LOVE PSYCHEDELICO、アコースティックセットで聴かせる真髄 『TWO OF US』東京公演レポ

LOVE PSYCHEDELICOアコースティックライブレポ

 LOVE PSYCHEDELICOがアコースティック編成で全国を回るツアー『LOVE PSYCHEDELICO Premium Acoustic Live "TWO OF US" Tour 2023』の東京公演が10月27日と28日、東京・EX THEATER ROPPONGIにて開催された。

 KUMIとNAOKIの2人が初めてアコースティックセットでのライブを行なったのは、2008年のUSデビューに伴いL.A.と日本とを行き来していた時期。日本でも2014年あたりからワンマンライブやフェスなどで披露していたアコースティックセットに『TWO OF US』と名づけ、それを「ツアー」という形で発展させたのが2019年。その第2弾となる今回は、サポートにヴァイオリニストの美央を迎え、9月2日の大阪府・サンケイホールブリーゼを皮切りに全国10都市13公演を行なう予定だ。 

 筆者が見たのは東京公演の2日目。定刻になり、KUMIとNAOKIがステージに姿を現すと大きな歓声と拍手が巻き起こった。まずは2002年にリリースされた、彼らのセカンドアルバム『LOVE PSYCHEDELIC ORCHESTRA』より「life goes on」でこの日のライブをスタート。KUMIはシェイカーを振りながら歌い、NAOKIはピックアップのついたアコースティックギターをジャカジャカとかき鳴らす。その分離の良さといったら。全ての弦の粒だちを、目で見て手で触れられるような錯覚を起こすくらい、クリアに聴こえて思わず息を呑む。それもそのはず、前回の『TWO OF US』で導入した LOVE PSYCHEDELICO特製スピーカーが、今回はさらにバージョンアップした状態で持ち込まれているのだ。

LOVE PSYCHEDELICO

 「下手したら、前回のバンドセットの時よりも大きなトラックにスピーカーやアンプを積み込んで回ることになりそう」

 先日彼らにインタビューをした時(※)、NAOKIは笑いながらそう話してくれたが、ステージの両脇にうずたかく積み上げられたスピーカーから聴こえるサウンドは、2階席にいてもクリアかつ臨場感たっぷりだ。

 何より感動的なのは、ボーカルKUMIの「歌声」がバンド編成の時よりもよく聴こえることだ。「息遣いまで聞こえてくるというか、隣で演奏している僕も思わずギターを弾くことを忘れてしまいそうになるくらい、会場全体が彼女の声に包まれると思う」と、先のインタビューでNAOKIが言っていたように、声の立ち上がりや息継ぎ、音を伸ばしたり切ったりするタイミングさえもはっきりと聴こえ、そうしたアーティキュレーションがアンサンブルの中でいかに重要な要素であるかが分かるのだ。

LOVE PSYCHEDELICO

 しかも、個人的にこの日の会場となったEX THEATER ROPPONGIは日本でも有数の「音の良いハコ」だと考えている。以降も曲によってアコギ2本を重ねたり、アコギとマンドリンを合わせたり、アコギとエレキギターを合わせたりと様々な楽器の組み合わせでLOVE PSYCHEDELICOの楽曲をプレイし、その音の響きの違いや倍音の増幅の仕方、2人のリズムの取り方などを最高のモニター環境で堪能することとなった。

 「前からKUMIが、『カフェでライブをやりたい』と言っていて。このアコースティックツアーは、カフェでライブをやっているような気持ちで挑んでいます」とMCでNAOKIが言う。「こうやって六本木のど真ん中で、『カフェライブ』をやっているなんて感無量です。今日はどうかリラックスして聴いて、僕らのこともリラックスさせてください」と冗談まじりに話していた。

 確かに、1人だけの弾き語りなら自分の好きなタイミングで好きなように演奏し歌うことができるし、3人、4人とメンバーが増えれば、そこで鳴らされている音が増えた分だけ楽しい上に負担も減る。しかし2人のアンサンブルは、ちょっとしたリズムの揺らぎも伝わりやすいし、ごまかしも利かない。それでもKUMIとNAOKIが、これだけ息の合った演奏と歌をリラックスした空気を醸しつつ披露することができるのは、長年の間に培われた確かな演奏力と、お互いの信頼関係があるからこそだろう。

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