ソン・シギョン、PSYや松井五郎ら参加のミニアルバム『こんなに君を』完成 日本のファンへの想いも語る

ソン・シギョン、日本デビュー6年目の想い

 韓国を代表する歌手のソン・シギョンが、キングレコード移籍後第1弾となるミニアルバム『こんなに君を』を11月22日にリリースした。

 今作のタイトル曲「こんなに君を」は、「江南スタイル」で世界的ヒットを飛ばした韓国のアーティスト・PSYが作曲を担当し、長渕剛や安全地帯、氷室京介ら数々の著名アーティストの楽曲を手がけた作詞家の松井五郎が作詞を担当。ソン・シギョンがインタビュー内で「僕にとってのアルバム作りは、いい曲を集めること」と語っていた通り、柔らかくも切ないメロディに深みのある歌詞が乗ることで、一度聴けば忘れられない、まさにタイトル曲にふさわしい名バラードが完成している。

 そのような豪華制作陣によるタイトル曲が実現した背景やアルバム制作にまつわるエピソード、日本のファンへの想い、これから日本でやりたいことについて、ソン・シギョンにインタビュー。彼の言葉で、思いや考えをたっぷりと語ってもらった。「臆病」という意外な言葉や、今後の活動への新たなアイデアも飛び出した取材となった。(市岡光子)【記事最後にプレゼント情報あり】

僕にとってのアルバム作りは、いい曲を集めることと同義

ソン・シギョン 시경 SUNG SI KYUNG インタビュー(写真=池村隆司)

——ソン・シギョンさんが2017年12月に日本1stアルバム『DRAMA』を携えて日本でデビューを果たしてから、今年で6年を迎えます。

ソン・シギョン:6年間も日本で活動できるとは、想像もつきませんでした。僕が韓国で歌手デビューした頃は、韓国に生まれたのであれば、韓国で頑張って音楽をやって、韓国で歌手人生を終えるという時代だったんですよ。

 十数年前、チャン・ナラさん(韓国の女優)に誘われて、初めて日本に来たんです。当時の僕は「日本に行って何かいいことあるんだろうか?」「日本語も話せないし、日本で曲を出したこともないのに」と懐疑的に思っていたのですが、実際に訪日して、中野サンプラザで行われたイベントを目にして驚きました。そこでは、韓国語の曲をそのまま披露して、会場が盛り上がりを見せていたからです。ただ韓国の曲を頑張って歌う。こういうのもありなんだと、国際歌手でなくとも海外で歌うという活動があるんだと、不思議な感覚だったことを今でもよく覚えています。

——シギョンさんにとって、日本のファンはどんな存在ですか?

ソン・シギョン:すごくありがたい存在で。韓国の食堂でごはんを食べた時についてくる“おまけのおかず”のような感じです。「こんなにいいものをもらっていいの?」と。今でこそ、K-POPのいろいろなアイドルが世界を狙って活動していますが、僕は日本で日本語の曲を歌ってアルバムを出すことなんて、それまで考えたこともなかったので。

 日本では韓国ほど大きな活動はまだできていません。それなのに、「ソン・シギョンさんが好きです」と言ってくださるファンがいる。いつもありがたい気持ちで、何か恩返ししたいなと思っています。

——今回は、キングレコードからミニアルバムをリリースされますね。

ソン・シギョン:そうなんです。2017年の日本デビューから、NHKの『テレビでハングル講座』への出演も含めて、日本語を勉強していろいろな活動をしてきました。でも、自分にとって本当に満足のいく活動はまだできていなくて。韓国の大手芸能事務所であれば、大規模イベントで大勢のファンを前に新人として活動が始まりますから、その後の展開も簡単ですが、僕の日本での活動はそうじゃない。

 僕はショッピングモールで何度も歌いました。でも、そのたびに悔しくて。音楽番組に出たくても、それはなかなか難しいんですよね。だから、今度また日本でチャンスがあったら、自分ができることを全部やってみようと思っていたんです。コロナ禍で3年という時間が空いてしまいましたが、今回キングレコードとご縁があって、今はここからまた勝負してみようという気持ちでいます。

 昔は地上波のテレビ番組に出なければいけないと思っていたけど、今はYouTubeの時代だから、いくらでもやれるんじゃないかとも思っていて。日本のコンテンツを勉強しながら、料理番組や語学番組など、YouTubeにも挑んでみようかなと思っている段階です。

ソン・シギョン 시경 SUNG SI KYUNG インタビュー(写真=池村隆司)

——あらためて、11月22日にリリースされるミニアルバム『こんなに君を』のコンセプトを教えていただけますか?

ソン・シギョン:僕はミュージシャンだけれど、ミュージシャンにもいろいろな種類があって。たとえば、坂本龍一は自分でサウンド制作から作曲、演奏、すべてをやって、その時代を引っ張っていくパイオニアのような存在でしたよね。

 でも、僕は歌手です。自分で曲を作ったりはしますが、誰かに作ってもらってもいい。その作品を、歌で頑張って演じるんです。だから、僕がアルバムをプロデュースする時は、今売れる曲とかトレンドを追い求めるのではなくて、“自分にとっていい曲”を集めて構成します。僕にとってのアルバム作りは、いい曲を集めることと同義。「こういう想いをアルバムに込めよう」とか「こういうサウンドにしよう」ということではなく、「ソン・シギョンの解釈による作品/演技が聴けるんだ」という形で作品をリリースしています。今回の作品も、ミニアルバムだと決めてから6、7曲の楽曲を集めて、歌って、準備してきました。

——なるほど。歌手ならではのアルバムの作り方があるんですね。タイトル曲「こんなに君を」はサビのメロディがとてもキャッチーで、一度聴けば耳に残る楽曲です。

ソン・シギョン:それは作曲を担当してくださったPSYさんの魅力ですよね。覚えやすいメロディを作り、難しい音楽は絶対にしない方といいますか。

——この楽曲は、作曲を世界的ヒット曲「江南スタイル」を作詞作曲したPSYさん、作詞を日本の著名アーティストの楽曲を多数手がける松井五郎さんが担当するという、非常に豪華なキャスティングです。なぜ、おふたりに依頼しようと思ったのですか?

ソン・シギョン:PSYさんとは、運よくタイミングが合ったので作曲をお願いすることができました。PSYさんがアルバムを出すタイミングで、僕がフィーチャリングでの参加を頼まれたんです。だから、「僕がOKを出す代わりに兄さんは何をやってくれる?」と聞いてみたら、日本でアルバムを出す時に曲を書いてくれることになったんです。結果として、PSYさんもタイトル曲らしい楽曲を書いてくれて、僕としてもPSYさんのような日本でも有名な方の曲をタイトル曲にしたかった。PSYさんの作るわかりやすいメロディに、松井さんの歌詞が乗れば、すごくいい曲になるんじゃないか――そう思い、松井さんに作詞をお願いしました。

 僕は松井さんの歌詞が好きなんです。人生の話というか、示唆に富んだ哲学的な歌詞ですよね。僕が最初に松井さんと組んだ「Life is ...」(アルバム『DRAMA』収録)という楽曲の歌詞もそうだったし。ありふれた「君が好きだよ」という想いではなく、答えは一つひとつ違って、光もあれば影もある。松井さんならではのその表現が美しくて、いつも歌う時に好きだなと感じるんです。注目してほしいのは、歌詞全体ですね。

——PSYさんのメロディに乗せた松井さんの歌詞を堪能してほしいと。

ソン・シギョン:そうですね。もちろん、メロディも「江南スタイル」の人が書いてるので。「こんなに君を」というか、「こんなに江南スタイルを」ですね(笑)。

ソン・シギョン 시경 SUNG SI KYUNG インタビュー(写真=池村隆司)

——(笑)。5曲目に収録された「ただ...」は、シギョンさんが作曲されたのですよね。作詞は松井五郎さんです。

ソン・シギョン:自分で作った楽曲をタイトル曲にしようとは思わないです。なぜなら、さっきも言ったように、僕は作品を演じる歌手ですから。自分の書いたものが名作であればいいですけど、それよりもいい曲を作ってくださる方はたくさんいる。僕はそれを探して、アルバムを作る際に(作品を構成する要素として)少し足りない部分があったら、自分の曲で埋めている感じなんですよね。だから、いつも僕の作った曲は最後に置かれていることが多いんです。

 今回もミニアルバムの構成を考えた時に、この作品を締めるための曲が必要だなと思って。最後の曲を書こうという前提で、「ただ...」を作曲しました。自分の曲をタイトル曲にすると、全部自分で責任を負わなければいけないじゃないですか(笑)。でも、今回のタイトル曲は松井五郎さんとPSYさんの作詞作曲です。もし結果がふるわなかったら、松井さんとPSYさんが半分ずつ責任を負うということで(笑)。

——なるほど(笑)。ちなみに、「ただ...」に関しては、シギョンさんから松井さんに歌詞について何かオーダーはされたのでしょうか?

ソン・シギョン:松井五郎さんのようなベテランの方が作詞してくださる際には、すべて任せたほうがいいと僕は思っていて。最高のシェフに「お醤油をもうちょっと入れて……」とか「砂糖じゃなくてこの調味料使ってください」とか、そんな指示はいらないと思うんです。だって専門家だし、お互いにプロだから。「あなたの作品を歌いたい」という思いで、尊敬の気持ちを込めながら、毎度お願いしていますね。

——この楽曲も、歌詞が非常に深いですよね。まさに、先ほどおっしゃられていた「哲学的」という松井さんの詞ならではだと思います。

ソン・シギョン:そうですよね。いつも難しいんですよ、松井さんの歌詞は。その難しさを松井さんは手放さない。本当にすごい人です。

 すべてお任せすると言いつつも、「こんなに君を」の制作では、PSYさんが松井さんに「聴いた瞬間に覚えられるような歌詞を」という依頼をしたんです。だから、サビで印象的なフレーズが出来上がったんだと思います。

ソン・シギョン「こんなに君を」ハイライトメドレー/SUNG SI KYUNG Highlight Medley

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる