DISH// メンバー制作曲「エンドロールは悲しくない」「ウェディングソング」に反映された今のモード 初EPにも高まる期待

DISH//、新曲に反映されたモード

 DISH//が2つの新曲を配信リリースした。1つ目は5月31日より配信中の「エンドロールは悲しくない」。2つ目は6月28日より配信中の「ウェディングソング」。2曲とも、先日終わったばかりのホールツアー『DISH// HALL TOUR 2023 “TRIANGLE”』開催期間中のリリース。各所でのインタビューやメディア出演の際に「今年のDISH//はとにかく動く」「ライブもたくさんやりたいし、曲もたくさん生み出したい」と語っていたメンバーの音楽に対する意欲が、バンドの活動として具現化されている形だ。

 「エンドロールは悲しくない」は北村匠海(Vo/Gt)が作詞作曲、「ウェディングソング」は泉 大智(Dr)が作詞作曲と、どちらもメンバー自ら手掛けた曲であることが注目すべきポイントだ。2022年のDISH//は“立ち止まる”をテーマに活動。レコーディングやライブ、打ち合わせなどの一つひとつを突き詰めて行う機会が多かったそうだが、その背景には、DISH//が発表する全てのクリエイションのイニシアチブをしっかり自分たちの手で握っておきたいという4人の意思があった(※1)。特に音楽においてはそういった想いが強く、2023年2月リリースの5thアルバム『TRIANGLE』はメンバーが書いた曲を中心に構成された。そういったバンドのモードが“メンバー自ら書いた新曲を2カ月連続で配信リリースする”という今回の動きにも反映されている。

 では、2曲を紐解いていこう。北村が手掛けた「エンドロールは悲しくない」は、明るい響きのミドルナンバー。ロックバンドならではのジャキッとした質感を残したサウンドを主体としつつも、アコースティックギターやピアノが爽やかな風を吹かせているため、初夏の陽光や青葉のイメージが浮かぶ。低音域での歌い出しは落ち着いた声色で、〈出会いとは海のようなもんで/そんで愛とは掴めない宇宙みたい〉といった比喩から北村のセンスが感じられた。2番の同じ箇所にある〈願いとは拗らせた風邪のようで/願いとは届かない空みたい〉という比喩も絶妙だ。サビの〈あっという間に人生なんて/ほらパッと咲いて枯れちゃうよ〉という一節から垣間見えるのは、以前インタビューで「コロナ禍に入ってから、“明日死ぬかもしれない”というひりついたものが自分の中にずっとある」と語っていた(※2)北村の人生観。そして、楽曲全体から伝わってくるのは、人生あっという間だからこそ、自分の身近にある小さな幸せや今この瞬間を大事にしてほしいというメッセージだ。振り返れば北村は、ここ最近のライブMCでもそのようなメッセージを観客に伝えていた。その上で着目したいのは、2番サビ前の展開。イントロ→1番Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→2番Aメロ→Bメロと来て、すぐサビに入らず、一旦間奏に入るのが肝なのだが、全員で楽器を掻き鳴らすこの間奏はバンドの迫力が感じられて圧巻だ。北村が〈今だけ〉というフレーズを繰り返しているのも相まって、楽曲に込めた強い想いが音でも表現されているように感じた。

DISH// - エンドロールは悲しくない [Official Video]

 MVは、4人がリラックスした表情で街を歩くシーンやスタジオでの演奏シーン、懐かしのオフショットで構成されている。バンドの和やかな日常が伝わってくるシーンとクールな演奏シーンとの対比が効いていて、楽曲に通ずるメッセージ性を感じた。MVのコメント欄には「温かくて素敵な曲」「DISH//らしくて最高」「メンバーが泣けるMVって言っていたけど、確かにこれは泣ける」といった声が寄せられており、DISH//にとって大切な楽曲がまた一つ誕生した。

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