千秋が今、chiakiとして歌う意味 ポケビからソロ活動、「千秋の歌YouTube」開設や新曲「アオゾラ」に至るまで

千秋がchiakiとして歌う意味

 タレントとして様々な番組に引っ張りだこの千秋が歌手活動を再開。2022年にchiakiとして約20年ぶりの新曲「GREEN FLASH」をリリースしたのに続き、今年7月には「アオゾラ」を配信開始した。「作るべくして作った」という「アオゾラ」の話題はもちろん、これまで通ってきた音楽や、内村光良、ウド鈴木とのポケットビスケッツの活動を経たソロ活動や“歌”への想い、「千秋の歌YouTube」開設に至るまでをじっくりと語ってもらった。(編集部)

ターニングポイントは悔しすぎて泣いた『ウリナリ!!』の収録

chiaki

――chiakiさんは、音楽をやるために芸能界に入ったそうですね。

chiaki:そうです! 幼稚園の頃にピアノを始めて、小学校では合唱部に入って。高学年のときは、よくアイドルのモノマネを教室でやっていました。中学3年生になるとバンドを組むようになって……という感じで、ずっと音楽に触れてきたんです。なので、自然と芸能界で歌手になりたいと思うようになって。特にバンドをやっていたのが大きかったですね。

――バンドと言えば、高校時代にThe ピーズのライブを観に行かれたり、バンドブームにどっぷりハマっていたとか。

chiaki:当時は『イカ天』(『三宅裕司のいかすバンド天国』/TBS)とかホコ天が話題になっていて。ちょうどブームの渦中だったんですよね。自分もバンドをやっていたし、お手本にしたファッションも遊ぶ趣味も全部がバンド。高校に入ったときも1年生だけでバンドが13組いるぐらい、もはや世の中がバンド全盛期でした。

――どんな音楽を通ってきたんですか?

chiaki:主にパンクが好きで、The ピーズ、LAUGHIN'NOSE、THE STALIN、THE BLUE HEARTS、THE STAR CLUBも好きだし、ハードコアのGAUZEとかそのあたりも聴いていました。カステラ、ジュンスカ(JUN SKY WALKER(S))、スライダーズ(The Street Sliders)も好きだったりとか、メジャーな音楽も好き。あとは、いかにみんなが知らないバンドを探すか、みたいな感じでいろいろ聴いていました。

――GAUZEやTHE STAR CLUBは、もうゴリゴリですね。

chiaki:よく「GAUZE聴いてるの!?」とビックリされましたね。あとは、Lip Creamも聴いてましたよ。それと洋楽も好きで、The ClashとかRamonesとかの初期パンクから入って。バンドの中でもパンクが好きでした。それで自分もアーティストになりたくて、20歳になる直前でオーディション番組(『ゴールド・ラッシュ!』/フジテレビ)の歌手部門に応募したら優勝して。

――芸能界入りをして、瞬く間にバラエティ番組で人気者になりましたね。

chiaki:芸能界に入ったとき、番組のプロデューサーとか、今の事務所の人から「バラエティに向いてると思う」と言われて。「私は喋れないし、バラエティはできないです。売れなくてもいいので歌をやりたい」と言ったら、「芸能界でCDを出すのは簡単だよ。だけど売れるのが難しい。今CDを出したところで、売れないまま1年後には引退だよ」って。「でもバラエティを頑張れば、みんなが曲を聴くきっかけになる。芸能界は長くいる方が大事なんだから」と言われたんです。とはいえ若かったから「売れるとか売れないとか関係なく、歌手になりたい」と言ったんだけど、誰に聞いても10人中10人が同じことを言うから、「じゃあバラエティで売れたら、音楽をやらせてください」とお願いして出るようになったんです。そこからバラエティを頑張ったおかげで、ウッチャン(内村光良)、ナンチャン(南原清隆)とキャイ~ンに出会えて、ポケットビスケッツを結成できたので、最初の好期はそのとき。でも、結成するまでにいろいろあったんですよ。

――いろいろと言いますと?

chiaki:『(ウッチャンナンチャンの)ウリナリ!!』(日本テレビ系)のレギュラーに女の子が4人いたんですけど、その中で3人組グループ(McKee)を作って番組で売り出す企画があったんです。私はバラエティに出始めたときから、会う人会う人に「夢は歌手になることです」とずっと言っていて。それをスタッフさんも知ってくれていたから、グループ結成の企画が立ち上がった。ほかには室井滋さんとか国生さゆりさんがいて、すでに売れていたんですよね。もう1人が15歳の女の子だったので、その子と私は確定で、あとは室井さんか国生さんかなと勝手に思っていて。

――選ばれる道筋は見えていた。

chiaki:当然、私は選ばれると思っていました。だけど蓋を開けたら、私以外の3人が受かったんです。室井さんも国生さんも、「私はいいからchiakiちゃんをグループに入れてあげて!」と言ってくれて。だけど、決まっちゃったので変えられない。コントの企画だったのでセリフがあったんですけど、私は悔しすぎて泣いちゃって収録が止まったんです。スタッフさんが100人ほどいる現場を止めちゃったから、これで番組も降ろされると思いました。そしたらウッチャンがアドリブで、「chiakiが可哀想だから別のグループを作る。俺がなんとかするダニ!」と言ってポケビが生まれた。だから泣いちゃったときが“ターニングポイント”です。

ポケビのヒットからソロへ 痛感した現実の厳しさ

――ポケットビスケッツは、「YELLOW YELLOW HAPPY」「Red Angel」のミリオンヒットや『紅白歌合戦』の出場によって、社会現象を巻き起こしました。その後、chiakiさんは2000年にソロデビューをして、3年の間に5枚のシングルと2枚のアルバムをリリースされましたね。

chiaki:ポケビは、あくまで番組の企画の一つだったので、CDを出すタイミングも含めて、自分たちの自由に決められるわけじゃなかったんですよね。何かをクリアしないとCDが出せないとか、目標を達成できなかったら即解散とか。で、5年ぐらいやったあたりで「このままポケビをやるか、ソロをやるかどうする?」みたいな話になって。みんなで音楽をやれるのは嬉しいけど、番組が終わったら解散しちゃうわけで。「chiakiにはアーティストの夢があるよね?」と言われて、ポケビを活動休止してソロをやることにしました。そのときは曲作りとかコンセプトも全部自分たち中心で考えていたから、すごく嬉しかった。だけど、CDが全然売れなくて。そこも大きい出来事でしたね。

――ガラッと待遇が変わった。

chiaki:そうなんです。売れているときは、レコード会社に行けばみんなが「chiakiちゃん、chiakiちゃん」みたいな感じで集まってくれたのに、売れなくなったら「忙しい、忙しい」って全然相手にしてくれなくなって。「手のひら返しってこれなんだ!」と思いました。やりたいことはできているけど、売れていないと大変という現実を痛感しましたね。

――そこからどうなっていくんですか?

chiaki:レコード会社との契約が切れて、歌の仕事がなくなりました。バラエティのカラオケ番組は楽しく出ていましたけど、周りはコンサートで昔の曲を披露したり、フェスとかイベントにも出たりしていて。「私もヒット曲はあるし、新曲も作れるから音楽の仕事をしたい」と事務所に何度も言ったんですけど、「歌の仕事がない」と言われて。「なんで、そんなにないの?」と聞いても「いやぁ、ないんですよ」って。そういうことが20年くらいも続いて「みんなは私の歌を聴きたくないんだ」と自信を失くしたんです。そんなに需要がないなら、もう言わないようにしようと思って心に蓋をするようになって。だけど、2021年に50歳を前にしたとき、ハッとしたんです。「ハローサーカス」というハンドメイドのコンセプトショップを立ち上げて、ママ友や専業主婦の人に「夢を叶うよ」「やりたいことはできるんだよ」と言っていたのに、私自身が本当の夢に蓋をしてるなと気づいて。普段は弱音を吐かないんだけど、Instagramに音楽をやりたくてもできない気持ちを投稿したんです。20人ぐらいが共感してくれたらいいなと思っていたら「なんで歌わないのかなと思っていました」「chiakiちゃんの歌が聴きたいです」と、数千人の人が応援のコメントをしてくれて。こんなに私の歌に興味を持ってくれている人がいたんだ、とビックリしました。その中に「今の時代はYouTubeもあるから、自分の好きに音楽を発信すればいいんですよ」という声があって。それまではYouTubeをやる選択肢がなかったんだけど、「そうか! やってみよう」と思ったんです。

 
 
 
 
 
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――それが「千秋の歌YouTube」ですね。

chiaki:その1年くらい前にパッパラー河合さん(※ポケットビスケッツのプロデュースと作曲を担当)と、雑誌『ギター・マガジン』の対談で19年ぶりに再会をしていたんです。そこで「なんで歌をやらないの? chiakiが音楽やるのを俺は待ってるし、いつでも協力するんだからね」と言ってくれたことを思い出して。パッパラーさんに連絡したら「簡単な編集と撮影だったらできるよ」って。それで、見よう見まねで、手作りのチャンネルを作ったのが始まりですね。

――その流れの中で、約20年ぶりとなるオリジナル曲「GREEN FLASH」が生まれたと。

GREEN FLASH / CHIAKI 【4K Ultra HD】千秋20年ぶり新曲★ポケビサウンド

chiaki:YouTubeのチャンネル登録者が10万人になると、銀の盾がもらえて、それが一人前の証なんだと聞きまして。パッパラーさんと「誰の力も借りずに二人三脚で10万人を達成したら、新曲を考えよう」と言ってコツコツ頑張った。そしたら10万人に到達して、20年ぶりの楽曲制作が決まりました。今は、100万人達成したらポケビを復活させようと頑張っています。番組も終わっているし、レコード会社もないんですけど「ポケビをやってください」とはいろんな人からずっと言われていて。みんなの気持ちを受け止める場を作った方がいいなと思ったんです。それはウッチャンでも、ウド(鈴木)ちゃんでもない。やっぱり私が作るべきなのかなと思った。そういう人が100万人集まったら「ほらね! こんなにポケビを待ってる人がいるでしょ」と言える。そしたら本当に復活できるかもしれないから。その間にただ待っているだけじゃなくて、曲を出して届けることが大事。そういう思いで去年「GREEN FLASH」をリリースして、今回は新曲「アオゾラ」を発表しました。

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