モーニング娘。'23 譜久村聖から北川莉央へ受け継がれるもの 25年間変わらない“魂”
先日、結成25周年を迎えたモーニング娘。から、その歴史を語る上で欠かせない存在である譜久村聖が11月29日の横浜アリーナ公演をもって卒業する。史上最年少リーダー、そしてリーダーとして最長在籍記録を持ち、モーニング娘。と共にあった譜久村のこれまでを、グループのこれからを担う北川莉央と共に振り返った。25年の歴史の中で受け継がれるものとは何なのか、14年にわたる在籍のなかで譜久村はグループに何を託すのか、そして、北川が見据えるグループの未来について、じっくり話を聞いた。(編集部)
モーニング娘。20周年イヤーを経て得たリーダーとしての自信
ーーまずは譜久村さん、ご卒業おめでとうございます。
譜久村聖(以下、譜久村):ありがとうございます。
ーー卒業ということで、譜久村さんのこれまでを振り返りたいと思います。そもそも、アイドルを目指したきっかけは何だったのでしょうか。
譜久村:きっかけは友達のお母さんに「ハロプロ受ければいいのに」と言われたことです。当時は「ハロー!プロジェクト・キッズ オーディション」(2002年)という°C-uteさんやBerryz工房さんが結成されるきっかけになったオーディションを開催していたのですが、年齢制限的にまだ受けられなかったんです。その時にはもうモーニング娘。もミニモニ。も好きだったのにオーディションを受けられないのがすごく悔しくて。「キッズ オーディション」に合格した子がハロプロエッグとして活躍している姿を見て、絶対私も入りたいと思いました。「アイドルになりたい」というより「ハロプロに入りたい」という感覚でしたね。
ーーモーニング娘。に加入した時、まだ年齢は14歳でした。当時からここまで長く活動することをイメージしてましたか?
譜久村:全然してなかったです。加入した時は卒業について考えることはなかったんですけど、それでも自分の人生の半分以上をモーニング娘。として過ごすとは思わなかったです。
ーーそこから3年後にはモーニング娘。のリーダーに就任します。前リーダーの道重さゆみさんの存在はどのようなものでしたか?
譜久村:私にとって道重さんは完璧なリーダーでした。テレビ番組に出演した時もコンサートのMCも全てにおいて完璧な先輩だったので、リーダーに就任した時はプレッシャーもありましたし、当時のモーニング娘。は全員が同年代だったので、メンバーをまとめることができるのかずっと不安でした。
ーーその不安を跳ね除けることができたのはいつ頃だったのでしょうか。
譜久村:モーニング娘。20周年を経験した頃です。それまでは本当に自信がなくて、何をしても反省することが多くて。20周年のタイミングでたくさんの人に「おめでとう」と言っていただいたんですけど、自分たちのグループなのに「ありがとう」と言ってもいいのかわからないと思っていたんですよね。それでも「ありがとうって言っていいんだよ」とたくさんの先輩方に言っていただいて、そこから私もグループを作っているんだという風に認識が少しずつ変わっていきました。
ーー2019年には15期が加入しました。そのなかで北川莉央さん、岡村ほまれさんは5年ぶりの一般加入のメンバーとなりました。久しぶりに研修生を経験していないメンバーでしたが、15期を迎え入れる時はどのような心境だったのでしょうか。
譜久村:15期を迎える時は本当にみんな待ち遠しくて。「早く新メンバーに入ってほしい」という気持ちが強かったです。今振り返ると新メンバーが待ち遠しすぎていざ加入したらみんなが一気に色々なことを教えちゃって、まだ経験が浅いのに一度に教えすぎて混乱したんじゃないかなと思います。でもそれくらい15期の加入はメンバー全員が楽しみに待っていたと思います。
ーー北川さんは当時を振り返るとどうでしたか?
北川莉央(以下、北川):当時は目の前のことに必死だったのですが、加入して1年くらい経って振り返ってみるとすごく受け入れてくださったなとありがたみを感じました。改めて、私たち一人ひとりに向き合って色々なことを教えてくださったので良いタイミングで加入できたなと思っています。
25年間グループを支えてきた先輩への尊敬の眼差し
ーー先日の25周年コンサート『Hello! Project 25th ANNIVERSARY CONCERT』では大勢のOGが登場しました。譜久村:中澤裕子さんに「今現役メンバーが元気に活動してくれているおかげでOGが活躍できるんだよ」と話していただいたのですが、私からしたらOGの皆さんがいてくださるから今活動できるんだって強く思っているし、そういうことをお互いが想い合っているから生まれる愛情があって、守りたいものがあって、それで25年続けられたのかなと思います。
北川:OGの皆さんのリハーサルを客席側からみんな必死に目に焼きつけていて、ちょっとの時間でも先輩のリハーサルを見に行きたいっていう感じで、現役メンバーが先輩に対して持っている憧れの気持ちが自分を成長させるんだと思います。それで、自分自身も後輩に伝えていって……って続いた結果が今なんだと思います。それはモーニング娘。だけじゃなくて、色々なグループがそれぞれ魅力を伝えてきたから大きな組織になったというか。
ーー譜久村さんもまもなくOGという立場になるわけですが……。
譜久村:全然実感がないです。でもああいう時に出て「わー!」って言われるような存在にはなりたいですね。
ーーいよいよ11月28日、29日は横浜アリーナ公演が開催されます。譜久村さんは道重さんの卒業公演以来の横浜アリーナですね。
譜久村:嬉しいです。道重さんが卒業されるときに「もっと大きな景色を見てね」と言っていたことが忘れられなくて。なので2日間公演ができて嬉しいです。ハロー!プロジェクトの他のグループが横浜アリーナのステージに立っているのを見て、ちょっと悔しさというか、私たちも立ちたいという気持ちがあったので、その気持ちをぶつけて、全員が楽しめるライブにできたらいいなと思います。
北川:私にとっては初めての横浜アリーナ公演になるんですけど、横浜アリーナは加入前に色々なイベントや、(『東京ガールズコレクション』での)鈴木愛理さんのランウェイとかも見ていたので、そこに私が立つのは不思議な感じですね。ステージからの景色は全然想像つかないのですが、すごく楽しみです。
ーー北川さんは、自宅に譜久村さんがサプライズで訪問することでモーニング娘。への加入を知りましたよね。当時は譜久村さんにどのようなイメージを持っていましたか?
北川:めちゃめちゃお姉さんだと思ってました。年齢が離れているというのもありますけど、年齢以上に経験しているものが多いじゃないですか。印象に残っているのは2016年のコンサート(『モーニング娘。'16 コンサートツアー秋 〜MY VISION〜』)で「Be Alive」を歌いながら涙を流す姿。この景色を見て涙するってどういう感情なんだろうって思いました。私はモーニング娘。になるまでステージに上がったことがなかったので、そんな経験をこんなに長く経験されているって本当にすごいことなんだろうなと思いました。
譜久村: たしかに。以前、個別トーク会で同い年だという方が「社会人1年目です」って言ってくださったことがあって。同い年でも私にはない初々しさがあって、本当に自分と違う人生があるんだなと思いました(笑)。
卒業後は“リーダーじゃなくなった譜久村聖”を探す時間に
ーー譜久村さんは卒業後について、次なるステップへの準備期間を経て新たな活動をしていくと発表しています。12年続けたものを辞めるのはすごく大きな決断だと思いますが、アイドルではなくなった、1人の人間としての生活は想像できますか?
譜久村:まず、これだけ毎日会っていたメンバーに会えなくなることが寂しくなると思うし、歌もダンスも大好きだし、ファンの皆さんに会えなくなることもすごく寂しいです。人生の半分以上を賭けて本気で向き合ってきたものなので、それがなくなったときにどうなるんだろうと思います。卒業したあとは“本来の譜久村聖”探しになるのかなと思っていて。もちろん卒業してもモーニング娘。だったことは続いていくのでOGとしてきちんと背負っていかないといけないと思うのですが、リーダーじゃなくなった自分、1人の譜久村聖として、私が私にわがままになれるのかなと思います。
ーー高校生の時に就任した“モーニング娘。のリーダー”という立場では、普通の学生とは違うことを経験し続けることになります。普通の学生になりたいと思うこともあったのではないでしょうか。
譜久村:振り返ってみると、制服でディズニーランドに行ってみたいとか、成人式に参加したいとか思うこともありました。でも、できない自分が惨めになりたくないから、興味がないことにしてきました。加入してすぐの頃は高校生になるまではアクセサリーをつけなかったので、だからアクセサリーへの興味をなくそうと自分に言い聞かせていたら、“アクセサリーに興味を持たない自分”というのができたんですけど、アイドルを卒業して、自分は本当にアクセサリーに興味がないのか、本当に友達と何人かでディスニーランドに行きたいのか、自分に問いかけたいと思います。意外とアイドルじゃなくなっても興味がないかもしれないですし(笑)。
ーーアイドルになる前の自分を思い出すというか。
譜久村:でも、モーニング娘。に入ったからこれだけ人として成長できたと思います。モーニング娘。だったから今の自分があるし、その自分がすごく好きなので、これからもそうやって自分を高めることはしていきたいと思いますし、卒業したら今までできなかった勉強とかもしてみたいなと思います。