0.1gの誤算、“小学生以下限定”ワンマンで示した新しい層へのアプローチ　ヴィジュアル系シーンで築く独自の活動方針

　2022年8月28日、東京・池袋BlackHoleで0.1gの誤算が小学生以下限定ワンマン『はじめてのゆうがい』を開催した。本公演は、タイトル通り子ども向けに企画したワンマンライブで、開演は15時から、小学生以下は無料・保護者は2000円で入場できるというもの。

　通常の有料チケットに加えて“小学生以下は無料”をうたったライブは稀に見かけるが、今回のような“小学生以下限定”のライブはヴィジュアル系史上初ではないだろうか。元々ヴィジュアル系のライブはノリやサウンドが激しいため、子ども向けとは言い難い。にもかかわらず、この日は100人ちかくの子どもたちと保護者が集まっていた。しかもその年齢層は幅広く、保護者に抱っこされた乳幼児から小学校高学年まで、様々な子どもの姿があった。中には、青森や兵庫など地方からこのライブを見るために東京へやって来た子もいたという。保護者の中には、元バンギャルや現役のバンギャルはもちろん、元バンドマンの男性もいた。

　園児服や着ぐるみのコスプレで現れたメンバーは、「お兄さんの真似してみてね」「周りのお友達に気をつけて」と、普段のライブとは打って変わって優しいお兄さんモード。曲の合間には、緑川裕宇（Vo）が“咲き”やヘドバン、拳ヘドバン、モッシュなど、ヴィジュアル系ライブのノリを直々に伝授する。子どもたちに囲まれた緑川は、まるで保育園の先生のようだ。ライブでは、振り付けが可愛い「オオカミ男と月兎」、「絶対プリティ生命体 ｰ緑川のテーマｰ」や、子どもたちからリクエストされた「利己的メルヘン症候群」、「有害メンヘラドール」などを披露。中には激しいサウンドの楽曲もあったが、子どもたちは全く怖がる様子なく、お遊戯会のごとく楽しそうに踊り出す。初めて見るであろう、生のヴィジュアル系バンドのステージに夢中だ。後方の保護者もその様子を微笑ましそうに見守っていた。

　ライブ中、子どもや保護者に向けた様々な気づかいも感じられた。まず、フロア後方には椅子が複数用意されており、疲れた子どもや、子どもを抱っこした保護者が座って見られるようになっている。音量は通常のライブに比べて小さめに設定されており、ライブ中にも緑川が「もう少し音量下げてもいいかも」とスタッフに伝える場面や、「もし耳が痛くなっちゃったらすぐに言ってね」と気に掛ける場面もあった。活動初期はノリの悪い観客をフロアから追い出すなど尖ったスタンスが目立っていた彼らだが、今や子どもでも安心して楽しめる全年齢向けのライブを開催するまでに変化したようだ。