2024年のK-POPはよりマニアックな楽曲が求められる？　ガールズグループシーンで起きている変化

　“2023年のK-POPの顔となるガールズグループは？”との問いに対する答えは、個人の見方や好みによって挙げる名前が変わってくるはずだ。とはいえ、韓国国内のヒットチャートを見る限りでは、IVE、LE SSERAFIM、NewJeansとするのが妥当だと言えよう。この3組はいずれもパフォーマンスやビジュアルの魅力は言うに及ばず、楽曲のクオリティの高さを常に前面に出してきたことが、短期間でスターダムにのし上がった理由だろう。

　当然のごとく、最近はこうしたサウンド重視の姿勢に刺激を受けたと思しきライバルやヒットソングがちらほらと出てきている。そのなかでも特に気になるのが、今年10月にデビューしたばかりの5人組・YOUNG POSSEだ。グループのお披露目曲となった「MACARONI CHEESE」は、余計な音を可能な限り排除したシンプルなトラックをバックに、アメリカの家庭料理・マカロニ＆チーズについてメンバーたちがラップを駆使して語り合う。その肩の力の抜き加減は新人とは思えないほどで、終始ルーズなムードが漂っているのが印象的である。

　K-POPの楽曲ではAメロ・Bメロ・サビといった明確な区切りがないものが年を追うごとに増えてきているが、ここまでミニマルなビートで押し通すシングル扱いの曲はめずらしく、しかも女性アイドルのデビュー曲となるとこれまでほとんど見られなかった。食べたいものを食べて、チーズのように伸びてゴロゴロしていたい。そんな素直な気持ちを込めた歌詞は、もしかすると“時代が求めているのは自分たちのような存在だ”というメッセージが含まれているのかもしれない。だが、聴き手に深読みは求めていないライトな雰囲気もあり、その点でも新しさを感じてしまう。

　「MACARONI CHEESE」のアグレッシブな音作りは、前述の3組の活躍とともに女性4人組・FIFTY FIFTY「Cupid」の世界的ヒットも後押しとなったに違いない。小規模な芸能事務所に所属している同グループが曲の良さで国内外の注目を集め、米ビルボードのメインシングルチャートにランクイン。こういうシンデレラ的な展開を目の当たりにすると、制作側が“やはりサウンドで攻めなければいけない”と認識したのは想像に難くない。

　K-POPに対するリスナーの好みが変化してきているのも、サウンド志向を強めるきっかけとなったはずである。ここ数カ月を見てもそれを象徴するようなことが起きている。YOUNG POSSEと同じく2023年デビュー組のガールズグループ・KISS OF LIFEは、HIPHOPのテイストを取り入れた華やかなデビュー曲「Shhh」も評判が良かったが、初のミニアルバムに収められた「Sugarcoat」もチャートに入るほどの人気曲となった。同曲はメンバーの一人、NATTYの清潔感のある伸びやかな歌声がよくなじんでいる。誤解を恐れずに言うとかなり地味なR&Bだ。彼女の人気が特に高い点があるにせよ、やはり一音一音のセンスの良さが口コミで広がったのが最大の理由と推測する。