2023.10.07 18:00

0.1gの誤算、緑川裕宇の誕生日祝福した念願のホールワンマン　「もっと上に」熱い想いを伝えた夜

文＝水谷エリ、写真＝株式会社At sense 田口雅大

　客席からの鳴りやまないアンコール。その声に引き寄せられるように再度ステージに登場したメンバーの顔はとても晴れやかだった。客席を見渡しながら「さすがに10曲じゃ終わらないですよ」と笑い合う姿も微笑ましい。だが、これで満足している場合ではないといった表情を浮かべる緑川。「でもさ、俺は、これはまだ通過点だと思ってんの。ここがゴールなわけじゃないもん。もっと上を目指していきたいでしょ。俺はもっと上に行きたいと思ってます！」と言う。彼の真剣な表情に客席にいた誰もが感動したのも束の間、「わかりました。じゃあ、上に上がっていただきたいと思います！」という水田魔梨の掛け声と共に、ステージ袖からスタッフが勢いよく飛び出してきた。状況を飲み込めない緑川は「え、何？」と戸惑いを隠せない。そうこうするうちに彼の腰にハーネスが装着される。そう、彼を待ち構えていたのは、ハーネスをワイヤーで吊るして宙を舞うフライングだ。ついでに、頭にはカメラも装着されたので素晴らしい視点の映像も撮れるはずだ。ニコニコと嬉しそうな河村友雪（Gt）を横目に、これからフライングをして歌わなくてはいけなくなった緑川は「ツイキャスで“やったことない体験してみたい”って言ってたわ……」と緊張の面持ち。「怖いんだけど、普通に！」と絶叫しながら緑川は地上8メートルほど上へとスルスル上がっていく。「男闘魂戦争卍燃えよ誤算光殺砲卍」をフライングしながら歌う彼は思わず拝みたくなるほど神々しかった。

　「こんな感じでどんどん上に上がっていきますので、0.1gの誤算。どうか応援して下さい、よろしくお願います！」と緑川が言ってからの流れは最高だった。アンコール中盤では、「今、この日本青年館こそが俺らの黄金時代なんだよ」と絶叫。「お前らも同じであってほしい。そして、死ぬときに思い出せるような、日本青年館でのライブ、そしてこれからやっていくライブが黄金時代だなって思える集団に、俺たちはなっていく！」と熱弁を奮う。要所、要所でコミカルな部分を含みながらも音楽に対する想いは人一倍強いということがヒシヒシと伝わってくる。

　もちろん、バンド活動を続けることには大変さも伴う。「この新しい0.1gの誤算になってちょうど2年が経ちました」と今日に至るまでの流れを振り返りながら「今までのバンド活動、楽しいことも辛いこともたくさんあったけど、この第二の誤算としての人生は毎日が最高だよ、本当に。その中での挫折とか、苦労とか、苦悩とか、もちろんありますよ」と言いつつ、「日々送られてくる熱すぎるDMに励まされてます」と頑張れているのはファンのおかげだと本音を漏らす。その上で、「こういうときじゃないと言えないから……みんな、ほんとにいつもありがとう」とメンバーにも感謝の気持ちを照れくさそうに吐露する緑川。年下だけど頼れる存在の下手チーム（水田と眞崎）、誤算の“切り込み隊長”として一緒に先手を打てる上手ギター（河村）。そしてサポートドラムのまさしに関しては、「人生最後のバンドのドラマーがお前で良かった」という発言まで飛び出して観る者の感動を誘った。「アストライアの転生」が終わる頃には、本編にも増してメンバーの一体感が高まっていたのは言うまでもない。

　大きな期待に応えてダブルアンコールまで実現したこの日のライブ。だが、これで満足する彼らではない。「これからも何1つ変わらない俺たちでいようね。まろやかになんてなんねぇぞ、これが0.1gの誤算です。骨太な俺たちでいるんで、その集団をお前らは追いかけてこい！　一生、有害な俺たちで会いましょう！」と告げ、オーラスを「有害メンヘラドール」で締めくくった。「お前ら楽しかったか？　当たり前だろ、0.1gの誤算だぞ！」と言い、本ツアーはゴールを迎えた。緑川がライブ中に言った「上に行きたい」という気持ち。それはサプライズ企画に関わらず、ボーカリストとして心からの言葉だったはずだ。大成功を収めた日本青年館でのライブの自信をそのままに、彼らが次に目指す場所は、日本最大級のライブハウス・豊洲PIT。来年3月27日に0.1gの誤算はこの舞台でいかなるパフォーマンスを繰り広げてくれるのか。たくさんの期待を受けながら8周年ワンマンに向けて着実に駒を進めていく彼らの未来に胸が高鳴る。