King Gnu、Mr.Children、Ado、SEKAI NO OWARI、Kyrie(アイナ・ジ・エンド)、imase……注目新譜6作をレビュー
SEKAI NO OWARI「最高到達点」
煌びやかなストリングスと軽快なビートからはじまる新曲「最高到達点」。TVアニメ『ONE PIECE』(フジテレビ系)の主題歌として制作されたこの曲は、心地よく飛び跳ねるようなトラック、軽やかにステップを踏む旋律が印象的なポップチューンに仕上がっている。マーチングバンド的な間奏パートもそうだが、SEKAI NO OWARIのファンタジックなポップセンスがしっかりと反映されている。Fukaseによる歌詞も秀逸。過去になくしてしまったもの、これまでに負った心身のダメージを背景にしながら、〈さぁ、復活だ 目醒めの時が来た 今〉と呼びかけるリリックは、聴き返すたびに深みを増していく。安易な考察を許さず、リスナー一人ひとりに思考を促す質の高い歌詞だと思う。(森)
Kyrie(アイナ・ジ・エンド)「名前のない街」
アイナ・ジ・エンド初主演となる岩井俊二監督映画『キリエのうた』から、Kyrie名義での劇中歌となる。劇中歌にはアイナ作詞作曲の楽曲が多数あり、サウンドプロデュースは小林武史が担当。岩井俊二×小林武史×主演シンガーの組合せは90年代の『スワロウテイル』を彷彿とさせる。当時のCharaのポジションに今アイナがいるのは、替えの効かない歌声という意味でも納得だ。〈聞きたくないや 雑音ばっか〉の歌い出しはいかにもアイナらしい棘を孕んでいるが、それを包み込むのが小林のアレンジ。オルゴールのように柔らかな音色でまず武装を解き、ストリングスで体温をゆっくり上げていく。二人、いや岩井も含めた三人で辿り着くゴールは、とても優しい。(石井)
imase「I say bye」
2020年より作曲活動を始め、翌年TikTok投稿でバズを起こす。いまや再生回数が億単位を記録する22歳のシンガーソングライター。ただし楽曲は“新世代、気鋭”という言葉をさらっと裏切る普遍的ポップスである。ほんのりブラックミュージックの影響は感じるが本格R&Bではなく、シティポップの風味もあるが都会よりはちょっと郊外寄りのイメージ。ボカロ曲のように起伏が激しかったり言葉に毒が潜むわけではなく、J-POPのど真ん中と呼ぶにはフックもアレンジも簡素すぎる。要は「考えてみれば、今、あまりなかった」タイプなのだ。シームレスにつながった地声とファルセットの心地よさ、聴き手を疲れさせない音と言葉選びも魅力。(石井)
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