いきものがかり、3人で叶えてきた幾多もの夢 山下穂尊脱退前のラストライブで届けた真っ直ぐな思い
いきものがかりの全国ツアー『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! THE LIVE 2021!!!』のファイナル公演が6月11日に神奈川・横浜アリーナにて開催された。
既報の通り、今夏でメンバーの山下穂尊(Gt)がグループを離れることを発表しているいきものがかり。この全国ツアーファイナル公演が3人での最後のライブとなった。当日はインターネット生配信も実施。3人での最後のライブを全国のファンが視聴した。
開演時間になると会場が暗転し、VTRが映し出される。3月に開催した無観客ライブや5月の幕張公演中止、そして山下の脱退決定をスタッフに伝える姿を捉え、3人へのインタビューを交えたオープニングムービーは、年明け以来いきものがかりが直面し続けてきた大きな壁を鮮明に映し出す。VTRが終わると、そんな困難を越えて迎えたツアーファイナルのステージに3人が現れる。3人としては最後となるライブだが、そんなムードは感じさせない明るい挨拶と会場に駆け付けた観客への感謝、そして改めて山下が脱退する旨をファンへと伝える。「心を込めて歌いたいと思います」という吉岡聖恵(Vo)の言葉をきっかけに、いよいよライブが始まる。
1曲目は「からくり」。吉岡の凛とした歌声、そして山下、水野良樹(Gt)によるギターストロークがいきものがかりらしい柔らかな空気を醸し出す。吉岡のアカペラから始まった「茜色の約束」で3人の息の合った演奏を見せると、「SING!」では〈もう悲しみに負けないで〉という詞が一層この時代に胸を打つ。
ライブ恒例の「こんにつあー!」という挨拶も、観客の前では久々のメンバー。コロナ禍の中で観客の声が出せないライブだが、そんな中でも身体を使った新しいコールアンドレスポンスで観客と一体となる。3人としての最後のライブとは思えないほどカラッとした、心地よいテンポで話す3人からは学生時代からの付き合いで培ってきた阿吽の呼吸を垣間見る。
「こんな時代の中でも心を自由に」という気持ちを込めて演奏された「アイデンティティ」では吉岡の、そして聴く者の心を解放するような伸びやかなロングトーンが会場いっぱいに響き渡る。続いて演奏された「きらきらにひかる」ではシリアスなサウンドで観客をグッと惹きつける。これからの季節にピッタリな「夏・コイ」はいきものがかりの歴史の中でも数少ない、吉岡だけでなく水野や山下もボーカルを執る楽曲。3人で歌い繋ぐ最後の瞬間を噛み締めるように歌う3人の笑顔が印象的だ。
MCでは学生時代やインディーズ時代の思い出を語りつつ、結成当時に水野が書いていた「活動日誌」が山下に手渡されるシーンも。デビュー前にサザンオールスターズのライブを横浜アリーナで見たこと、自分たちもその会場でライブをすることを夢に描いていた当時を振り返りながら、その会場でライブを開催している喜びを改めて噛み締める。
思い出を振り返るMCから一転して、ホーンセクションが鳴り響くゴージャスなサウンドと和のモチーフが融合した「ええじゃないか」で会場、そして配信を見ている観客が一体となって盛り上がると、ファンを思い浮かべて3人で共作した「太陽」では心地よい陽光のようなムードが横浜アリーナいっぱいに満ち満ちた。〈サヨナラは悲しい言葉じゃない〉というフレーズがいきものがかりから卒業する山下への、文字通り「エール」となった「YELL」。そしてメンバーの感情が剥き出しになったような鬼気迫るバンドメンバーの演奏を届けた「コイスルオトメ」と、いきものがかりの持つ様々な音楽性がこれでもかとばかりに繰り出される。
ライブもいよいよ終盤戦。本来であればここから会場がグッと熱を帯びていく「盛りあがりゾーン」だが、コロナ禍の中で会場の観客には様々な制限がある。そんな中でもメンバー自ら観客に盛りあがり方を指南した「BAKU」でギアをグッと上げると、疾走感が心地よい「ブルーバード」では総立ちの観客が力強い手拍子でメンバーの演奏に応えてみせる。ポップチューン「気まぐれロマンティック」では〈My Sweet Sweet 横浜〉とこの日この場所ならではの歌詞で観客の心を掴むと、必殺のキラーチューン「じょいふる」でライブ会場、そして配信を見ているファンの盛り上がりは最高潮に達した。