくらいに行くところもあって。14年って、生まれた子供が中学生になる年月ですからね。
吉岡:最近、そういう話になることが多いよね。10代の子から「親の車でよく聴いてました」とか。家族で来てくれる人も増えているのもうれしいです。来年のツアーは……やっぱり新曲かな。やれそうですか?
水野:やれるんだと思います(笑)。
吉岡:この前ミーティングして、セットリスト案を決めたんですよ。まずはそれを確認して。
水野:お願いします(笑)。
吉岡:もちろんニューアルバムの新曲も聴いてほしいし、「いきものがかりのライブに来たら、あの曲を聴きたいよね」という曲も入れたくて。
水野:新曲をやって、お客さんが聴きたい曲をやって、全体の時間も考えて。みんな、好きなことを言いますからね(笑)。
吉岡:いつも葛藤だよね、ライブは。
——ツアー、楽しみです。オリジナルアルバムが出て、全国ツアーがあって。2人体制のいきものがかりの本格的な活動が始まりますね。
水野:やっと「仕事してる」という感じになってますね。最初にも言いましたけど、今のいきものがかりは過渡期だと思っていて。2人体制になったことでライブもかなり変わってきているし、その新鮮さをぜひ感じてほしいんですよね。「今のタイミングでいきものがかりを見ておいてほしい」という気持ちはすごくあるし、懐かしさと新しさを感じてもらえたらなと。
吉岡:そうだね。今年はちゃんとエンジンをかけて走ってきたし、その勢いを感じてもらいたいなって。アルバム『〇』の曲も今の2人だからできた曲ばかりだと思っているんですよ。いきものがかりらしさも新しさもちゃんとあるので、それを生のライブで確かめてほしいです。
■リリース情報
いきものがかり 12月13日発売
オリジナルアルバム『〇』(読み:まる)
○初回生産限定盤[CD+Blu-ray]
ESCL-5883~4 \4,980 +税
・デジパック仕様
・いきものカード062.063封入
・2024年ツアー追加公演チケット最速先行応募チラシ封入
初回盤のご予約はこちら:https://erj.lnk.to/maru_CD1
○通常盤 [CD]
ESCL-5885 \3,000 +税
・いきものカード062封入
・2024年ツアー追加公演チケット最速先行応募チラシ封入
通常盤のご予約はこちら:https://erj.lnk.to/maru_CD2
<CD収録内容>※2形態共通
M1 誰か(『新聞で紡ぐ希望のうた』テーマソング)
M2 うれしくて(『映画プリキュアオールスターズF』主題歌)
M3 声 (au「#応援は想いを届けるスポーツだ」プロジェクト オリジナル応援歌(ANYTEAM))
M4 ときめき(プリキュア20周年記念ソング・TVアニメ『キボウノチカラ~オトナプリキュア’23~』オープニングテーマ)
M5 きっと愛になる(フジテレビ系バラエティ『坂上どうぶつ王国』テーマソング)
M6 STAR(映画『銀河鉄道の父』主題歌)
M7 好きをあつめたら (「ROPÉ PICNIC(ロペピクニック)」イメージソング)
M8 HEROINE
M9 やさしく、さよなら
M10 喝采
M11 YUKIMANIA (イオントップバリュ「2023クリスマスパーティ」CMソング)
M12 ○
<Blu-ray収録内容>※初回盤のみ
1. ときめき Music Video
2. ときめき Music Video -Behind The Scenes
3. うれしくて Music Video
4. STAR Music Video
5. 2人体制で“STAR” トしまSHOW!! (from Amazon Music Live: いきものがかり)
笑顔
STAR
気まぐれロマンティック
帰りたくなったよ
SAKURA
6. ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2023
気まぐれロマンティック
ありがとう
コイスルオトメ
YELL
ブルーバード
じょいふる
帰りたくなったよ
■ツアー情報
『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2024 〜あなたと!わたしと!みんなで!歌いまSHOW!!〜』
2024年02月04日(日) [神奈川]海老名市文化会館
2024年02月10日(土) [香 川]レクザムホール(香川県県民ホール)
2024年02月12日(月・祝)[広 島]広島文化学園HBGホール
2024年02月18日(日) [栃 木]栃木県総合文化センター・メインホール
2024年02月23日(金・祝)[青 森]リンクステーションホール青森(青森市文化会館)
2024年02月25日(日) [新 潟]新潟県民会館
2024年03月03日(日) [北海道]札幌文化芸術劇場 hitaru
2024年03月09日(土) [愛 媛]松山市民会館・大ホール
2024年03月10日(日) [高 知]高知県立県民文化ホール・オレンジホール
2024年03月20日(水・祝)[福 岡]福岡サンパレスホテル&ホール
2024年03月24日(日) [宮 城]仙台サンプラザホール
2024年03月29日(金) [熊 本]市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
2024年03月31日(日) [島 根]島根県民会館
2024年04月06日(土) [石 川]本多の森北電ホール(旧本多の森ホール)
2024年04月13日(土) [神奈川]神奈川県民ホール
2024年04月19日(金) [静 岡]静岡市民文化会館・大ホール
2024年04月20日(土) [愛 知]名古屋国際会議場・センチュリーホール
2024年04月26日(金) [大 阪]大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)
2024年04月28日(日) [奈 良]なら100年会館
2024年05月03日(金・祝)[東 京]LINE CUBE SHIBUYA
-追加公演
『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 〜2024 あなたと!わたしと!みんなで!歌いまSHOW!!〜横浜にじゅうまる公演』
2024年05月25日(土)開場17:00 / 開演18:00[神奈川]ぴあアリーナMM
2024年05月26日(日)開場16:00 / 開演17:00[神奈川]ぴあアリーナMM
■関連リンク
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