SiM MAH×YOASOBI Ayase、メタルをテーマに特別対談 “ロックスター”を掲げて語り合う、日本発の音楽として果たすべき役目

「ロックバンドが引き受けていたように、みんなの誇れる青春になる」(Ayase)

ーー今のはすごく象徴的な話ですよね。例えば「If I Die」ってSNSも含めてなかなか吐け口のないことを歌ってる曲だと思うんですけど、音楽の中だからこそ、そうやって自分を掘り下げて、嘘のないことを歌詞にしているのがMAHさんで。綺麗なことだけじゃない、目を背けたくなる現実や内面性もシャウトしながら吐き出していく点において、SiMはやはりヘヴィミュージックに共振しているバンドなんだと思います。

MAH:やっぱり根本にあるのは「わかってほしい。でも、わかられてたまるか」って気持ちなんですよ。「全然わかんない」って言われると腹立つけど、「全部わかってるから」って言われるのも「は?」って思う。その矛盾の上で闘ってるのがアーティストだと思うんだよね。人気が出てきて、フォロワーが増えるとアンチも増えるし、そこでうまく立ち回るには自分を隠さなきゃいけない瞬間が増えていって。「MAHさんっていい人だし、スポーツマンシップがある」って言われるけど、「いやいや、俺だって傷ついてるんだよ」みたいなことを出したい、けど全部は出したくない、けどちょっと出したい……みたいな。「If I Die」もそうだけど、毎回ギリギリのところで曲を書いてるので。

ーーなるほど。

MAH:初めて武道館をやった8年前くらいは、イメージのMAHと本当の自分とのギャップに耐えられなかった時期で。そこが一緒になっちゃうと、息抜きができないから絶対ダメなんですよ。ちょっと離れてるくらいがいいんだけど、そのバランスがめちゃくちゃ難しい。俺はいろいろ経てようやくそのバランスが取れてきたけど、そこで苦しんでる人はいっぱいいると思いますね。

Ayase:僕はそうなることが年に4回ぐらいあります。そのギャップにガッとやられて、もうSNSも見たくないし、1週間くらい誰からの連絡も返さなくなって、娯楽かお酒のことしか今は考えたくないです……みたいな状態。仕事的には怖いんですけど、一旦そうならないと曲書けないですっていうふうに、どうしてもなっちゃう。次の仕事のタイミングでケロッと戻ってたりするんですけどね。だからまだ全然うまく立ち回れてないんです。

MAH:そうだよね。俺だって慣れるのに何年もかかったから。けど、慣れすぎてもアーティストとしての魅力がなくなっちゃうし、こなれた感じが出ちゃうと見てて嫌じゃん?

Ayase:そうなんですよね。世間からのイメージもそうだし、曲を作ってるからプロデューサーみたいに見られてるんだろうけど、やっぱり僕はバンドに憧れて、ロックスターになりたくて音楽をやってるから。そのギャップにはずっと苦しみ続けていて。でも、今年の春からアリーナツアー(『YOASOBI ARENA TOUR 2023 “電光石火”』)を回ってたんですけど、アリーナにいるお客さんとか、大規模なツアーを支えてくれるたくさんのスタッフを見て、「YOASOBIのことを好きで動いてくれる人がこんなにいたんだな」ってことを綺麗事でも何でもなく、再認識できたんですよね。打ち上げでもいろんな人と喋って、毎晩のように号泣しながら誰かとめちゃくちゃ飲んで……みたいなことをやってたら、その気持ちに応えたいと強く思うようになって、なんか自分の人生も悪くないなって思えてきて。本当に信じてくれてる人に出会えて、YOASOBIとしての自分をちゃんと受け入れられるようになったのが今回のツアーでしたね。スタッフやサポートメンバーと一緒にいる時間も長いですし、何カ所も一緒に回ることが大事なんだなって。ツアーじゃないと得られないものが山ほどありました。

YOASOBI「アイドル」(Idol) from 『YOASOBI ARENA TOUR 2023 "電光石火"』2023.6.4@さいたまスーパーアリーナ

ーー「ロックスターになりたくて音楽をやってる」という話もありましたけど、Ayaseさんがそこまでロックスターにこだわるのはどうして?

Ayase:ホルモンと出会ってバンドやりたいと思って、MAHさんのようなカリスマを観てきて、ロックスターだって思う人たちの背中をずっと見続けてきたから、自分もロックスターとして胸を張れる人生じゃないと嫌だろうなと思っていて。だから、10年近くやってきたバンドを解散させてるのは、人生における圧倒的挫折だって思う反面、やっぱりライブハウスで培った経験は僕の財産なんですよね。憧れてきたバンドがライブハウスでめちゃくちゃカッコいいライブをやってきたことを知っているし、だからこそ自分たちのライブの足りなさを痛感するんですよ。「あの時に観たCrystal Lakeのライブはこんなもんじゃなかった」とか、「SUPER BEAVERやWANIMAとやった時はもっとすごかった」とか。

 ロックバンドって今も昔も、みんなの青春を引き受けていると思うし、僕らもライブでそういう存在にならなきゃいけない。音源は十分聴いてもらえたとして、ちゃんとみんなの青春となって、誇れるものにならなきゃいけないんだってすごく思いますね。だから今もロックスターを追い続けてるんだと思います。

SiMとYOASOBI、日本発のポップミュージックとして世界を目指す

ーーでも、そうやってステージに立ち、矢面に立ち続けることを選んだAyaseさんのスタンスはすごくロックスター的だと思いますし、さっきのMAHさんの「入り口になる」という話に重ねれば、YOASOBIから広がっていく興味が間違いなくあるはずなんですよね。

Ayase:それで言うと、大口叩く感じになるかもしれないけど、僕らを通して世界にJ-POPを知らしめたいと思っていて。J-POPが、ラテンとかレゲエみたいなジャンルになるにはどうしたらいいかってずっと考えてるんですよね。海外に行っても「アイドル」は本当に聴いてもらえてるんだなって思うから、アジア人として、日本人としてこういう音楽をやっていて、日本にはもっとカッコいい音楽があるんだよっていうことをちゃんと知ってもらわなきゃいけない。世界で活躍するK-POPアーティストが作ってくれた道もあるので。もっとアニメとしっかりタッグを組んだりとか、いろんな要素は必要だと思うけど、やれるフィールドには来たんじゃないかなと思ってますね。

ーー昨年は『進撃の巨人』オープニングテーマとしてSiM「The Rumbling」の世界的ヒットもありましたし、そういう意味ではSiMとYOASOBIは似たフェーズに立っているとも言えそうですね。

MAH:うん。こないだライブでイギリスに行った時、現地メディアのインタビューを結構受けたんだけど、「君たちの曲が大好きなんだ」って言ってくれたベテランのインタビュアーに取材してもらって。で、その人が最終的に「君らはK-POPじゃないし、K-ROCKかな……いや、Kじゃなくて“J”だったね。ってことはJ-ROCKか! J-ROCKっていいフレーズだと思わない?」とか言って、なんか喜んでて。いや、J-ROCKって欧米ではヴィジュアル系も含めた日本のロックを指す言葉として、だいぶ前からあるものだし、音楽関係の取材やってる人でもこんなに知らないんだなって思ったから……俺ももっと頑張ろうって思ったわけだけど(苦笑)。幸い、俺らにはCrossfaith、coldrain、Crystal Lakeとか、先に海外で活躍してたバンドがいたけど、これからの後輩たちにとっては、そういうバンドと一緒に海外ツアーに行くことが普通になるみたいな、道を開けたらいいなと思いますね。

SiM – The Rumbling (OFFICIAL VIDEO)

ーーいいですね。

MAH:「The Rumbling」がヒットしたことで、日本人も英語のカッコいいロックが作れるってことを知らしめていきたいし。日本語でラップすることが日本のヒップホップのカッコよさだったのに、今の若いラッパーはどんどん英語が達者になってきてて、それもすごい進化だと思うんだよね。世界と戦えるポテンシャルを持った子がどんどん出てきてるから、ここからもっと日本の音楽で世界に行きたいなって思います。

Ayase:僕らも頑張ります。ツアーも含めて発展途上だとは思うんですけど、慣れないところからフェスとかでもライブを重ねてきて、かなりいいものになってきた自信はあるので。MAHさんにもライブを観てほしいですね。

MAH:観たい。Ayaseのバンドマインドなところが、そういうライブの強さにも繋がってるんだろうね。『DEAD POP FESTiVAL』出てよ。

Ayase:いいんですか。ぜひ! めちゃくちゃ出たいですよ!

MAH:頼む時はマジで頼むからな!

Ayase:めちゃくちゃテンション上がります(笑)。これからも宜しくお願いします!

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