幾田りら×『アナログ』も Awesome City Club、SHE'S……映画にインスパイアソング起用の背景
10月6日に公開された映画『アナログ』に、幾田りらがインスパイアソングとして「With」を書き下ろしている。『花束みたいな恋をした』(2021年1月公開)のAwesome City Club「勿忘」や『そして、バトンは渡された』(2021年10月公開)のSHE'S「Chained」にも挙げられるように、近年の映画で主題歌ではなくインスパイアソングが起用される背景には何があるのだろうか。
映画『花束みたいな恋をした』は興行収入38.1億円を記録するヒットを生んだと同時に、インスパイアソングのAwesome City Club「勿忘」は配信開始から約3カ月で1億回再生を突破(※1)、2021年の『第72回NHK紅白歌合戦』でも披露されるなど大きな話題となった。男女ツインボーカルで、主人公2人の恋に重ね合わせることができることや、どちらの視点にも寄り添った楽曲という点が映画を鑑賞した人々を中心に支持され、ヒットに繋がったと考えられる。「勿忘」は映画におけるインスパイアソングの成功例を生んだと言えるだろう。
「勿忘」は映画側から依頼されて制作した楽曲ではなかったという。Awesome City Clubのatagi(Vo/Gt)は制作の経緯について、映画に出演した縁があったことに触れつつ、作品に感銘を受けたことから制作会社に相談して作ることになったと明かしており、「基本的には映画ありきでできた曲」と語っている(※2)。
映画『そして、バトンは渡された』では「映画の世界観に寄り添った楽曲にしたい」というプロデューサーの思いからインスパイアソングを制作するアーティストを募集、抜擢されたのがSHE'Sだった。井上竜馬(Vo/Key)は「Chained」について「愛おしい登場人物達から貰った沢山の言葉を胸に、映画の世界に寄り添い景色を増幅させるように、そして共に音楽人生を歩んでくれている温かいファンに愛が届くように作曲しました」とコメント(※3)。200組以上集まった中から制作側がアーティストを選び、インスパイアソングが制作された点が「勿忘」との相違点である。
そして、冒頭でも触れた通り映画『アナログ』のインスパイアソングが幾田りらによる「With」。楽曲について幾田は「作品を観終わって、胸にグッときたそのままの勢いで、インスピレーションを受けてこの楽曲を書き上げました」とコメントした(※4)。また、楽曲のプロデュースは劇伴音楽と共にandropの内澤崇仁(Vo/Gt)が担当。エンディングでは「With」のインストゥルメンタルが使用されている点が、他2作品との違いだ。