つきみ、ギャルとパンクが出会った異色バンド 若者の共感呼ぶ“嘘のない音楽”が生まれるまで
“福島県いわき発気合い系ぶっ壊しテロリストバンド”つきみが、1st EP『きえたくなる度君、刻む♡』をリリースした。
つきみは2020年から活動をスタートし、2022年にリリースした1stデモ音源『オトコ一瞬ダチ一生』がタワーレコード渋谷店の「タワクル」にて9週間に渡り1位を獲得。次世代の注目バンドとして人気を博している。
映画『NANA』の影響を受けてノリで結成し、マクドナルドの月見バーガーからインスパイアされてバンド名を命名、楽器経験ゼロから独学で作詞・作曲するなど、やや型破りな出自を持つ彼女たちだが、パンクロックを軸にした音楽性、恋愛や人生に対するリアルで嘘のない言葉の数々にはリスナーの胸を打つパワフルさが溢れている。
リアルサウンドでは、つきみの成り立ちから1st EP『きえたくなる度君、刻む♡』の制作に至るまでをインタビュー。メンバーのににちゃん(Vo/Gt)、しゅか(Dr)の言葉から、バンドのスタンスを探っていきたい(編集部)。【最終ページに読者プレゼントあり】
ロックをやりたかったと言うより、できることがこれだった(ににちゃん)
ーーつきみ結成の経緯から教えてください。
ににちゃん(Vo, Gt):えっとー、ノリなんですけど(笑)。映画『NANA』を見て、前にいたベースの子と「バンドやりたいね」って話になったのが最初です。で、インスタのストーリーに「ドラムやってくれる人?」と載せたらしゅかが反応してきてくれました。
ーーににちゃんさんとしゅかさんはどういった繋がりだったのでしょうか?
ににちゃん:地元の友達の友達。初めて会ったのは自動車の教習所で、授業が一緒になったり、一緒に車に乗ったりしていたので「この子があの子と仲良い子だ」って認識はあって。でもインスタをどうして交換したかは忘れました(笑)。
しゅか(Dr, Cho):そうだね。何でだっけ(笑)?
ーーしゅかさんは、ににちゃんさんのストーリーを見てどうして一緒にバンドを組みたいと思ったんですか?
しゅか:ストーリーに上がっていたのは弾き語りの動画だったんですが、その歌声がめっちゃ好きで。別にバンドをやりたいと思っていたわけではなかったのですが、「この歌を歌っている人となら、どんなバンドでもいいからやりたい!」と思いました。
ににちゃん:へえ!
しゅか:何回も言ってるじゃん!
ににちゃん:はい、300回くらい聞いてます(笑)。
しゅか:だから本当に一緒にバンドできてよかったなと思っています。
ーーににちゃんさんは映画『NANA』の影響でバンドを始めたということですが、もともとバンドや音楽はお好きだったのでしょうか?
ににちゃん:いや、バンドはまったく聴いていなくて。西野カナとか阿部真央とか、J-POPを聴いていました。
ーーじゃあ、本当に『NANA』を見て「バンドってカッコいい!」と思ったと。
ににちゃん:はい、「バンドかっけー!」って。
ーーしゅかさんはどういった音楽が好きだったんですか?
しゅか:私はもともとバンドをよく聴いていました。バンドを好きになったきっかけは04 Limited Sazabysで、そこからクリープハイプとかteto(現・the dadadadys)を聴くようになりました。吹奏楽部ではドラムもやっていました。
ーー結成当初、お二人の聴いていた音楽は全然違い、しかもソングライティングをしているににちゃんさんはバンドの曲は聴いていなかった。そんなところから始まったつきみですが、今のようなロックサウンドになったのはどういう流れだったのでしょうか?
ににちゃん:「バンドかっけー!」って始めたバンドでしたけど、別にナナ(大崎ナナ/中島美嘉)になりたいと思ったわけではなかったし、「こういうふうになりたい」という理想のバンドはなかったので、歌いたいことを歌おうと思って。そもそもバンドをやることになってからエレキギターを買ったくらいで、まずギターが全然弾けなかったんです。だから本当にただメロディを歌って、そこに歌いたいことを乗せていくみたいな。ロックをやりたかったと言うより、できることがこれだったという感じです。
ーーつきみは2022年にリリースした1stデモ『オトコ一瞬ダチ一生』がタワーレコード渋谷店の「タワクル」にて、9週間に渡り1位を獲得し、一気に知名度が広がりましたが、その状況はどう捉えていますか?
ににちゃん:すごくうれしいですし、もっと大きくなりたいなって思いました。ノリでやってると言いながらも、いろいろ考えてやっているつもりなので、ちゃんと売れたい(笑)!
ーーライブをしたり、CDがロングヒットしたりしていくと、聴いてくれる人がいるということを実感してくると思いますが、それは楽曲や活動に影響していますか?
ににちゃん:私は我が強いから、自分が歌いたいことを歌うということは変わらないですね。お客さんがどう受け取るかは別に気にならないというか。「共感するから好き」って思ってくれてもいいし、「歌詞には共感しないけど、このメロディは好き」でもいい。お客さんが歌ってほしそうなことを歌っているわけじゃなくて、本当に自分が歌いたいことを歌っています。ライブではそれを泣きながら聴いてくれる子とかもいるんですよ、それはうれしいなと思います。
しゅか:バンドを始めた当初と現在で歌っている内容は結構違うんですよね。10代の頃は男の子に振り回される曲も歌っていましたけど、今は強くなって「女の子、頑張ろう!」みたいな曲も歌えるようになってきている。そういうつきみを聴いて、ちょっとでも応援したいなって思ってくれるお客さんが増えたらいいなと思います。
ににちゃん:普通に恋愛の仕方が変わってきてるんで。今は自分が一番大事やけど、それこそ高校生くらいの頃は、「めっちゃ好きで、嫌われたくない!」って思ってたから。
しゅか:でもそれがあったからこそ、今、強くいられるんだと思う。
ににちゃん:そうだね。