星野源、競争と熱狂の先で“個”に寄り添うメッセージ スポーツを飛び越えて生活に重なる「生命体」の眼差し
とはいえ、サウンドにも歌詞にも表れている高揚感や陶酔は、スポーツの危うい魅力までをも垣間見せているように思う。境目は消え、旗が揺れ、“1”を超える……という陶酔は、アスリートにも観客にも通じる、スポーツにつきものの忘我や、熱狂にもいともたやすく通じてしまう。我を忘れて熱狂の渦に巻き込まれることは、心地よいと同時にどこか恐ろしい。そこで重要な役割を果たしているのが、〈あなたは確かにここにいる/そして つづく〉という現実世界へと引き戻す最後のラインだろう。なにか大きなもののなかに溶け込みきってしまうのではなく、それでもなお「あなた」は「あなた」としてここにいる。地に足ついた「個」へと帰ってくることによって、熱狂を個人に寄り添うメッセージへと昇華させている。
星野源はしばしば、自分という存在やその意志を超えたもの、例えば歴史であったり、偶然であったり、そうしたものへの驚異や感嘆を志向することがある。それは個人としての「私」をかき消して、より大きな存在のなかに埋没させてしまうような危うさと隣り合わせだ。しかし、星野源はいつも、そうした危うさをスパイスとして使いこなしてきた。地に足ついた「個」へのたしかな眼差しと、そこへ帰ってこようとする貪欲な意志が、常に言葉に織り込まれているからだ。「生命体」もまた、そうした危うさを抱え込みながら力強いメッセージを発する、星野源の表現が持つ凄みを発揮する一曲だ。
■リリース情報
星野源「生命体」
2023年8月14日(月)リリース
ダウンロード/ストリーミング
https://jvcmusic.lnk.to/life
■リリース情報2
星野源 EP『LIGHTHOUSE』
2023年9月8日(金)リリース
Pre-add/Pre-save
https://jvcmusic.lnk.to/lighthouse
<収録曲>
01. 灯台 (Live Session)
02. 解答者 (Live Session)
03. 仲間はずれ (Live Session)
04. Orange (feat. MC. waka)
05. しかたなく踊る (Live Session)
06. Mad Hope - Short (feat. Louis Cole, Sam Gendel)