asmi、ありのままの自分を音楽で表現する大切さ 『ポケモン』の物語への共感、シンガーとしてありたい姿勢も明かす

asmi、ありのまま表現する大切さ

 現在放送中のテレビアニメ『ポケットモンスター』(テレビ東京系)のオープニングテーマ「ドキメキダイアリー」を歌うasmi。同曲と、SNSで大バズを巻き起こした「PAKU」、そして自分のありのままをさらけ出した「ずっと」の3曲を収録したシングル『ドキメキダイアリー』が、5月31日にCD/デジタルでリリースされた。

 このインタビューでは、まず、asmiの『ポケモン』愛を語ってもらった。「ときめき」と「ドキドキ」を掛け合わせたタイトルの「ドキメキダイアリー」は、「グッバイ宣言」を大ヒットさせたボカロP・Chinozoによる楽曲提供。asmiが大学を蹴って音楽の道を選んだ瞬間も表している上に、アーティストとして活動する中での不安などを払拭してくれるパワーがあるという。

 『ポケモン』の話から、asmiが「今最もSNSで使われる歌声」と言われる所以の歌唱法について、彼女の名を一躍広めた「PAKU」に今思うこと、そして彼女にとっての「身を削って歌う」姿勢についてなど、asmiのアーティストとしての真髄にまで話は深まっていった。「音楽の力」という気流に乗って、これからもasmiはこの世界を自分らしく旅していくのだろう。(矢島由佳子)

【公式】アニメ「ポケットモンスター」オープニングテーマ「ドキメキダイアリー」

「歌っていると自分が一番元気をもらう」

――テレビアニメ『ポケットモンスター』の放送が始まってもう2カ月以上経ちますが、オープニングで自分の曲を聴くとどんな気持ちになりますか。

asmi:いまだに夢かなって思います。ライブで各地を回らせてもらうとお子さんがたくさん来てくれるようになって、その子たちのお母さんお父さんも「めっちゃ好きです」と言ってくださるんです。それは『ポケモン』の影響が大きいんやろうなと思って、そういうところでちょっとずつ実感しています。しかも、ここから始まる新しい『ポケモン』のオープニングテーマを担当できて、本当に嬉しいですね。

――asmiさんの人生において『ポケモン』とは?

asmi:常に近くにいてくれたもの。小学校から帰ってきたらテレビをつけてもらって、ご飯を食べながら観たり、友達の家族に映画へ連れて行ってもらったり、そこでぬいぐるみを買ってもらったり。実際にはいないかもしれないけど、そばにいるように感じている。そのくらい近い存在でしたね。

――特に好きなポケモンは?

asmi:シェイミが好きで、映画を観に行った時に買ってもらったぬいぐるみもシェイミでした。今はホゲータにメロメロです。もう、かわいくて(笑)。

――アニメの新しい主人公・リコには、共感する部分もあるのでは?

asmi:めちゃくちゃありますね。オープニングテーマで歌っていることでもあるんですけど、未来が全然見えないことに対してすごく不安がある中でも、頑張りたいし、挑戦したい。そういう気持ちにすごく共感します。あと、私も人と話すのが好きとはいえ、結構人見知りなところがあるので、そこも共感しますね。

――それは、asmiさん自身も活動の中で未来への不安や怖いことがあるからなのでしょうか?

asmi:そうですね。それはめちゃくちゃ重なる部分で。asmiとしての活動がこれからどうなっていくかはわからへんけど、とにかくチャレンジするしかないし、前に進む力を持って歩いていくぞって。だから、歌詞の全部にめちゃくちゃ共感するんですよ。

――特にasmiさん自身が勇気や元気をもらう歌詞は?

asmi:〈ドッキドキメキ気流に私は乗っている!〉って、ビックリマークまでついてて、歌う時も「乗っている!」という気持ちで歌うんですけど、私の素の性格だったら「あ、ちょっと気流に乗ってるかも……」くらいの自信のない考え方しかできなくて。でもこの曲を歌っていたら、だんだん「気流に乗ってるんや!」って自信が湧いてくるんですよね。あと最後の曲調がちょっと落ち着く〈ねえ、大切な話があるんだ 此処にない探しものがあるんだ/だから旅に出ます そのうち帰ります〉の部分も、歌っていてグッときます。

――以前インタビューさせてもらった際に、今はラブソングが多いけど、聴き手に生きる勇気を与えられる曲も作りたい」といったことを話してくれて。「ドキメキダイアリー」はまさにそれが叶った1曲では?

asmi:たしかに! ただ正直、みんなのことを勇気づけたい気持ちもあるんですけど、この曲を歌っていると自分が一番勇気づけられて元気をもらうんです。この曲に何度心を奮い立たせてもらったことか……まだリリースからそんなに経ってないですけど、すでに「助けられたなあ」ってめっちゃ思います。この曲が持ってるパワーはすごいと思っているので、歌えて本当に幸せです。

――自分がドキドキするものやときめくものが何かわからない、それらの見つけ方すらわからない、という人にasmiさんならどんな言葉をかけてあげたいですか?

asmi:まずできる一歩を踏み出してみようぜ、って言いたいですね。今、高校3年生の時のことを思い出しました。当時は将来の夢がないから、とりあえず大学を目指していたんですけど、大学の指定校推薦が決まりかけくらいの時に、音楽の専門学校が主催する高校生向けのイベントに出てみたら「あなたの歌はいいから絶対に歌った方がいいよ」と言ってもらって、そこで初めて素直になって将来の夢を音楽にしたいと思えたんですよね。そのイベントに出る一歩がなかったら、将来の夢がないままだったかもしれない。だから、みんなも一番近くでできる一歩を踏み出してみてほしいなと思います。

――大学がほぼ決まっているという、たしかな道が目の前にあったのに進路を変えたんですね。それはかなり勇気のいることだったのでは?

asmi:はい、本当に。先生にも迷惑をかけて怒られたし、おじいちゃんがその大学に行くことを喜んでいたので、めちゃくちゃ悲しんでいると聞いて本当に申し訳ないとも思ったし。母と父を説得するために夜中まで話したり、音楽の道に進むには結構な壁があったので、振り返ると「なんであんなにパワーがあったんやろう」と思うくらいなんですけど、それだけ奮い立たされていたんやろうなと思います。

――asmiさんの人生そのものが「ドキメキダイアリー」の歌詞の通りなんだなと、話を聞きながら思いました。Chinozoさんとそういった話をされたのですか?

asmi:話してないんです。実は、Chinozoさんと初めてお話したのはレコーディングの当日で。

ドキメキダイアリー - asmi feat. Chinozo (Official Music Video)

――では、この曲を受け取った時はどのように感じたのでしょう。

asmi:今までラブソングを歌ってきたというのもあって、受け取った時は、正直なかなか馴染んでこなくて。はじめは不安だったんですけど、レコーディング当日にスタジオへ向かう電車の中で「待って、これ私の歌や」ってドンッと降りてきた瞬間があって。そこから、この曲から得られるパワーがすさまじいものになって、曲が私の中に入ってきました。今思い返してもちょっと不思議なくらい、あの日はすごかったですね。

――話を聞けば聞くほど、この曲に宿っている目に見えない音楽の力みたいなものを感じますね。

asmi:そうなんです。元気がない時とか、この曲を聴いたらほんまに元気になってきて、「今やらなあかん!」って思えるんですよね。それが本当にすごいです。

――Chinozoさんが作ったトラックに自分の声を乗せる時、どんな歌い方を意識しましたか?

asmi:この曲、リズムがかわいいというか……私なりの表現なんですけど、「かわいい」というのは。一番わかりやすいところだと〈ちゃっちゃかちゃか深呼吸〉とか、聴いてくれたみんなも口ずみたくなるリズムが散りばめられている気がしたので、そこをちゃんと歌いたくなってもらえるように、楽しんで歌いました。Chinozoさんは優しくて雰囲気も柔らかい方で、「ここはもうちょっとこういうふうに歌ってみて」とかアドバイスもいただきながら、リラックスしていいレコーディングができました。

「PAKU」ヒットから得た新たな気づき

――「PAKU」についても聞かせてください。昨年3月のリリース以降、この曲はasmiさんにとっていろんな景色を見せてくれた曲になっていると思うのですが、ご自身にとってどんな1曲になったと感じていますか。

asmi:相棒みたいな感じです。本当に、それまで行ったことのないところにも行かせてもらったのは、「PAKU」のおかげやなと思っています。meiyoさん(「PAKU」の作詞作曲を担当)にも本当に感謝しています。ライブで歌ってても本当に楽しくて。いい意味で面白がって歌えるというか、「楽しい」を通り越す「面白さ」があるんです。

――それは、音やリズムが楽しいから、曲に没入すると面白くなっちゃうということですか?

asmi:はい。あとサビ以外は、ラップというか、お話というか。レコーディングの時にmeiyoさんから「仲のいい友達に愚痴を言ってるようなテンションで歌って」って言われて。最初は明るめで歌っていたんですけど、仲のいい友達だからこそ出るトーンで愚痴みたいに歌ってほしいと言ってもらって、今の感じになりました。だから普段もここはちょっとお話っぽく歌っていて、それが楽しいんですよね。

――なぜmeiyoさんからそういったディレクションが出たのだと思いますか?

asmi:サビ以外は「心の声」みたいな感じだからじゃないですか。作り込んだ自分というよりも、ありのままの素の自分というか。鬱憤とかも散りばめられていると思うので。

――歌い方や声の使い方において、「PAKU」から得た気づきは何かありますか?

asmi:「私、早口得意なんや」って気づきました。〈宝物はなに?捨てるつもりも無いのにさ?〉とか、「THE FIRST TAKE」のコメント欄で「ここすごい」みたいなコメントにめっちゃいいねがついてたりとか。それまで、自分は早口が得意という自覚がなかったし、普段はのんびりしゃべるから「歌で早口ができるんや」という新たな気づきがありました。

――「PAKU」はmeiyoさんらしさ全開で、音の楽しさや言葉遊びの面白さがありつつ、社会や自分を刺すような毒っぽさも実は混じってて、そのバランスがいいなと思うんですよね。asmiさんは、なぜ「PAKU」がここまでヒットしたんだと思いますか?

asmi:やっぱり〈パクっとしたいわ〉という歌詞が唯一無二でみんなの耳に残りやすい。本当にキャッチーなのが理由かなと思います。(サビを軽く口ずさむ)……やっぱり耳に残りますよね、メロディも。みんな「頭から離れない」っていっぱい言ってくださったので、そういうことかなと思ってます。

PAKU - asmi (Official Music Video)

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