SCANDAL、にしな、のん、日比谷野音でそれぞれの“強さ”を見せた一夜 『Women In Music vol.1』レポート
Billboard JAPANによるライブイベント『Billboard JAPAN Women In Music vol.1 Supported by CASIO』が11月3日に東京・日比谷公園大音楽堂にて開催された。
「Women In Music」は、女性の社会進出を世界でも喫緊の課題として、さまざまなジェンダーや立場の人が活躍できる社会をつくることを目指し、米・ビルボードが2007年から行ってきたプロジェクト。その日本版「Billboard JAPAN Women In Music」が2022年9月よりスタートし、これまでに女性アーティストをはじめとした、音楽業界に携わる女性たちにフォーカスしたインタビュー、ライブ、そしてトークセッションを行ってきた。今回行われた本公演には、にしな、のん、SCANDALの女性アーティスト3組が出演。MCは、3時のヒロインの福田麻貴とかなでが担当した。
音楽ジャンルも、編成も、ライブパフォーマンスもそれぞれ異なる3組。三者三様の個性が光っていて、同じ女性という立場から言わせてもらえば、彼女たちがステージで輝く姿に勇気をもらえるイベントだった。
トップバッターは、にしな。1曲目の「スローモーション」から伸びやかな歌声を響かせ、一気に独自の世界を創り上げていく。野音のステージに立つのは今日が初めてだという彼女。時刻は16時半の夕暮れ時で、ライブが進むごとに景色が変化していく絶好のタイミングだ。不思議なワードチョイスが光る「FRIDAY KIDS CHINA TOWN」では、ちょうど日が沈みかけてきたこともあり、夕闇に誘われているようだった。
「東京マーブル」ではバブルガンでしゃぼん玉を飛ばし、「ケダモノのフレンズ」ではステージの縁に座り込んだり、お立ち台に上がったり、ステージ上で目まぐるしく動き回る。そんな自由なパフォーマンスは、初めての野音のステージを心ゆくまで楽しみたいという気持ちの表れにも思える。勢い余ってか、「クランベリージャムをかけて」で一瞬転びそうになり、演奏後に「見てました?」「でもおかげで一気に緊張がほぐれました!」と笑いながら語るあたりにも、彼女の素直で気取らない性格が伝わってくる。後半は新曲「シュガースポット」を披露し、すっかり日が落ちたステージで「ヘビースモーク」「青藍遊泳」をしっとりと届けた。にしなの等身大の魅力が詰まったステージだった。
2番手、夜の暗闇のなかでも存在感を放つ、真っ赤な衣装で登場したのん。さらに赤いテレキャスターをかき鳴らし、「Beautiful Stars」「やまないガール」のロックナンバーで会場を盛り上げる。
転換中にMCの福田とかなでから「裏でもあのまんま!」と暴露されていたように、演奏中以外はほんわかとしたイメージが強いのん。「荒野に立つ」のパフォーマンス前には、「次は休憩時間。しっとりした曲なので……」と紹介して客席からあたたかい笑いが起きる。一方で、曲中では客席を真っ直ぐに見据え、力強い歌声を届けていたのが印象的だった。〈鏡に映ったのは 傷だらけのわたし/それを見ていた君が/君の傷を見せてくれた/同じだねと笑ってくれた〉――インタビューによれば、のんはこの歌詞がお気に入りなのだという。彼女の言動や楽曲から感じられるのは、不器用ながらも一緒に頑張ろうと伝えてくれるような、優しさとたくましさだ。そんな素直な姿勢こそが彼女の魅力だと思う。
後半は、狼の叫び声を真似た「ワオーン!」という独創的なコール&レスポンス(彼女曰く、“野音”とかけたのだという)で観客を煽り、「こっちを見てる」「夢が傷むから(Inspired by 東京百景)」と畳みかけて熱を高めていく。ラストは「明日以降も皆さんの素敵な日々が続くように」と告げて「鮮やかな日々」をパフォーマンスし、会場をあたたかな雰囲気に包んだ。