モーニング娘。'23 譜久村聖卒業に寄せて 楽曲と共に振り返る、グループを支えた歌声
モーニング娘。'23の譜久村聖が、11月29日の横浜アリーナ公演『モーニング娘。'23 コンサートツアー秋「Neverending Shine Show ~聖域~」譜久村聖 卒業スペシャル』をもって、グループおよびハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)を卒業する。
モーニング娘。の9代目リーダーであり、ハロプロ全体のリーダーでもある譜久村。グループの在籍日数は4714日(12年10カ月27日)で、これは25年の歴史があるモーニング娘。において同期の生田衣梨奈とともに歴代最長。リーダー就任期間も最長である。
譜久村の卒業は、モーニング娘。はもちろん、ハロプロの歴史にとっても大きな句読点となる。本稿ではこれまで譜久村が参加してきたハロプロ楽曲を振り返ることで、彼女の足跡に思いを馳せたい。
2010年代のモーニング娘。と常に共に
2008年6月、ハロプロエッグ(現ハロプロ研修生)へ加入したことで、譜久村のアイドル人生がスタートする。そして翌2009年、しゅごキャラエッグ!の第2期メンバーに選ばれる。TVアニメ『しゅごキャラ!』(テレビ東京系)シリーズの主題歌を歌うために結成されたこのユニットの楽曲「わたしのたまご」(ガーディアンズ4「PARTY TIME」との両A面シングルという形で2009年11月18日にリリース)が、譜久村が初めて参加したハロプロ楽曲である。
2011年1月2日、中野サンプラザで行われた毎年恒例のハロプロメンバーが全員集合するコンサート(通称:ハロコン)にて、モーニング娘。の第9期メンバーの加入が発表。そこで発表された4人のうちの1人として譜久村が加入、ここから彼女のモーニング娘。人生がスタートした。発表を行ったつんく♂の発言「譜久村、降りといで」は、ハロプロ史に残る名場面だ。
譜久村が初めて参加したモーニング娘。楽曲は、同年4月6日リリースの45thシングル曲「まじですかスカ!」。譜久村含む9期4人にとってのデビュー曲であり、前年に亀井絵里・ジュンジュン・リンリンが卒業していわゆる“プラチナ期”を終えたモーニング娘。が新たなフェーズに移行したことを象徴する節目のシングルでもある。
以降、「One・Two・Three」(2012年)、「泡沫サタデーナイト!」(2016年)、「ジェラシー ジェラシー」(2017年)、「KOKORO&KARADA」(2020年)など、モーニング娘。の各年の代表曲には常に譜久村の姿があった。2010年代のモーニング娘。は譜久村聖と共にあったといえるだろう。
振り返ると様々な楽曲に、譜久村の印象的な姿を見つけることができる。「Help me!!」(2013年)冒頭の〈私をこのまま一人ぼっちにしておくわけ?〉から始まるセリフパート、「わがまま 気のまま 愛のジョーク」(2013年)の2番最後での〈愛されたい!〉という歌い上げ。「Oh my wish!」(2015年)では歌唱ではなくダンス専念メンバーに選抜されて楽曲を表現。「セクシーキャットの演説」(2016年)では、猫の衣装に身を包んだセンターポジション3人のうちの1人に選抜されて可愛らしくパフォーマンスしていた姿も印象的だ。
前述「One・Two・Three」の、落ちサビの〈One ちょびっと/Two ぱりっと/Three もちょっと〉という箇所は、オリジナルCD音源では田中れいなが担当していたが、彼女が2013年に卒業してからは譜久村がここのパートを引き継いでライブで歌っている。むしろ譜久村担当バージョンの方がライブで披露されている時期は長いわけで、近年ファンになった人にとってはこちらの印象の方が強いかもしれない。譜久村は他の曲でもこういったケースが多く、これもキャリアの長さによる賜物だろう。
なお、今年8月にリリースされたベストアルバム『モーニング娘。ベストセレクション ~The 25周年~』では、現役メンバーによる再レコーディング曲を多数収録しており、「One・Two・Three (23 Ver.)」など、現在の歌割りで聴くことができる。
「大好き100万点」「もしも…」などシングル曲以外も
モーニング娘。のシングルカップリング曲やアルバム曲ではどうだろうか。アルバム『12,スマート』(2011年)収録の「好きだな君が」は、道重さゆみとのデュエット曲で、これが譜久村にとって初のメンバー選抜ユニット曲でもある。この道重とのテクノポップ曲調によるデュエット路線が好評だったのか、続編的な「哀愁ロマンティック」(2013年)があるし、道重・譜久村・飯窪春菜が歌った「恋人には絶対に知られたくない真実」(2014年)も同系統と考えられるだろう。
『ワクテカ Take a chance』(2012年)のカップリング曲「大好き100万点」は石田亜佑美とのデュエット曲で、その明るくポップな曲調は人気が高い。今年の春ツアー『Hello! Project 2023 Spring CITY CIRCUIT モーニング娘。'23 25th ANNIVERSARY CONCERT TOUR 〜glad quarter-century〜』のセットリストに入り、久々に歌われて観客の歓声で迎えられたのも記憶に新しい。
現時点でのモーニング娘。最新オリジナルアルバム『16th~That's J-POP~』(2021年)には譜久村・牧野真莉愛・羽賀朱音・北川莉央による「二人はアベコベ」が収録されており、ユニット曲としてはこれが最新となる。
モーニング娘。以外では、2011年発表の楽曲「もしも…」も印象深い。この楽曲はハロプロメンバーの全員集合シングル『ブスにならない哲学』のカップリング曲で、譜久村のほか嗣永桃子(Berryz工房)、中島早貴(℃-ute)、真野恵里菜、和田彩花(スマイレージ)という各グループからの選抜メンバーによって歌われた。前述の「大好き100万点」にも近い、アイドル王道的なポップチューンだ。
また、演劇関連でもいくつか譜久村参加楽曲がある。2011年上演のミュージカル『リボーン~命のオーディション~』では、出演すると同時にテーマソング歌唱ユニット、リボーンイレブンの一員としても活動。2014年上演の『演劇女子部 ミュージカル「LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」』では竜胆役を演じ、紫蘭役の福田花音(スマイレージ)と一緒に「繭期のティーチング」を歌った。