リアルサウンド連載「From Editors」第20回:『ソール・ライターの原点 ニューヨークの色』を観て

 「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。

『ソール・ライターの原点 ニューヨークの色』を観て

 リアルサウンドは、2023年7月にスタートから10周年を迎えました。私が入社した時から比べると、サイトの数も編集部の人数も増えていますが、其処此処にアットホームな雰囲気が残っています。なかでもスタッフの誕生日をお祝いする文化は形を変えながらも続いていて、数年前からは統括編集長がおすすめの本を選んで1冊プレゼントしています。

 私は以前、『ソール・ライターのすべて』というアメリカの写真家・画家、ソール・ライターが残した作品と言葉がまとめられた1冊を頂きました。この本は2017年開催の展覧会の図録という側面も持ち合わせていたため、また展覧会が開かれるときには足を運ぼうと思っていたところ、先月渋谷ヒカリエ近くで『ソール・ライターの原点 ニューヨークの色』の看板を発見。先日鑑賞してきました。

 ニューヨークの東10丁目にあるアパートの一室に60年以上住み続け、大きな成功を望まなかったというライターは、市井の風景を膨大なスナップ写真に収めてきました。それらのほとんどが物陰やガラス越しなどから撮られ、ピントがぼやけているようなものも。変わりゆく日常を見つめ、気になったものがあれば撮るという発想は、誰しもが気軽に写真を撮ることができる現代の感覚にも近く、だからこそ70年も前の写真を身近に感じるのかもしれません。また、「カラー写真のパイオニア」として評価されているライターですが、アトリエの壁に作品を投影してその色味を楽しんでいたといいます。本展では10面の大型スクリーンに約250点の作品が映し出される「カラースライド・プロジェクション」も見どころのひとつ。写真が切り替わる時に聞こえてくるプロジェクターの音が心地よく、その場を離れるのが惜しくなってしまうほどでした。

 その他にも、ライターならではの構図の妙が味わえるモノクロ写真やファッション誌の写真、淡い色合いに惹かれる絵画、新たに発掘されたスライドの展示など見応え十分でした。グッズ売り場で新たに購入した『永遠のソール・ライター』もじっくり楽しみたいと思います。

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